中国新聞社

連載「ナースのがんつれづれ」に反響
  励まし・共感 きずな広がる
ナースのがんつれづれ
2001/9/3

 広島市中区の訪問看護婦、馬庭恭子さん(49)が、卵巣がんになってからの日々をつづった、くらし面連載の「ナースのがんつれづれ」。がんと闘う患者や家族から、励ましや共感の便りが届いている。自らの体験を重ね合わせた行間からは、患者としての本音とともに、患者同士のきずなを願う切実な思いがのぞく。
(編集委員・山内雅弥)


 「へそから上はいたって元気なので、病院も住めば都、そんなに悪いところではありません」というのは、広島市南区の病院に卵巣がんで入院治療中の六十歳代の女性。
読者から届いた手紙を前に「同じ病気の人の思いがひしひしと伝わってくる」と話す馬庭さん
 「私も人並みに六十代の苦しさを味わったが、根が深く考えない性格で、一カ月くらいで病気を受け入れることができて、立ち直った」

 「治療の副作用はちゃんとあり、髪も抜け、美ぼうはずいぶん落ちましたが、夫はよく尽くしてくれます」とユーモアも忘れず、「今の幸せを、あと十五年続けさせて下さいませ」と、七夕飾りに願いを託したという。

 一方、昨年九月に卵巣がんの手術をした呉市の女性は「知識もなく、いきなり告げられ、心に受け止めることもできないまま化学療法に入りました。次第に大変なことなのだと思うようになったころには、毎日の治療のつらさに忙しく過ぎていった」と思い出す。通院になった今も、「新たな不安が出てきた」と悩む日が続く。

 医療への不信もある。三原市の女性は昨年末、三人目の子を妊娠した時に子宮がんが見つかり、子宮と卵巣、リンパ節を切除し、赤ちゃんもあきらめた。毎年、産婦人科医院で子宮がん検診を受け、昨年も数カ月前に受診したばかりだった。「何のために、がん検診を受けていたのでしょうか。本当に信頼のおける医師との出会いがいかに大事か、思い知らされる日々です」

 一年間の卵巣がん治療を終えて静養中という広島市佐伯区の女性は「何かと神経質になって自分が嫌になる。『だましだましの毎日よ』と言った友人の言葉が身に染みる」と明かし、「同じ病で不安な生活を送っている患者の会や集いに出て、経験者の話を聞けたら」と期待を寄せる。

 がんと闘いながら今を生きる仲間として、「馬庭さんの書く言葉一つひとつがうなずける」という声も多かった。

 五月に退院した馬庭さんは、月一回通院しながら、十月の仕事復帰を目指している。「自分ががん患者になってみて、まだまだ実態は、患者中心の医療になっていないと痛感した。サポートしてくれる人もおらず、多くの患者は悩んでいることも分かった」と、約半年間の入院生活を振り返る。

 女性のがんの中では比較的少ないうえに、見つかったときには進行しているケースも目立つ卵巣がん。馬庭さんは、同じ卵巣がんの患者をつなぐグループづくりや、書き込み式の患者用小冊子の作成にも意欲満々だ。

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