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問われるヒロシマの思想と行動 6日「原爆の日」 | '02/8/5 |
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広島は六日、被爆五十七周年の「原爆の日」を迎える。被爆者は 老いた。この一年、世界はテロと報復の連鎖に翻弄(ほんろう)さ れた。被爆地は、その記憶の継承に、その平和の訴えに、さらに磨 きをかけなければならない。在外被爆者への支援など、あの日から 半世紀を過ぎた今なお未解決の課題も残る。ヒロシマの思想と行動 が問われる。 中区の平和記念公園に一日、国立広島原爆犠牲者追悼平和祈念館 がオープンした。遺族は遺影に手を合わせ、若者たちは体験記を読 みふける。慰霊と継承の営みは、今も綿々と続く。 しかし、そうした営みとは対極の行為が、世界の各地で繰り返さ れる。昨年九月の米中枢同時テロは、報復の連鎖をもたらした。国 家間の戦争とは様相が異なる「新しい戦争」の時代を二十一世紀は 招いた。 インドとパキスタンのように、前世紀から続く地域紛争も激化し た。そうして、新たな核戦争の危機さえ叫ばれる現代。広島、長崎 の記憶を忘れようかとする動きに、ヒロシマは今、どんなメッセー ジを発するのか。 国の施設である追悼祈念館には、「誤った国策により犠牲になっ た」との説明文が追悼空間の入り口に掲げてある。 その文脈からも分かるように、在外被爆者の援護も国の責任であ る。国は昨年末、新たな支援策を打ち出した。しかし、日本国内と 同様の援護を受けるのは来日時だけ、という「壁」は変わらない。 国内でも、原爆症の認定に「国は冷淡だ」とし、被爆者らは集団申 請から集団提訴へと動く。 内外に暮らす被爆者の声に、私たちは、耳を傾けなければならな い。 秋葉忠利市長は六日の平和宣言で、被爆の「記憶」の貴重さを強 調し、世界に「和解」や「人道」を訴える。 市内の被爆者は八万六千七百七十九人(今年三月末)。人口に占 める割合は7・8%だが、六十五歳以上でみると、三人に一人があ の日を体験した。それだけの「記憶」がこのまちにはある。祈りに 包まれる六日、私たちは、過去を思い、平和へとつながる未来を見 つめよう。(江種則貴) 【写真説明】原爆慰霊碑に人の列が続く。あす、被爆から57周年(広島市中区、平和記念公園) |
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