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世界の中のヒロシマ

(7)日本庭園 笑顔の「平和デー」相川知子

日本の地球の反対側にある南米アルゼンチンでは、広島と言えば平和、平和と言えば広島というイメージがあります。

アルゼンチン

アルゼンチン平和の鐘

上=ブエノスアイレスの人たちは日本庭園での散歩を楽しみ、日本文化に触れる

下=ふだんは鎖で閉鎖されている平和の鐘

相川知子(あいかわ・ともこ)

広島市佐伯区出身。1991年からブエノスアイレスに移住。スペイン語通訳や翻訳、撮影などの現地コーディネーターなどを務める。アルゼンチン人と日本人を結ぶのがライフワークという。

日本からの移民も多く、首都ブエノスアイレスには、素晴らしい景観で有名な地区パレルモに日本庭園があります。当地に移住した日本人たちが、受け入れてくれた街の人に感謝して造ったものです。赤いお太鼓橋などがあり、松やツツジが植えられた庭園を歩くと、突然、鐘のお堂が姿を見せます。

これは「世界平和の鐘」と呼ばれ、ニューヨークの国連本部の日本庭園の中にもあるのと同じく、世界中から寄せられたコインが平和を祈るために鳴らす鐘に生まれ変わったのだと言われています。

1998年は日本とアルゼンチンが友好的な関係を始めた修好100周年として一年中いろいろな記念行事がありました。その第1行事として、2月3日、この鐘のための鐘楼がお披露目されたのです。現在は四世、五世も生まれている約3万人の日系社会の寄付で建設されたものです。

それ以来、「国連平和デー」の日には式典後、誰でも平和を祈りながら、この鐘を突くことができます。ふだんは鎖がかけてあり、中に入ることができないのです。多くの人は遠いヒロシマに思いをはせていることでしょう。

ネパール地図

平和デーは9月11日だったのですが、米中枢同時テロの後、2002年からは9月21日となりました。南半球にあるアルゼンチンは春です。この日は「春分の日」ですが、「学生の日」ともなっていて、大学は休みになるので、パレルモ公園で若者たちが春を祝う野外ピクニックをします。日本庭園でも色とりどりのツツジが咲きほこる横で、若者が談笑しています。

平和デーは静寂な祈りのイメージでなく、明るい喜びのあふれたものとなっています。そして、ブエノスアイレス市民は、この日本庭園に、心の平和を求めてやってくるのです。

なお、この鐘のほかに、庭園施設内には1995年に贈られた被爆の石も展示してあります。この石は広島の被爆地の線路にあった石に観音を彫ったもので、スペイン語では「お慈悲の女神様」と訳され、人々の関心をひいています。

話は変わりますが先日、日本のテレビ取材コーディネーターとして、南極に行きました。各国の基地がありながら、国境を超えて協力して地球の自然変化事象などについて調べています。とても神聖でピュアな場所です。ちょっと「ひろしま国」に似ている、と思いました。