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APECジュニア会議
平和なあす 決意新た

アジア太平洋経済協力会議(APEC)高級事務レベル会合に合わせ、19の国と地域から37人が参加した「APECジュニア会議in広島2010」が20日から4日間、原爆資料館(広島市中区)を主な会場に開かれました。

先進国からも発展途上国からも高校生を中心に若者たちが集まりました。次世代の主役たちは、自分の言葉でアジア太平洋地域が抱える問題や対策を話し合いました。また、被爆者の体験を聞くなど、平和について新たな発見もありました。活発な議論を重ね、一言一言にこだわる宣言文が完成。思いを大人たちへと託しました。

議論をするときは皆、真剣な表情ですが、会議終了後のパーティーなどでは、笑顔が絶えませんでした。参加者全員に会議を通して考え、得たことを聞きました。それぞれがより良い社会をつくるための決意を語っています。  →「会議参加者の思い」へ

全体会議:「軍事力」で激論交わす



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APECジュニア会議の様子です

全体会議は、宣言文を作るための議論を重ねました。細かい表記や文法が議論になる一方、グループ4が提案したソマリアの海賊対策について、激しいやりとりがありました。

オーストラリアのコグラン・サバラトナムさん(17)は「ソマリア沖の海賊は、軍事力を使っても抑えないといけない」と主張。藤井萌子さ(16)んは、「軍事力を行使するのはよくない」と反論しました。議論の結果、軍事力という表現を、「抑止力」に変えました。

サバラトナムさんが海賊にこだわったのは、世界経済に海賊が影響を与えると考えたからです。APECメンバーである中国やロシアは、石油を運ぶ時、ソマリア沖を通るそうです。

タイのチャットルタイ・カンチャナソーパナさ(17)んは「一番大事なことはみんなが集まったこと。それによってお互いを理解できた」と振り返りました。(高1・高田翔太郎、中1・末本雄祐)

全体会議宣言文のポイント

広島での会合は多くの意味で有意義でした。原爆資料館を見学し、被爆者の体験談を聞いたことで、核兵器の廃絶を求める広島の人びとの強い思いと、「平和」を追求する姿勢を理解しました。
APECのメンバーが求めている持続的な経済発展は、国際社会での「平和」を前提にしたものです。APECの指導者たちが私たちの考えと対話を考慮し、地域の関係者「すべて」の間で包括的な対話を促進するよう願います。

グループ1
環境

まとめ
私たちは将来の世代のために環境を意識した社会の構築に努力しています。出発点はささやかであっても、社会のネットワーク、フォーラム、地域社会での運動を通して環境への意識を高めることができると信じています。さらに、私たちのメッセージを広く伝えるため、地域組織、政府、NGOと若者の間の協力を重視します。

 大気と水の汚染、地球温暖化などについて各国が現状を紹介しました。

 農地や木材を得るための森林伐採が深刻な問題になっています。メキシコは国土の半分を占めていた森林が今では10%以下に減り、土砂崩れが多発しています。インドネシアでは、オランウータンの生息地が失われています。マレーシアでは勇気の象徴であるトラが森林の減少に伴い、頭数も減っています。

 世界的な温暖化で北極の氷が解けています。カナダではホッキョクグマが絶滅しそうです。

 環境問題が少ない国もあります。国土の56%が保護され緑の多いブルネイは、国全体を「庭園」にしようと植樹が盛んです。木が1本倒れるごとに4本植え直すそうです。国土のほとんどが木に覆われています。

 ほとんどの政府が地球温暖化対策について動いています。ロシアでは全学校が3、4月の2カ月間、環境保護に取り組むキャンプをしています。メキシコでは、2007年から植樹プロジェクトを実施中です。

 言葉だけでなく実際に行動すること。自分たち若者が何をすればいいか、もっと訴えることが大事です。(高1・坂田悠綺)

グループ2
教育

まとめ
私たちは、教育は権利であるととらえ、地域社会のすべての人びとに対し、教育を尊重するよう働きかけていくことは、学生としての責任だと考えます。

 教育を受ける機会、教育内容の質について、課題が指摘されました。

 メキシコでは、貧しさから義務教育期間でも学校に行けず、働いて家族を支えている子どもたちがいます。ベトナムやタイの政府は、教育が優秀な人材を生み出すと重要視し、投資しています。しかし、ベトナムも貧富の差が大きく、学校に行けない子が多くいます。タイでも、農村部に学校がないなど、まだまだ十分な対策が取られていません。

 参加者からは農村部など学校から離れて住む人のために、テレビやインターネットなどを使った通信教育が必要という意見が出ました。

 タイやメキシコの代表は「先生の給料が低く、優秀な人が教師にならない」と指摘。米国からは「特別な資格が必要で、能力があっても教師になれない場合がある」と報告しました。

 生徒の安全、健康に関する発言もありました。メキシコ代表は、生徒がより良い学校生活を送るために、精神面のケアが大切だと話しました。いじめや暴力で悩んでいる子どものためにスクールカウンセラーを置くべきだと語りました。オーストラリアの代表は飲酒や喫煙の弊害を教えるべきだと主張しました。

 日本の代表は、平和教育の大切さを訴えました。米国に住んでいたころ、現地の子どもが、飛行機の模型で「原爆落としごっこ」をして遊んでいるのを見て、平和に対する意識の差にがくぜんとしたそうです。「教育は平和を実現するための大きな鍵。平和を築くために、国同士が違いを理解し、協力する事が大切」と語っていました。(中3・西田千紗)


グループ3
異文化理解

まとめ
私たちの最終的な目標である「平和」を実現するために、我々はお互いの相違についての認識を高め、相互理解を深めるために一致協力します。

 異なる民族や宗教の人々が互いに理解し合うことの大切さについて話し合いました。

 マレー系のほか、中国系・インド系の人々らが住んでいるマレーシア。首相は、民族や宗教などのすべての違いを祝福すると言っています。中国系の人も住んでいるので中国の新年(旧正月)も祝います。シンガポールには「多数民族」という考え方がありません。だから差別もなく、大学も人種や宗教に関係なく入れるそうです。台湾の代表は「中国と日本の文化の融合を身近に感じる」と紹介しました。中国大陸の伝統的なつくりの家のほか、旧日本軍が占領していたときの名残で日本軍が建てた建物も残っています。

 世界中で起きている紛争についても、互いの考え方の違いが理解できないのが原因、との意見が多く出ました。

 広島の代表が原爆投下について日米で見解が分かれている点を紹介。集まって議論する大切さを主張しました。ブルネイの代表は「国は紛争を防ぐ努力が必要。交渉や歩み寄りが大事」と強調。米国の代表は「言葉が通じ合えばもっと理解し合える。歴史をしっかり学ぶことが重要」と話していました。(中2・井口優香)


グループ4
食と貧困

まとめ
食料は、みんなにとって欠かせないものであり、利益を得るための手段ではなく、幸せな生活を約束するものです。持続的な経済発展のためには食料を無駄にしないことが不可欠です。

 食料不足について中国の代表は、地球温暖化と水質汚染、バイオ燃料の生産、急激な人口の増加の四つが原因だと指摘しました。「環境保護や農業技術の改良とともに、先進国による金銭的支援と技術提供が必要だ」と提案しました。

 これに対しオーストラリアの代表は「なぜ中国はたくさんの二酸化炭素を排出しながら、温暖化について政策を施さないのか」と質問、中国代表は答えに詰まりました。

 特許制度に苦しむ人の話も出ました。タイには約50万人のエイズ患者がいますが、特許で薬が高価なため、入手できる人は20%しかいません。対策として、新薬と同じ成分で製造されているジェネリック医薬品の供給を拡大する「UNITAID」という取り組みがあるそうです。タイの代表は「薬を手に入れることは人間の権利だ。特許制度の見直しが必要」と強調しました。(高2・楠生紫織)



元ジュニアライター串岡理紗さん(18) 4日間で宣言 感動

串岡さん 異なる文化や価値観を持つ青少年が広島に集まり、たった4日間で宣言を作り上げたことに感動しました。宣言は理想像を並べるのではなく、現実を踏まえた内容だったので、自信を持ってAPEC高級事務レベル会合の議長に手渡せました。

私は「食と貧困」グループに所属し、フェアトレード運動について発表しました。参加者から「運動のゴールは何か」と聞かれ,「支援に終わりはない。長期的に支えなければ意味がない」と答えました。これまでは運動をただ進めればいいと考えていました。物事を多角的に見る大切さを学びました。

すべて英語でのやりとりなので、思うように言葉が出ず、悔しい思いもしました。

会議は時折激しい討論になりました。会議を離れると、お互いの学校生活や音楽について話をしたり、ゲームをしたりして仲良くなりました。原爆資料館では、被爆の実態を肌で感じてもらえた手応えがありました。宮島では日本文化について興味を持ってもらえたと思います。



あいさつ・司会 現役がサポート

ジュニアライターが開会式と閉会式の司会、開会式での歓迎あいさつを英語でしました。国際舞台での体験を振り返ります。

開、閉会式の司会をしました。毎日お手本のテープを聴いたり、学校の先生に手伝ってもらったりして練習しました。緊張したけれど終わったときの達成感は最高でした。(高2・村重茜) あいさつ文は、会議でアジア太平洋地域の子どもたちが、世界が平和になるためにどうやって力を合わせるべきかを考えました。(高2・室優志) リハーサルはとても緊張しました。本番ではいろんな人が真剣に聞いている姿を見ることができ、落ち着いてあいさつできました。(中2・坂田弥優)