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いじめをなくす(下)
味方がいる あきらめない

前回に続いていじめ問題を取り上げます。今回は、ジュニアライター自身が経験したいじめについて語り合いました。

いじめをなくす方法についてジュニアライターは、「正直に心を開いて話す」「自分と違う部分があってもその人を受け入れる」という二つを提案しました。

いじめを防いだり、いじめに悩む人を助けたりする具体的な取り組みも取材しました。

子どもたちがいじめを防ぎ、被害を悪化させないよう、人間関係づくりを進めるプログラムに取り組む学校があります。大人も、子どもの話を受け止めたり、ネットいじめの原因となるホームページ(HP)を監視したりする活動をしています。いじめで学校に居づらくなった子どもに、居場所を提供する大人もいます。

 
ジュニアライター座談会
自分たちが経験したり見聞きしたりしたいじめとは? その解決方法は? ジュニアライターたちが座談会を開きました。司会は、広島市中区にあるフリースクール「悠学館」の山崎伸夫さん(53)。参加したのは、高2・楠生紫織、室優志、高1・岩田皆子、中1・末本雄祐です。
どこからがいじめ?
相手を独りに追い込む/心や体を傷つけ続ける

―「いじめ」って具体的にどんなことを指すと思いますか。

 殴るけるの暴力もあるし、言葉の暴力もある。とことん無視する場合もある。特定の人を孤独に追い込む行為だと思う。

 ある個人やグループを傷つけてやろうという言動。集団で1人をやる場合もあれば、1対1という形もあるよね。

 1回だけなら遊びともいえる。でも、それが長期的になるといじめになるのでは。

どうして起きる?
ストレスのはけ口探し/自分アピール強く意識

―なぜ、いじめは起きるんだろう。

 相手をストレスのはけ口にするからだと思う。話しても、もやもやが残ったとき相手の反応にかかわらず手が出てしまう。自分自身の感情を暴力で相手に当てててしまう。

 特定の人が嫌だという気持ち、拒否感が無視などの行動に出てしまう。

 自分をアピールしようとして、その人が邪魔だと感じるときにいじめが始まる。だから、他人の目を意識しやすい中学生のときに特に多いのでは。例えば、自分がピアノをやっていて、自分より上手な人がいたりしたときなど。嫉妬の感情というのは影響が大きいと思う。

 1人でいたくない時、だれかをいじめることで仲間をつくろうとしていることもある。

―実際に自分が経験したり、見たりしたいじめってある?

 塾で一緒だったみんなが、ある日突然口をきいてくれなくなった。いじめられているのを見たこともあるけど、何も言えず止められなかった。

 吹奏楽部で1対1のいじめに遭い、1カ月ぐらい不登校になった。解決した後、今度はいつの間にか、自分がその子をいじめ返していた。

 いたずらの標的にされ、相手に嫌悪感を持って、悪口を言うようになった。いじめられたことへの仕返しなのでいじめという自覚はなかったが、相手はいじめられたと言っていた。

どう乗り越えた?
校外に居場所つくった/友達が話をしてくれた

―いじめをどうやって乗り越えた?

 不登校で引きこもっていたら、校外の指導者に「まずは家から出てみないか」と言われ、外でレッスンを受けた。学校に戻ると部活の先生から、みんな心を一つにしないといい音楽を作れないと言われた。自分にはもっと大きな目標があると思うようになった。

 いじめる側にまわっていた友達の一人が話しかけてくれた。そのおかげで立ち直れた。

―いじめを見ても、どうして止められないんだろう。

 声を上げると自分が標的になってしまうという思いがある。逆に自分も一緒にいじめる側になってしまうという心配もある。

 いじめに発展するのを防いだことがある。自分ともう1人の子のどちらかと遊び、片方を仲間外れにする子がいた。ある日、その子が私に「じゃんけんで負けた方が(もう1人の子に)『大嫌い』と言おう」と持ちかけてきた。私がじゃんけんで負けてしまった。でも、「大嫌い」とは言いたくなかったので「大好き」と言った。すると、話を持ちかけてきた子も一緒に「大好き」と言った。この時「大嫌い」と言っていたらいじめにつながったと思う。

どうすればなくせる?
誰でもいいから相談を/長所短所を素直に言う

―いじめをなくすにはどうすればいいかな。

 取材をするまで、いじめられていることを周囲の人に話すと迷惑になるから話さないほうがよいと思っていたけど、誰にでもいいから相談したほうがよいのだと分かった。1人でいじめに立ち向かえなかったら大人数で「いじめはやめようよ」という声を出さなければならないと強く感じた。

 相手の良いところ、悪いところを素直に言う。はっきりとものを言える友達関係をつくることが大切ではないか。

 性格が合わなくても、その違いが「おもしろい」と感じられるようになれば、いじめにはつながらないはずだよね。


こんな取り組みがあります

フリースクール
自由空間 個性はぐくむ

悠学館に通う子どもたちと談笑する山崎さん(中)(撮影・中2坂田弥優)

いじめられたりして学校に行けなくなった生徒が通う場として、フリースクールがあります。「悠学館(ゆうがくかん)」(広島市中区)には、38人が通い、それぞれ自分のペースで学習しています。

 校長の山崎伸夫さんは、島根県で私立高校の教員をしていました。教師の言うことをよく聞く型にはまった生徒をつくるのではなく、一人一人の個性を認めることが大切だ、という思いでフリースクールを始めたそうです。35歳までの35人が高校卒業資格を目指しているほか、中学生3人も通っています。興味のあること、やりたいことが自由にでき、悩んでいるときは相談に乗ってもらえます。

 中学生のころからいじめを受け、人とコミュニケーションをとるのが苦手だった男の子(16)は、悠学館に通い始めて先生と気軽に話せるようになったそうです。今では、誰かと話すときは自分から会話を持ちだすように努力しているそうです。

 中学2年から学校に行っていなかった女の子(17)は、山崎さんの勧めで米国に1カ月間留学した時、自分からチャレンジするいろんな人たちと出会い、積極的になれたと話していました。2人はフリースクールで学ぶメリットについて「挑戦する機会を与えてくれる」「縛られることなく学習できる」としています。山崎さんは「個性を大切にする、そして生徒が社会に戻りたいと思えるまで待つことができる空間を目指している」と言います。(高1・岩田皆子)

ピアサポート
人づきあい 教えて納得

小学2年生の算数の授業をサポートする二葉中の生徒(中)

広島市立二葉中(東区)は5年前から、いじめや不登校問題への対応として、中学生が小学生の授業を手伝う「ピアサポート」に取り組んでいます。コミュニケーション能力を身につけながら思いやりの心を育てることが狙いです。

  ピアサポートはトレーニング、プランニング、サポート活動、スーパービジョン(振り返り)の4段階に分けて実施します。

  トレーニングは、中学生同士で行います。例えば鶴の折り方を教える時、教えられる側の子をきちんと見てくれない▽相づちをうちながら聞いてくれる▽おせっかいをする、などのパターンに分け、教えられる側の気持ちを考えるきっかけにします。

  サポート活動は保育園や小学校に出かけます。小学校では授業に参加し、アドバイスをするなど子どもたちが理解できるよう手助けします。サポート活動の後には振り返りの時間があります。児童と意思疎通ができたか、できなかった場合はどうすればよいかを考え、改善方法を考えます。

  「よくできたね」「この前よりよくなったよ」などと声を掛けることで小学生のやる気を引き出し、相手が喜ぶことで自分が必要とされていると感じることができるそうです。

  高畑伸穂校長(52)は、「アンケートや教育相談だけではなく、いじめの起きない人間関係づくりが大事です」と話していました。(中2・坂田弥優)

ネットパトロール
裏サイトを監視・報告

NPO法人「イーランチ」(静岡県)は10月から、インターネットの「学校裏サイト」などのホームページ(HP)を監視するネットパトロールを始めました。

 依頼を受けた私立高1校を対象に週2回、1回1時間実施しています。裏サイトは、中高生が集まる掲示板にアクセスして探します。学校名や個人の名前を一部隠すなどして、載せている場合が多いそうです。

 裏サイトを見つけた場合、イーランチの判断で消すのではなく、内容をリポートにまとめて依頼した学校に報告します。削除するかどうかは、依頼者の判断に任せています。静岡県内でなくても依頼を受け付けます。

 イーランチは、ネットパトロール以外にも小学生から高校生を対象にしたインターネットの安全教室を開いています。ネットのよいところや裏サイトや出会い系などの影の部分など、ネットの功罪について保護者向けの説明もしています。

 松田直子理事長(48)は「ネットいじめで命を失うことは、何としても防ぎたい」と言います。(中3・今野麗花)

オンブズパーソン
校外の味方 市にも意見

いじめ被害者の悩みを聞き、問題解決を手助けする「子どもの人権オンブズパーソン」という制度が兵庫県川西市にあります。

  現在、オンブズパーソンは大学教授2人と弁護士1人が務めています。電話や面談形式で悩み相談を受ける常駐の相談員から報告を受けると、内容を審議し、解決方法や支援の仕方を話し合います。その結果、勧告や意見表明の形で、市の機関などに対策を求めます。

  相談員は4人。子どもたちから話を聞き、その要望を親や先生に伝えます。相談を聞く時は、いきなりいじめの話を聞くのではなく、ゲームや雑談などを交え子どもが自分からいじめの話をするのを待ちます。

  この活動は、1999年4月から始まりました。事務所は市役所の中にあります。子どもたちが訪れやすいよう、市役所の外にも「子どもオンブズくらぶ」という相談室を置き、子どもたちが話しやすい環境をつくっています。

 チーフ相談員の森沢範子さん(36)は「子どもが主人公となって問題解決できるようサポートしたい」と言います。(中2・坂田弥優)