核兵器ストップへ全力

来日中の米国の女優ジェーン・フォンダさん(43)が、夫の政治運動家トム・ヘイドン氏(40)、息子のトロイ君(7つ)とともに6日、広島市を訪れ、原爆資料館などを見学した。反戦運動家としても知られるジェーンさんは、同資料館の展示物を1時間近くも熱心に見て回り、すっかり感動。「夫や息子と一緒に大変貴重な経験を持て、本当によかった。今後、核兵器の増大をストップさせるために一層力を尽くしたい」と、その印象を語った。

同日午後0時32分着の新幹線で広島入りしたジェーンさん一家は、市内のホテルで休憩した後、3時過ぎに平和記念公園へ。たまたま訪れていた観光客らがカメラを向ける中を同資料館に入り、被爆の惨状を伝える写真や遺品に一つ一つ足を止めながら、じっくり見学。一瞬のうちに廃虚と化した当時の広島市のパノラマの前では「大変な威力だ」と驚きを隠しきれない表情。ジェーンさんは案内の佐々木司朗同資料館主任に「爆心地近くでも倒れずに残っている建物があるのはなぜ?」などと質問し、佐々木主任の説明をトロイ君にも伝えた。

ジェーンさんは10年前にも来広し、原爆ドームを見学したが、資料館は初めて。ヘイドン氏とトロイ君はともに初めて広島へ。「ヒロシマを知るのは米国人の義務」というジェーンさんらだけに、見学は真剣そのものだった。見学を終え、インタビューに応じたヘイドン氏は「これは20世紀、21世紀を通じて最大の犯罪の貴重な証拠。ヘイグ国務長官ら政治家は必ず見るべきだ。ソ連やアメリカの核軍備競争を凍結できるよう運動を進めたい」と発言。ジェーンさんは「息子がこの経験をもとに、若い世代の代表として核兵器と闘ってほしい」と話した。

出口で、ジェーンさんは「感動的な経験ありがとう。平和を」。ヘイドン氏は「ノー・モア・ヒロシマズ」とそれぞれ記帳。この後、一家は原爆慰霊碑に参拝し、原爆ドームも見学した。

(1981年5月7日朝刊)