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ノーベル平和賞世界サミット
ストップ戦争 知を結集

ノーベル平和賞の受賞者たちが集まる世界サミットが11月12〜14日の3日間、広島市内のホテルで開かれます。個人の受賞者10人と、12団体の代表者が集まります。それぞれの専門分野での経験や知識を基に、世界平和に向けて、何をするべきかを話し合います。

ポスターを手にサミットの説明をする滝口さん(左)

ひろしま国では、欠席するデズモンド・ツツさんを含む受賞者3人と、5団体の代表者に、メールでインタビューしました。平和運動や地雷廃絶、人道支援の第一線で活躍している人たちです。

彼らは、平和な世界をつくるためには、核兵器の廃絶を含め、軍事費を貧しい人たちのために使うべきだ、と訴えます。国内の紛争を解決するためには、互いを尊敬する姿勢が欠かせない、と強調しています。若者には、世界の現状を学ぶとともに、大人への働きかけや、さまざまなキャンペーンに参加してほしい、と呼び掛けていました。

来月広島で11回目会合

ノーベル平和賞受賞者世界サミットは、平和の創造や異文化の共存などについて討論し、提言する場です。第1回サミットは1999年、ゴルバチョフ財団の提案で開かれました。これまでの開催地はローマ、パリ、ベルリンです。11回目となる今年は、被爆65年を迎えた広島で開かれます。

テーマは「ヒロシマの遺産−核兵器のない世界」。広島の子どもたちは平和を願いながらサミットのPR用ポスターを描きました。地元で支援している広島市平和推進課主事の滝口礼さん(29)は「核兵器廃絶に向けた宣言を広島から発信できれば大きな意義がある」と話していました。(中2・寺西紗綾)



ベルリンでのサミットの討議に耳を傾ける人たち(ノーベル平和賞受賞者世界サミット事務局提供)
昨年ベルリンで開かれた世界サミット(ノーベル平和賞受賞者世界サミット事務局提供)

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元南アフリカ大統領
フレデリク・デクラークさん
(1993年受賞)


尊敬する姿勢 大事

北朝鮮に加え、恐らくイランにも核兵器が拡散していることが今、世界にとって大きな脅威になっています。それらがテロリストの手に渡る可能性も否定できません。

現在、国同士の戦争というのはほぼありません。宗教や人種問題に伴う国内の紛争がほとんどです。国際社会はもっと努力して、国内の民族的、宗教的な紛争の解決に力を注ぐべきでしょう。少数派の権利を認めて尊重し、相互に尊敬する姿勢や寛容さをはぐくまなければなりません。

また、人々が平和な世界をつくっていくためには、団結して核拡散防止条約(NPT)などの核関連の国際条約の実施を求める必要があります。特に核保有国は、目に見える形で積極的に核兵器を削減し、最終的に廃絶するべきです。核保有国が関係している紛争の解決にも力を入れ、全面戦争にならないようにしなければいけません。

若い人たちは、自らが知らず知らずのうちに持っている偏見に疑問を持ちましょう。社会や地域、国の異なる人々を尊敬し、容認することが大切です。

私は今回のサミットで、核兵器が世界に与え続けている脅威とともに、5カ国以外が核兵器を持つことを禁止したNPTなどの国際条約を確実に守るための現実的な策をとる必要性を訴えます。(中2・大林将也)

受賞理由 アパルトヘイトを平和的に終結させた。
平和活動家
ジョディ・ウィリアムズさん
(1997年受賞)


自分で動き出そう

世界の人たちが自由に暮らせ、公平で平等な社会にするためには、話し合いを続けなくてはなりません。政府が現状の権力を持ち続けるためでなく、市民のために行動するよう、政府に働きかけ続けることが平和につながるのです。待っているだけでは何も始まりません。軍事力の強化からは安全な社会につながらないということを政府に伝えなければならないのです。

核兵器禁止条約は、核兵器や戦争のない平和な世界に向けた目標の一つです。核兵器の使用、製造、所持などを禁じるこの条約を通して、核兵器のない世界をつくらなければなりません。一人一人が平和を求めて動けば条約は達成できます。実際に、地雷禁止国際キャンペーンやクラスター爆弾連合など、市民が政府に圧力をかけたことで、事態が良い方向に行った例もあります。

若い皆さんは、世界で繰り広げられている平和キャンペーンに積極的に参加してください。特に、広島の若者は、身近な家族の原爆体験や日常の暮らしの中から平和を学べます。インターネットを使いこなして世界にヒロシマを伝え、地球をより良く変えることもできるでしょう。

核なき世界をつくるのは不可能ではありません。核なき世界を信じることが、実現への第一歩になるのではないでしょうか。(中2・木村友美)



受賞理由 対人地雷の禁止と除去に貢献した。

赤十字国際委員会
(1917、44、63年受賞)

アレクサンドレ・
リベスキンド総裁顧問


途上国の今 学ぶべき

現在、イランやアフガニスタンを除き、国同士の争いごとはまれになっています。しかし、国内紛争は今も平和を脅かす大きな問題です。人々が安全のために核兵器に頼らなくてもいい、安心できる世界にならなければ、核兵器は廃絶されません。

そのような世界を実現するために、現在の学生は発展途上国に住む人々の暮らしぶりを勉強しなくてはなりません。彼らがよりよい生活を送るのに、何が必要かを把握してください。

サミットでは、グローバル化しつつある世界に対して日本の人たちが持っている期待や不安を理解したい。また、日本の若者から元気や想像力を分けてもらうとともに、人のためになる活動を積極的にしてもらえるよう働きかけたいと考えます。(高3・古川聖良)

受賞理由 紛争地で犠牲者の保護、救援などに貢献した。
米国フレンズ奉仕団
(1947年受賞)

シャン・クレティン事務局長


大切な資源 心に投資

個人への尊厳や多様な文化を尊重する気持ちがなければ、世界は平和になりません。平和な社会をつくるには、強大な軍事力を維持するために貴重な資源を無駄にするのではなく、芸術の支援など人々の精神的な面に投資するべきです。核兵器の近代化を食い止め、貴重な天然資源を軍事につぎ込まないよう努力をしないといけません。

あなたたち中高生にできることはたくさんあります。まず、徹底的に歴史を勉強することです。可能なら外国へ行き、その社会について学びましょう。インターネットで他の国の人と話したり、学んだりすることもできます。正義や平等、お互いに理解し合うすべを身に付けることで、難民や戦争の犠牲者たち、困っている人を助けることができるようになるでしょう。(中2・佐々木玲奈)

受賞理由 社会奉仕や人道支援、平和運動を地球規模でした。

核戦争防止国際医師会議
(1985年受賞)

バァップ・タイパレ共同会長


核廃絶へ声を大きく

ヒロシマは平和を求めて努力している人々にとって象徴的な存在です。だからこそ、現地を見、肌で感じることで、私たちは平和への思いや活動をより強固にできます。

平和とは、豊かな文化や活発なコミュニケーションがあり、人々が積極的に協力している状態です。紛争や戦争がない世界です。しかし現在、武器の取引は世界で非常にもうかるビジネスになっています。また健康や生活水準の差、貧困が対立を生み出しています。

核兵器や戦争のない世界に向け、平和を望む人々の声をさらに大きくすべきです。中高生が平和のためにできることはたくさんあります。世界の平和活動にかかわり、平和について意見を出し合うこともできます。協力して目標を達成しましょう。(中2・坂本真子)

受賞理由 核戦争の医学的影響に関する研究、教育に貢献した。
国境なき医師団
(1999年受賞)

黒崎伸子・日本会長


身近な問題から解決

私は、紛争地に派遣され、争いに巻き込まれた多くの人びとへの手術や治療をしてきました。患者さんたちの命が再び脅かされることのないように願っています。

平和な社会は、人命が尊重され、一人一人が人間としての権利や尊厳を保って生きられる状態ではないでしょうか。シンプルですが、とても難しいことです。人道援助は目の前にいる人々の苦しみを少しでも和らげることを目的にした最も非政治的な活動です。国家に、さまざまな問題を具体的、適切に解決してほしいです。

中高生の皆さん。自分たちが抱えている問題を、家族やクラス、チーム、学校の中で解決できるよう、努力してください。他人や違う文化に対して興味を持ち、意見を交換してください。(中3・石本真里奈)

受賞理由 貧困、紛争地域で緊急医療活動などをした。

気候変動に関する
政府間パネル
(2007年受賞)

ラジェンドラ・パチャウリ議長


人々の「必要」満たす

環境を保護し、平和と非暴力を両立することが社会にとって大切です。人々の「欲」でなく「必要」を満たすことも重要です。これはインド独立の父であるマハトマ・ガンジーが訴えています。

私たちは、自分の持つ強欲さを他人への思いやりの気持ちに変えるとともに、持続可能な発展に力を注がなければなりません。若い人には、地球の生態系を尊重しながら成長と発展を目指してほしいです。

サミットでは「世界はすべての人々の必要を満たせるが、欲までは満たしきれない」とのガンジーの信念を訴えたい。ガンジーは「見たいと思う世界の変化にあなた自身がなりなさい」とも語っています。サミット参加者は、目に見える形での変化をもたらせるよう努力しなければなりません。(高2・岩田皆子、写真は共同)

受賞理由 気候変動に関する活動に貢献した。
元南アフリカ聖公会
大主教
デズモンド・ツツさん
(1984年受賞)


教育・医療にお金を

今回のサミットは欠席しますが、核弾頭ゼロの世界になるように訴えたいです。核弾頭に真の抑止力はありません。一度使われれば、世界は二度と住めない荒れ地になってしまうでしょう。すべての核弾頭保有国は、役に立たない核弾頭を破棄すべきです。

人類は一つの家族です。膨大な軍事予算を使うことをやめ、世界中の子どもたちに安全な飲み水や十分な食料、ちゃんとした住居、きちんとした教育や医療制度を提供してほしい。人類の権利が認識され尊重された時、初めて平和な社会になるでしょう。

中高生には、戦争や貧困がなくなり、子どもたちが無駄に死ぬことのない世界が実現できると思い続けてほしい。そして、大人にもそのような世界実現への協力を呼びかけてほしい。(中1・河野新大)

受賞理由 アパルトヘイト廃止に尽力した。