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国際会議で伝えるヒロシマ
見て聞いて感じる8・6 提案します

国際平和都市・広島では、世界中の国や地域から若者が集まり議論する国際会議がこれまで何度も開かれてきました。

今回の「ひろしま国」は、会議で広島を訪れる同世代の子どもたちに、核兵器廃絶を目指すヒロシマの思いをどのように伝えていくかを話し合いました。

提言を考えるにあたっては、実際に国際会議を運営したり、原爆資料館や平和記念公園の案内をしたりした人たちの経験を参考にしました。

知識として理解するだけでなく、原爆の威力を映像で再現したり、被爆者の話をより深く聴くための工夫などのアイデアが挙がりました。言葉、歴史認識の違いなど、理解し合う上で乗り越えなくてはならない課題は多いです。これらの提言が今後の国際会議の参考になれば、と思います。

マンツーマンで案内


平和記念公園や原爆資料館の見学は、マンツーマンで案内することを提案します。事前に参加者と案内人が連絡を取り合い、参加者の興味や関心に応じてその人のためのコースを決めます。

どんなテーマであれ、興味や関心には、当然、個人差があります。大人数で行動すると、ガイドの説明がよく聞ける場合と、そうでない場合も生まれます。質問したいのに、なかなかチャンスがない、というケースもあるでしょう。

案内役を受け持つ人は、会議参加者が広島を訪れる前に、原爆資料館や平和記念公園に関するホームページを紹介します。参加者はそれを見たうえで、関心事や興味がある場所、見学したいコースを具体的に案内人に伝えます。

この方法だと時間が少ない場合でも効率的に見学ができ、参加者に有意義な時間を過ごしてもらうことができます。(高2・楠生紫織)



教科書比べ 違い理解


参加者に学校で使っている歴史教科書を持ち寄ってもらい、原爆投下がどう書いてあるか、授業ではどう学んだか、紹介してもらいます。

教科書の記述は写真の有無を含め、具体的に紹介し合います。原爆の被害や廃虚からの復興、または日本の加害についてどういった視点で書かれているかも出し合い、それぞれの国や地域の歴史認識の違いも学びます。その上で原爆資料館や平和記念公園にある慰霊碑などを見学し、あらためて感想を話し合います。

毎日手にする教科書を通して、それぞれの考え方の違いを認識し合います。広島であったことを感情だけで受けとめるのでなく、理性的に判断してもらいます。その方が、核兵器廃絶への思いを、立場を超えて共有できるのではないでしょうか。(中1・来山祥子)



被爆の瞬間 CG再現


コンピューターグラフィックス(CG)を使い、1945年8月6日に起きたことを映像化し、疑似体験してもらいます。

国立広島原爆死没者追悼平和祈念館では、被爆した地点ごとに被爆体験を読むことができます。それをCG化し、「ピカッ」という光や「ドン」という爆風、燃え広がる炎など、被爆者の人が見たままを再現します。また、逃げる時に水を求めて川に集まり息絶える人の姿なども描きます。

3次元立体(3D)映像で爆風や炎を、よりリアルに感じるようにします。やけどを負った人など、ショックを受けるようなシーンも盛り込みます。これは、できるだけあの日に広島で起きたことを知ってもらい、核兵器は人類と共存できないことを強く感じてもらうためです。(中3・今野麗花)



アート合作 心一つに


見るだけでなく、体を動かしたりして感じ取ってもらったらどうでしょう。方法として、踊ったり手形を使って絵を描いたりすることを考えました。

踊りは楽しみながらできます。言葉が通じなくても体でコミュニケーションが取れます。少人数のグループで「原爆が落ちた」「平和になった」などのテーマで表現の仕方を自分で考えながら踊ります。合間にはそれぞれの国や地域の伝統芸能などを披露してもらいのもいいかもしれません。

大きな紙に、それぞれ手形を押して地球を描きます。自分の国や海をみんなで一緒に塗っていきます。ひとつの作品を一緒に作ることで他の国の人と話も弾み、地球をみんなで大切にしようという意識が芽生えます。筆で塗るのとは違い、自分たちの手で作っているのだという意識が強くなるはずです。(中2・坂田弥優)



宿泊で「あの日」実感


広島を訪れた人に、原爆被害をより身近に感じてもらうホテルがあればいいと思います。

ホテルには戦前の家を再現し、当時の生活や雰囲気を味わう事ができます。ロビーにはソファや机を置きます。冬にはこたつもあり、リラックスできるようにします。宿泊客はロビーに行けばいつでも被爆者と話すことができます。被爆者は自由にホテルに出入りできます。そこでは、一方的に体験を聞くだけでなく、家族や友達、生活などについて質問し、会話します。そうすれば、戦争によって失われたものの大きさに気づくのではないでしょうか。

私は小学校低学年の時に家で祖母の被爆体験を聞きました。そのときはとてもよく分かり、身近に感じました。講演だと一方的に話が進むため、被爆者との距離を感じます。少人数で時間を気にせずゆっくりと話を聞けば、被爆者の思いがよりしっかりと伝わります。(高1・岩田皆子)




■■ 経験者は語る 国際会議成功のコツは? ■■

APECジュニア会議でガイド
プライス梨奈さん

「話す時間足りない」

プライス梨奈さん

広島市立舟入高国際コミュニケーションコースの1年生35人は、APECジュニア会議in広島2010で、参加者34人を3グループに分け、約2時間にわたって原爆資料館や平和記念公園などを案内しました。
 原爆資料館では、展示を見てもらうことに重点を置き、説明は控えめにしたそうです。碑巡りでは、原爆の子の像や舟入高の前身・市立第一高等女学校の慰霊碑などを説明。最後に原爆慰霊碑に花を手向けました。
 資料館では、佐々木禎子さんが作った折り鶴や黒こげになった弁当箱、触ることができる被爆瓦に興味を持つ人が多かったそうです。プライス梨奈さん(16)は「多くの国の同世代と話せ有意義だったが、少し時間が足りない気がした」と振り返りました。(中1・末本雄祐)

平和未来会議 初回からスタッフ
篠原隼さん

「続けることが大事」

篠原隼さん

青少年国際平和未来会議は、2005年から毎年開かれています。奇数年には広島で、偶数年は海外で開きます。ロシア・ボルゴグラード市など、広島市の友好提携都市などから青少年が参加します。
 初回から原爆詩の朗読をしています。各国の言葉に訳され、参加した人たちが読みます。スタッフとして初回から参加している篠原隼さん(20)は「少しずつでも世界に広がれば意味がある」と話します。
 会議の課題は継続性です。日本の参加者は、基本的に毎年同じ人です。海外からの参加者は継続が難しいようです。このため、インターネットを使ってつながりを保っているそうです。(中2・坂田弥優)

国際高校生サミット実行委員長
黒瀬真一郎さん

「広島」三つの意味

黒瀬真一郎さん

1995年夏にあった'95国際高校生サミットには、15カ国から約250人の生徒が参加しました。
 実行委員長だった、広島女学院の黒瀬真一郎理事長(68)によると、参加者たちは5グループに分かれ、平和記念公園の原爆の子の像や広島女学院高女の慰霊碑、戦時中に旧陸軍の施設が集中していた広島城、アジアに多くの兵士を送り出した宇品港などを回りました。
 黒瀬さんは、「広島」には三つの意味が込められていると言います。一つには、かつての軍都であり戦争の加害者としての歴史があります。二つ目は、原爆を落とされた被害者としての顔を持ちます。そして三つ目は世界に平和を訴える象徴でもあります。「広島が犠牲者の立場だけを訴えてもヒロシマの心は伝わらない」と強調していました。(高2・室優志、中1・来山祥子)