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おもちゃは友だち
「生きる力」遊んでアップ

子どものころに遊んだおもちゃ。どんなおもちゃで、誰と遊んだ思い出がありますか。実はおもちゃには大切な役割があります。友だちと取り合ったり分け合ったりすることで、コミュニケーションの力が身に付きます。遊びながら想像力がはぐくまれることで、知恵を働かせ、物事に臨機応変に対応できるようになります。相手の立場を思いやり、対話を進められる力。大きくなった時の「生きる力」になるのです。

一方、発展途上国ではおもちゃを手にできない子どもがいます。戦争や紛争地域では、おもちゃと間違えて爆弾を触り、命を落としたりけがをしたりする子どもがいます。

子どもが安心しておもちゃで遊べ、大人になった時に平和な社会をつくっていける環境づくりが大切です。

木のぬくもり 親子をつなぐ フェスタ

おもちゃフェスタでままごと遊びを楽しむ親子連れたち(撮影・中2坂本真子)

今は廃校になっている三次市上田町の旧上田小で9月25、26日、「おもちゃフェスタ」が開かれました。今年で5回目です。会場には、電子ゲームや電池で動くおもちゃはありません。そのかわり、木のおもちゃがたくさんあり、来た人が一緒に遊べるようになっています。親子で積み木をしたり、初めて会った子ども同士がままごとをしたり。みんな笑顔で遊んでいました。

催しを考えたのは、おもちゃコンサルタントで市内にある「木のおもちゃ HANA」店主の川添由起子さん(38)です。川添さんが特に薦めるおもちゃは、ドイツで作られた木製の「クーゲルバーン」です。小さい木の球が坂を落ちていき、最後に、鉄琴の音が鳴ります。子どもたちは、物をつかむ、目で追うなどさまざまな動作が身に付きます。大きくなっても鉄琴の音色に癒やされる人が多いそうです。

川添さんは「たかがおもちゃ、されどおもちゃ」と言います。おもちゃは、子どもの成長にとってとても大切なものなのです。実際に子どもと触って興味を持つものを選び、一緒に親が遊んであげてほしい、と強調していました。(中1・河野新大)



ぴったりの一品アドバイス −専門家

 おもちゃコンサルタントは、おもちゃを選ぶ専門家です。日本の郷土玩具や外国のおもちゃで子どもがもっと楽しく遊ぶにはどれがいいか、探します。病気で入院している人や高齢者が楽しくリハビリできるものも選んで教えます。

 おもちゃコンサルタントの資格は1985年にできました。NPO法人の日本グッド・トイ委員会が、おもちゃの楽しさをいろんな人に伝えるためにつくりました。現在、日本には約4000人います。20代から70代までで7割が女性です。

 同会では、おもちゃコンサルタントが毎年集まり、いいおもちゃ「グッド・トイ」を約20点決めます。選ぶ基準の一つは、そのおもちゃがあることで、会話が生まれたり、広がったりするものだそうです。(中2・吉本芽生)
まぎらわしい爆弾 被害次々 紛争地

上=クラスター爆弾の不発弾
下=チョウのような形をした地雷
(いずれも地雷廃絶日本キャンペーン提供)

戦争や紛争地域に住む子どもが、おもちゃと間違えて地雷やクラスター爆弾の不発弾に触り、亡くなったり大けがしたりする事故が頻繁に起きています。NPO法人「地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)」の事務局長、内海旬子さん(43)は「爆弾としての有効性を高めるための形状や色のせいで、子どもが興味を持ちやすくなっています」と説明します。

クラスター爆弾は、ジュース缶やテニスボールのような形があり、パラシュートやリボンも付いています。青や黄色などカラフルで、子どもの被害を増やす結果となっています。チョウのような形をした地雷も子どもの目を引きます。

不審物に触らないよう指導もしています。しかし、広い地域に不発弾や地雷が散らばっていて、まだ不十分だそうです。

内海さんは僕らに対し「まずは実態を知り、友人や家族に話してください」と言っていました。(高1・田中壮卓)

クラスター爆弾  クラスターは「房」の意味。大きなカプセルのような親爆弾の中に、子爆弾がたくさん入っている。航空機や地上から投下された後、空中でカプセルが割れて、何百個の子爆弾が広い範囲で地上に降り注いで爆発する。落とされた子爆弾が、不発弾として地上に残っていることが多い。
途上国に「笑顔」プレゼント 鳥取の団体

贈られたおもちゃを手に笑顔を見せるモンゴルの子ども(鳥取中央ライオンズクラブ提供)

「世界の子どもたちにスマイルを―」というスローガンを持つ鳥取中央ライオンズクラブは、発展途上国の子どもたちにおもちゃを贈る活動をしています。クラブの第二副会長である広岩勝彦さん(53)によると、将来を担う子どもたちに1日に1回でもいいから心から笑ってほしいと、2008年7月に始めました。

おもちゃはクラブのメンバーが持ち寄ったり、新聞で募集したりし、大きな段ボール箱を3個から5個ずつ贈っています。現地では、ぬいぐるみや日本の童話を現地語に訳した紙芝居が人気だそうです。これまでにモンゴル、トリニダード・トバゴ、ジンバブエ、ザンビアの4カ国の児童養護施設などに贈ってきました。今年はモンゴルに贈る計画です。

「子どもたちが喜んでいる写真が送られて来るとうれしくなる。マンホールに暮らしているような、施設に入ってない子どもにも届けられるようにしたい」と広岩さんは語ってくれました。(高3・古川聖良)


達成感・想像力がポイント−比治山大短大部 湯地准教授

子どもにとってのおもちゃの大切さを話す湯地准教授(撮影・中2坂本真子)
おもちゃと子どもの関係について、比治山大短期大学部幼児教育科の湯地宏樹准教授(43)は「子どもにとっておもちゃとは、良い悪いでなく、ふさわしいかふさわしくないか、なのです」と言います。

 ふさわしいおもちゃとは、子どもが働きかけて反応があり、「やったらできた」と感じられるものです。年齢や能力に合っているかどうか、なのです。すぐに飽きてしまうおもちゃは、難しすぎるか簡単すぎるかで、その子の能力に合っていません。

 おもちゃは五感を通して子どもの心身を育てます。指先を使って身体的な能力を発達させます。遊ぶうちに数を覚えるなど知的能力も育ちます。友だちと遊んでけんかや譲りあいをすることでコミュニケーション能力を身に付けます。

 また、情報量の少ないもので遊べば想像力が身に付きます。想像力は大きくなって臨機応変に社会に対応していく「生きる力」「知恵を働かせる力」となるのです。友だち関係に悩んだ時に乗り越える力にもなります。

 テレビゲームは、働きかけるとすぐに反応が返ってきます。「やったらできた」という達成感が味わえます。半面、人間同士がかかわり合う機会が減ってしまいます。そのため、社会性の発達が妨げられる恐れがあります。また、攻撃性が高いものや、暴力シーンの多いゲームは、幼い子にはふさわしくありません。

 大人が子どもにしてあげられることは、成長に合わせて遊べる環境をつくることです。「子どもに良いものを与えたい」という気持ちを持つことが大切です。(中2・末本雄祐)