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「8・6」外国人にどう発信
言葉の壁 交流で越えよう

8月6日が近づいてきました。この日、広島には国内外から多くの人が訪れます。

広島の人たちは原爆の被害を通して核兵器の恐ろしさを訴え、平和のメッセージを発信するためにさまざまなイベントを企画しています。海外からやってきた人たちは、そんな広島をどうみているのでしょうか。

6月下旬から今月初旬、平和記念公園(広島市中区)で海外から訪れた50人にアンケートをしました。広島で暮らし、広島をよく知る外国の人たちにもインタビューしました。

8月6日は特別な日だからこそ、ヒロシマが発信するメッセージを海外からの訪問者にしっかり受けとめてもらいたい―。そんな思いで、今回の特集を作りました。



平和記念公園でアンケートするジュニアライター(左の2人、撮影は高1岩田皆子)。背景はアンケート用紙

平和記念公園で外国人観光客50人に広島の印象などをアンケートしました。

一番の問題は言葉の壁でした。英語の標識が少ない、原爆資料館(広島市中区)では英語以外の説明がほしいという声が多かったです。市民と交流したいのにほとんどが外国語を話せなくて残念、という意見もありました。

英語でのガイドがあれば、戦争の悲惨さをより感じることができるそうです。市民がボランティアでガイドをしていることに感動したという声もたくさんありました。

8月6日には、街の歴史や原爆被害からの復興について学べる外国語ツアーがあればいいという声が多かったです。被爆者や市民との交流が、平和への思いを高めることにつながるという意見もありました。外国人観光客から寄せられた提案を紹介します。(高2・楠生紫織)


 
平和活動紹介を
広島大大学院准教授 カロリン・フンクさん

「市民の活動紹介コーナー」を提案するフンク准教授(撮影・中1末本雄祐)
 

日本で22年間暮らしている広島大大学院総合科学研究科のカロリン・フンク准教授(48)=ドイツ出身、観光地理学=に聞きました。

広島は英語の標識も多く、原爆資料館でもパネルが英文に訳されているので初めて訪れた人にも分かりやすいそうです。しかし、英語表記だけでは十分とは言えません。

また、広島市民が一生懸命、平和のメッセージを伝えようとしていることは、海外の市民にあまり知られていないそうです。資料館やレストハウス内に市民の平和活動を紹介するコーナーがあれば広島市民のメッセージがより伝わるのでは、と提案してもらいました。貸自転車サービスがあれば、街を回り歴史に思いをはせながら多くの被爆建物を見てもらえるとも話していました。(中3・大友葵)




ネットPR必要
外国人向けHP運営 ポール・ウォルシュさん・ジョイさん夫妻

「もっと事前に宣伝を」と話すウォルシュさん(左)と妻のジョイさん(撮影・中3大友葵)
 

外国人向けのホームページ(HP)「Get Hiroshima(ゲット・ヒロシマ)」運営する大学講師で英国出身のポール・ウォルシュさん(41)と米国出身の妻ジョイさん(40)=広島市東区=に聞きました。

 

2人は、広島に住み始めて13年目です。海外から来た人がより楽しく過ごせるように9年前、HPを作りました。5年前からは無料で英語版広島マップを配っています。8月6日には、国内外から多くの人が集まるのに宿泊施設が少ないと言います。「式典以外のイベント情報が十分伝わっていない」と指摘しました。海外の人が見るHPや掲示板でもっと宣伝した方がいいと言います。

 

原爆資料館などを見学した後、原爆被害の悲惨さに落ち込む人も少なくないそうです。平和のために何かしたいという前向きな気持ちを持ってもらうために、広島市民とかかわる機会や、言葉が通じなくても参加できるイベントがあれば、と話していました。(高3・立川奈緒)

折り鶴の作り方を教えて

タヤプラカシュ
   ・タナタナンさん(23)=インド

原爆の被害や広島の復興について知る無料映画上映会

トーマス・セレミアさん(21)
          =ナイジェリア

世界中の子どもたちを呼んで交流

ミカ・パロウさん(14)=オーストラリア

英語や他の言語での被爆証言

ヨランダ・レチュガさん(32)=スペイン

8月6日という日を広島市民がどう思っているか話し合いたい

アンドラさん(23)=ルーマニア

資料館などの説明にドイツ語やイタリア語なども取り入れて

マリウス・イラッグさん(28)=ドイツ

被爆者と話したい

サラ・レニッシュさん(15)=米国

広島の子どもから海外の子どもに手紙を書く

カート・アンデルセンさん(55)=デンマーク

インターネットで世界中と交流する

パウラ・ビイカリさん(29)=フィンランド

 

■提案

1.海外の旅行サイトにイベント情報
 

8月6日に広島で何を体験できるか情報が少ないという声が多く出ました。市民が多くのイベントを企画していますが、見つけにくいようです。

 

海外の旅行情報サイトなどで紹介するのはどうでしょうか。海外旅行は、数カ月前から準備しますよね。直前でなく早めに情報提供すれば、広島滞在計画を立てやすいのではないでしょうか。

 

広島を訪れる人は日本各地を旅する人も多いので、県外の宿泊施設などでも広島情報を提供すればいいと思います。

2.市民や被爆者と交流する場をつくろう
 

被爆者や市民と交流したいとの要望がありました。講演や対話集会のような場だけでなく、お茶会など和やかな雰囲気で平和について話し合える場があればいいなと考えました。

 

また広島を訪れた外国人と被爆者、海外で開かれているイベントの参加者をテレビ会議システムでつなぐのはどうでしょうか。その後、参加者全員で千羽鶴を折ったりすれば、平和への思いが一つになると思います。

3.ヒロシマぐるり 外国語ツアーを始めよう
 

広島の街を舞台にした外国語ツアーを始めるのはどうでしょうか。

 

原爆投下前や復興中様子が分かるの写真が残っていて、今と比較できる場所があれば、そこにその写真と多言語の説明版を置きます。他にも例えば、多くの被爆者が水を求めて飛び込み、亡くなった川を船で巡れば、被爆当時の様子を具体的に想像してもらえるはずです。(高1・高田翔太郎、中3・高木萌子)


広島市はどんな対応?⇒英語マップ/予約不要のボランティア/無料キャンプ場

 

8月6日に広島市はどんな取り組みをしているのか、取材しました。

 

平和記念式典会場で配るプログラムは日英両語が並記されています。レシーバーを借りて、同時通訳を聞きながら式典に参加できます。

 

観光案内所など計8カ所では英語の無料マップを配ります。A4サイズ4ページで両面カラー。6日前後のイベント情報などを掲載しています。

 

原爆ドーム前や資料館本館下に設ける臨時コーナーでは予約なしでボランティアガイドに案内を頼めます。英語を話すガイドも約10人います。

 

広島市立大(安佐南区)運動場で開く「Hiroshima peace camp(ヒロシマ・ピース・キャンプ) 2009」は4日から7日までの間、無料でテントを設営できます。企画、運営する大学生らのボランティア約50人の中には英語やドイツ語、中国語などを話せる人もいます。5日夜は、ぼんおどりやコンサートなどを予定しています。

 

ボランティア代表の上代隼平さん(22)=南区=は「資料館で知識を得るだけでなく、世界中から集まった人同士の交流を通じて『平和』を感じてもらいたい」と話していました。(高1・岩田皆子、中1・末本雄祐)