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ひろしま国の活用〜世界へ

平和の訴え 海越え共鳴



「ひろしま国 10代がつくる平和新聞」は、2007年1月29日に創刊し、秋に100号を迎えます。記事はホームページ(HP)にも掲載、日本語と英語で世界に発信しています。

原爆についてだけでなく、紛争やいじめ、環境や食料問題といった幅広いテーマで平和を考える「ひろしま国」。被爆地広島で暮らす中高生の思いは、世界にどのように伝わっているのでしょうかー。

米国やドイツでは、現地の学校で平和学習の教材として使われていることが分かりました。日本の反対側にある南米アルゼンチンにも読者がいました。

ジュニアライターは取材を通し、広島から発信する意味をあらためてかみしめました。これからも私たちは国境のない理想の平和国家「ひろしま国」を舞台に、平和や命の大切さを訴え続けます。



米・オハイオ マウントユニオン大
ジュニアライター新山さん橋渡し 英訳記事読み原爆学習

英語版ひろしま国の記事を印刷し、平和学の授業について話し合う新山さん(左)とコールマン教授(新山さん提供)

米国オハイオ州にあるマウントユニオン大の平和学の授業で、8月の新学期からひろしま国が使われます。担当するウィリアム・コールマン教授(65)=コミュニケーション学=は、米国の学生は原爆について詳しく知らないと指摘。「中高生による平和のための活動を米国の学生に知ってもらい、平和について考えるきっかけや刺激を与えたい」と説明します。

授業では、ひろしま国HPの英訳記事を学生に読ませ、感想を書かせます。広島に住むジュニアライターと、電子メールやインターネット電話「スカイプ」を使った意見交換も予定しています。

ひろしま国をコールマン教授に紹介したのは、元ジュニアライターの新山京子さん(21)=広島市南区出身=です。8月から同大の4年生になります。新山さんは「広島イコール原爆だけでなく、平和のイメージを持ってもらいたい」と願っています。(高2・西田千紗、岩田萌)


米・ニューヨーク スタイベサント高
日本語でヒロシマ検定

ヒロシマ検定に挑戦するスタイベサント高の生徒(ヘリンスキさん提供)

米国ニューヨーク市のスタイベサント高では、日本語教師ヘリンスキ千絵さん(50)=東京都大田区出身=が、2008年夏にひろしま国に掲載した「ヒロシマ検定」を、高3の日本語の授業で取り入れています。

検定は原爆に関する知識を問うもので、原爆について学ぶ授業の一環として、08年冬に使い始めました。ひろしま国HPから日本語版を印刷。生徒は「原爆ドームはなぜ保存されたの?」「核兵器を持っていない国は?」など計20問に答えます。昨冬の結果は、100点満点のうち最高が75点でしたが平均は約50点でした。ヘリンスキさんは「解けないと、もっと勉強しようと、次の一歩につながる」と話します。

今、クラスにはいずれも核を持つインド系とパキスタン系の生徒がいます。「ヒロシマ学習を通し、核や平和について一緒に考えることが大切」とヘリンスキさん。「ヒロシマを学んで、生徒たちは周りを見る目を持ち始め、人の痛みを自分のこととして考えることができるようになった」と手応えを感じています。(中2・河野新大)


独・ニュルンベルク モンテッソーリ中
現地の被爆者とも交流

ひろしま国を使ったプロジェクトで、平和について学ぶモンテッソーリ中の生徒たち=2009年2月(加藤さん提供)

ドイツ南部にあるニュルンベルク市の小、中学校で2009年から10年にかけてひろしま国が使われました。ひろしま国の英語版HPから原爆についての基礎知識を勉強したそうです。

小中それぞれ1校が、ニュルンベルク市が進める国際理解プロジェクトに参加。広島、長崎の原爆について学びました。その一つ、モンテッソーリ中はひろしま国の活用のほか、ベルリン在住の被爆者から話を聞いたり、広島市内の中学校とメールで交流したりしました。

ひろしま国を紹介したのは、隣のフュルト市に住み、現地で毎年8月6日に広島、長崎の慰霊祭を開いている彫刻家加藤邦彦さん(65)と画家温子さん(60)夫妻です。温子さんは「若者が分かりやすくまとめていて、ドイツの子どもたちも理解しやすいと思った」ときっかけを話します。

ニュルンベルク市で、プロジェクトを担当するキキ・シュミットさん(45)は「同世代の取り組みで、子どもたちは刺激を受けている。これからも平和学習などで使ってもらうよう学校に紹介したい」と言っていました。(高1・秋山順一、中3・坂本真子)


アルゼンチン NGO代表 相川さん
私たちの活動を記事に

アルゼンチンで、折り鶴を通して平和を伝える非政府組織(NGO)「フンダシオン・サダコ」の代表、相川知子さん(44)=広島市南区出身=は、ひろしま国ジュニアライターの活動について現地の新聞「らぷらた報知」にスペイン語で記事を書きました。

記事は2009年8月6日に載りました。「小さな人たちの大きなイニシアチブ」というタイトルです。米国のオバマ大統領を広島に呼ぶプロジェクトや、映画監督の宮崎駿さんへのインタビュー記事などについて紹介しました。

インターネットでひろしま国を知った相川さん。「恨みより和解の気持ちが大切で、穏やかに仲良く暮らすという身近なことから平和が始まる、というひろしま国の思いを伝えたかった」と話します。

今後、ひろしま国で作成した「平和かるた」を現地で紹介しようと検討しています。(高2・畦池沙也加、高1・井口優香、中2・河野新大)