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世界の中のヒロシマ

(2)歌声にのって希望が咲いた中田千穂子

グーテン・ターク!

広島市の姉妹都市ハノーバーは、世界平和の確立に向けて「ヒロシマ」の認識を深めるために、青少年の文化交流に力を入れています。

1980年にはハノーバー少女合唱団が広島を訪れ、コンサートを開きました。原爆資料館を見学して原爆の恐ろしさを知りました。96年に再び日本を訪れた時には、東京のサントリーホールで、広島市安芸区出身の作曲家細川俊夫さんの「ヒロシマ・レクイエム」に出演する機会を得ました。生き地獄を思わせる様な演奏の後に死者のためのミサが合唱される感動的な祈りの曲です。

ハノーバー少女合唱団

広島市出身の作曲家細川さんの新曲をうたうハノーバー少女合唱団=1月21日(©Möbus Udo)

中田千穂子(なかた・ちほこ)

声楽家、音楽評論家。広島市南区出身。1974年、ベルリンに留学。演奏活動のかたわらドイツ語圏の音楽事情を日本の音楽専門誌に寄稿している。被爆60年の2005年にはベルリンであったコンサートで栗原貞子の詩集を朗読した。ベルリン在住。

細川さんには海外の国際音楽祭や有名楽団から作曲依頼が引きも切らず、その作品は欧州各地でしばしば演奏されています。今年1月21日にハノーバーのオペラ座であった、ハノーバー少女合唱団のニューイヤー・コンサートでは、新曲が初演されました。

新曲のテーマは花。歌詞はドイツの文豪ヘルマン・ヘッセの詩集の中から「りんどうの花」と「嵐の後の花」が選ばれました。指揮者グードゥルン・シュレーフェルがヘッセの詩をゆっくりと朗読した後、全員そろいの赤いブレザーを着た12歳から20歳までの合唱団員82人により、「二つの花の歌」がアカペラ(無伴奏)で演奏されました。

「りんどうの花」では息の音やハミングによる風のような音をバックにして、ゆったりとしたリズムで自然へのあこがれが歌われました。「嵐の後の花」では、始めに下降するフレーズがこだまの様に繰り返されますが、次第に上昇して行き、少女たちの美しい歌声が会場に澄み渡りました。

ヒロシマを体験した人々に希望を与えたやさしい花たちがドイツに咲いた様に思えました。

終演後しばらく静寂が続いた後、ブラボーの声が上がり、細川さんをはじめ指揮者やハノーバー少女合唱団に万雷の拍手が浴びせられました。合唱団の一人に新曲の感想を聞いたところ、「練習しているうちに、詩の内容にマッチした素晴らしい曲であることが分かった」と笑顔で答えてくれました。