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国別の平和度
幸せ測る点数 もっと上げるために

アイスランドの子どもにテレビ会議システムを使って質問するジュニアライター(撮影・中1坂田弥優)

 自分の国がどのくらい平和なのかを数字で知ることができます。紛争の数や軍事費などをもとに算出した「世界平和度指数(GPI)です。自分の国が他の国と比べて平和でないと分かれば大人たちも改善へ向けて努力するかもしれませんね。

 では、同世代の子どもたちは自分の国の平和をどれだけ実感しているのでしょうか―。3カ国の子どもたちにテレビ会議システムやメールで聞いてみました。

 平和度が世界一高いアイスランドでも、子どもたちは経済危機から起きる社会不安で平和でないと感じています。国民の幸福度アップを国の目標にしているブータンも難民問題を抱えていることを知りました。

 平和度を上げるのに必要な要素についても尋ねました。大人にすべて任せるのではなく、自分たちができることもやってみよう―。そんな思いを子どもたちが持っていることも分かりました。

世界唯一の指数 24項目から算出

GPIは、オーストラリアのシンクタンク「経済平和研究所」が毎年、発表しています。GPIづくりを提案したオーストラリア人スティーブ・キレリアさん(59)に、メールで聞きました。

GPIは紛争の数や軍事の数、殺人件数、人権の尊重度など24の指標で算出します。欧米などの研究者でつくる委員会が、平和を「暴力がないこと」と定義して選びました。使うデータは国連や平和関連の研究所のものです。「平和」を基準に国を順位づける世界で唯一の指数だそうです。

最初の2007年は121、08年は140の国と地域の指数を出しました。世界で一番平和度が高いのは、アイスランドです。日本は5位で米国は97位。最下位はイラクでした。

キレリアさんは、各国の平和度を比較すれば、平和を持続させたり、より平和にするために改善したりする努力につながると言います。データを手に入れることが難しい国や地域があるため、世界の国すべてのGPIを出せないことが課題だとも教えてもらいました。(高1・見越正礼)


<1位>  アイスランド → 他国支援へ寄付募る

左=首都レイキャビクの街並み
右=空手の練習をするアイスランドの子どもたち
テレビ会議システムでの取材の様子

アイスランドは平和度世界1位の国です。首都レイキャビクのヴェステゥルバイヤル小6年ニクラウス・バルカルソン君(11)にテレビ会議システムを使って取材しました。

アイスランドは軍隊を持っていません。戦争もしていません。学校でのいじめや子どもに対する犯罪など身の危険を感じることもなく、市内に子どもだけで遊びに行くこともできて自由だと言います。

しかし昨年秋から、経済危機に対して政府が十分な対策を取っていないと反発した市民が抗議行動を起こしています。多いときには3000人が参加したこともありました。市民が警察官と衝突したり、けがをする様子を見ると、平和ではないと感じるそうです。

子どもたちにできるのは、大人に平和の大切さを訴えたり、政府に平和活動を支援してほしいと要求したりすること。ほかにも、平和でない国を支援するための寄付金を募ることは子どもでもできると言います。

バルカルソン君は平和に必要な要素として(1)お互いの意見に歩み寄る(2)国交を持って貿易などで交流する(3)他人が信用できる(4)幸せと感じられる(5)兵器をあまり持っていない―を挙げました。

私たちも幸せに笑っていられることが平和だと思うので、この意見に共感しました。そのために大人を動かそうという考えは、私たちにはなかったので驚きました。(中3・岩田皆子、中1・坂田弥優)

アイスランド ヨーロッパの最西、北大西洋に位置する島国。人口約31万人。面積約10・3万平方キロメートル。公用語はアイスランド語。


<26位>  ブータン → ノーが言える大人に

左=首都ティンプーの一角
右=ジグミ・ロセル小の子どもたち

国民総幸福量(GNH)の向上を国の目標にしているブータンの子どもに取材しました。首都ティンプーに住むジグミ・ロセル小6年のリリー・ヤンチェンさん(11)とイシ・セルドルさん(11)に自分の国の平和度について聞きました。

ブータンの平和度は高い、と2人は言います。戦争もなく、食べ物も十分にあり、貧しい人も少ないと感じるからです。

でも地域によっては平和でないところもあると言います。南部では文化の統合政策に反発が起こりネパール系国民が国外に脱出、難民になるなどの問題もあるそうです。

子どもへのレイプ事件が増えたり麻薬を使う子どもがいることなどを新聞で読み、危険を感じることもあります。

平和のために必要なのは(1)犯罪を起こさない(2)戦争をしない(3)麻薬を使わない(4)嫉妬心を持たず、人と仲良くする(5)堕落しない―ことだと言います。「しっかり勉強して悪いことに反対できる大人になれば、世界に平和な国が増える」と話します。

自分たちの日々の行動が平和につながると信じていることを知り、うれしかったです。。世界中の子どもたちがそのように考えれば、世界が平和になる日は近いかもしれません。(中2・高木萌子)

ブータン ヒマラヤ山脈東部の南斜面にある王国。人口約66万人。面積約4・6万平方キロメートル。公用語はゾンカ語。

国民総幸福量(GNH) 物質的な基準ではなく幸せの指標として前国王が提唱した。指標の柱は(1)経済発展と開発(2)伝統文化の継承、振興(3)自然環境の保全と持続可能な利用(4)良い統治―の4つ。



<34位>  コスタリカ → 心一つに福祉・教育

左=アラフェラの街角
右=ヌニェスさんが通う学校の授業風景

憲法で軍隊を持たないと決めているコスタリカの子どもはどのように考えているのでしょうか。中部アラフエラに住む9年生サラ・ヌニェスさん(14)にメールで聞きました。

コスタリカは水や天然資源が豊富です。1948年の内戦後、軍隊を撤廃しました。戦争はしていません。でも、ヌニェスさんは「コスタリカは一見平和だけど、戦争が無いことだけが平和なのではない」と言います。

特に強盗や犯罪の多さが問題です。首都の中心部では宝石を身につけているだけで強盗に遭うこともあるそうです。隣国ニカラグア人に対する差別などもあると教えてもらいました。

他の国では、特にイラクで戦争をしている米国を平和ではない国としてあげました。

平和のために必要なことは(1)気持ちを一つにして、福祉や教育政策に取り組む(2)話し合いをする(3)問題を解決するために新しいアイデアを持つ(4)肯定的な考えを持つ(5)広い視野を持ち、他の人の視点で問題を見る―ことだと言います。

世界に平和な国を増やすためには、私たち子どもが未来をつくるんだと信じることが大切だと話しました。私はこの言葉に心を動かされました。世界の子どもたちが、自分の将来を真剣に考え、あきらめずに行動すれば今よりずっと平和な国ができると思いました。(小6・白川梨華)

コスタリカ 中央アメリカの国。人口約450万人。面積約5・1万平方キロメートル。首都サンホセ。公用語はスペイン語。

コスタリカの憲法 1949年に制定した第12条で「恒久的機関としての軍隊は禁止する」と定めている。自衛権は認めている。2003年、イラク戦争を支持する政府の姿勢は憲法に違反するという訴えを市民が起こし、翌年最高裁憲法法廷はこれを認めた。



<5位>  日本 → 人の意見を尊重する


日本は平和なのか、ジュニアライター6人で意見を出し合いました。「平和だ」と思う人が4人、「平和ではない」という人が2人いました。

平和だと思う理由は、命を脅かされることがないからです。戦争も起こっていないし、毎日十分な食べ物も手に入れることができます。また、当たり前のように学校に通うこともできます。

世界には今、飢餓などで命を脅かされている人がいます。しかし、私たちはそんな心配をする必要もなく、平和について意見を交わし活動もできます。それ自体が平和の証しだという意見も出ました。

でも一方で事件が毎日のように起こり、いじめが原因で自殺する子どもがいることは平和ではないと感じます。簡単に人が殺されているようで、人の命を粗末にしていると思うこともあります。

平和に必要な要素として(1)戦争などで命を脅かされない(2)食べ物や住む場所などがある(3)人の意見を尊重し、協調する(4)貧富の差がない(5)環境が汚染されていない―ということが挙がりました。(高1・土田昂太郎)




 提案! 私たちの平和度 

取材した3カ国の子どもたちからの意見と、ジュニアライターの考えを合わせて、平和度を計る指標を選び、平和度を上げるためにできることを考えてみました。

指標

(1)最低限の生活 戦争をしていない、安心して眠れる場所がある、毎日の食事や安全な水を手に入れられる

(2)安全の確保 いじめが少ない、犯罪に巻き込まれない、身の危険を感じない

(3)教育の保障 就学率が高い、義務教育を受けられる、戦争や平和について学べる

(4)人とのつながり 一日に笑う回数が多い、家族や地域の人とのつながりが強い

(5)そのほか 武器の数が少ない、自分の意見を自由に言える


行動

【大人に意見を言う機会をつくろう】

 私たちが平和に暮らすためには、大人が変わってくれないと難しいと思います。戦争をする理由に反論し、平和のためにこんな事をしてほしいという思いを直接伝えたいです。そのために、大人と同じ人数の子どもたちが集まる会議を開いてみたらどうでしょうか。

 【世界の子どもとふれあおう】

 ほかの国の子どもと話したり遊んだりするだけでも、相手の気持ちを理解することができます。困っていたら助けたいという気持ちになります。大人になって戦争をしたいとは思わないはずです。そんな子どもたちから大人も影響を受け、少しずつ世界の国々が仲良くなっていくと思います。

 今回、テレビ会議システムを使って取材をし、簡単に海外の子どもと意見を交換できることを知りました。実際に会うことが難しくても、手紙やインターネットでできるだけ話し合いたいです。

 【ピースカードを作ろう】

 平和に近づくために子どもが守るルールを書いた手のひらサイズのカードを作るのはどうでしょうか。「人を傷つけない」「平和活動に参加する」など、世界の子どもたちが決めたルールを書き込みます。各国の子どもたちがそのカードを持ち歩き、同じ思いを持ち続けたらより平和に近づけます。(中3・岩田皆子)