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クリーンエネルギー
輝く未来へ 知恵結集

私たちの便利な生活に欠かせないものの一つに電気があります。現在、日本の発電は主に火力に頼っていますが、石油や石炭を燃料にすると地球温暖化の原因となる二酸化炭素を出すという大きな問題もあります。

私たちやその次の世代が住みよい環境で、平和に生きるためには地球に負担をかけずに発電をする方法の研究が急がれます。

ジュニアライターは、環境に優しいクリーンエネルギーについて学び、新たな発電に挑戦する先生の話を聞きました。よく知られている太陽光や風力以外に、工場から出る熱を利用したり、微生物を使ったり、意外な物で発電する研究が進んでいることを知りました。

未来に向け、人類の知恵を結集する研究とも言えますね。

 

 クリーンエネルギーの現状

 日本の発電 10%占める

エネルギー研究を約30年続けている産業技術総合研究所(茨城県つくば市)の大和田野芳郎研究コーディネータ(56)にクリーンエネルギーの現状を聞きました。

一般的には、二酸化炭素をあまり出さない再生可能エネルギーを指します。水力や風力などにより作られる自然エネルギー、植物から作られる燃料などがあります。

原子力発電はあまり二酸化炭素を出しませんが、現在は再生不可能な放射性物質を使うので、クリーンエネルギーとは言わないそうです。

今必要とされる理由は、火力発電が出す二酸化炭素などによって地球温暖化が進んでいること、火力発電の燃料となる石油や石炭などの化石燃料がなくなりつつあることが挙げられます。

クリーンエネルギーは現在、日本の電力のうち10%を占めています。そのうち、8%は水力発電で、風力や地熱を使った発電もあります。10%という割合は大国のなかでは努力している方だそうです。太陽光発電では発電量がドイツに次いで世界2位です。

問題点としては、太陽光発電は雨の日はできないことや、風力発電は風まかせなこともあり、発電量が天候に左右されることです。

普及には設備を安くつくることが必要で、エネルギーを効率良く生むなどの技術開発面、国が発電設備建設に補助金を出すなど制度面での課題があります。

研究・開発段階のクリーンエネルギーもいくつかあります。海の波を利用した波力発電や、捨てられる熱を使って発電する熱電発電、真水と海水の濃度差を利用した発電方法などもあるそうです。(高1・見越正礼)



 こんな発電方法もあるよ

微生物発電 −わらなど分解 電子取り出す
 

バクテリアなどを利用した発電です。約5年間研究している広島大大学院先端物質科学研究科の柿薗俊英准教授(49)=応用微生物学=に仕組みや実用化に向けた課題を聞きました。

微生物が餌を食べることを利用しています。微生物が入ったタンクにわらなどの材料を入れると、材料に含まれる炭水化物が微生物によって電子や水素イオンなどに分解されます。この電子を使って発電するのです。

わらの代わりに排水を使えば、水の浄化にも役立ちます。発電の時には水と二酸化炭素が発生します。

現段階では発電量がまだ少ないので、工夫と実験が必要です。しかし柿薗准教授は「さまざまな材料を使えることが魅力で、残飯や消費期限が切れた食品などを使えばごみを減らすことができる。土壌に還元されているわらなども有効的に使える地球に優しい発電方法」と訴えています。(中2・高木萌子)

柿薗先生に微生物発電のしくみを聞きました
 
熱電発電 −車や工場の熱 無駄なく活用
 

車のエンジンや工場などから出る熱を利用します。広島大大学院総合科学研究科の宇田川真行教授(58)=実験物理学=に仕組みを聞きました。

温度差があれば発電できます。棒状の半導体などの両端に温度差があると、電子が移動する現象(ゼーベック効果)を利用します。燃料を使わないので温度が高い所と低い所を作れば半永久的に発電できるそうです。

問題点もあります。現段階では、発電を続けると低温側に熱が伝わって温度差がなくなってしまうのです。実用化には、電子は伝えやすく、熱は伝えにくい物質を見つけることが鍵になります。

発電所のような大規模な発電はできませんが、車のエンジンの熱から車内のエアコンに使う電力を作ることが近い将来可能になるだろうと話していました。また持ち運びが可能なので、被災地などで携帯電話の充電をするなどの利用法も考えられるそうです。(高1・土田昂太郎)

宇田川先生に熱電発電のしくみを聞きました
 
宇宙太陽光発電 −24時間OKで効率もアップ
 

太陽光を集める反射鏡が地球上ではなく、宇宙空間にあるので地上の約10倍、太陽エネルギーを受けることができます。また地上では夜間や雨だと発電できませんが、宇宙ではほぼ24時間可能です。

宇宙航空研究開発機構(JAXA)未踏技術研究センター高度ミッション研究グループの藤田辰人主任開発員(41)に仕組みや課題を聞きました。

この方法は宇宙で集めたエネルギーをいかに効率よく地球に送るかが課題となります。マイクロ波かレーザーで地上の受電プラントに送る方法が研究されています。

大きな課題はコスト面です。大型反射鏡を持つ「宇宙エネルギー・ステーション」などが必要となります。それを打ち上げるためのH2Aロケットだけで約100億円かかるそうです。

また、地上に送る方法も、まだ地上同士でしか実験していません。これらをクリアして2030年ごろには実用化したいそうです。将来は火力や水力発電などに肩を並べるようにすることが目標だそうです。(中1・坂田弥優)

 
波力発電 −水位変化利用 安定した電力
 

波によって海の水位が変化することを利用します。プロペラやローラーを回転させて電力を作るのです。

山口大大学院理工学研究科の羽田野袈裟義教授(56)=水工水理学=によると、フランスでは200年ほど前から、日本でも約100年前に研究が始まりました。波は常に起こるので、他の自然エネルギーを使うより安定した電力を作り出せる長所があります。また、電線が届かない離島でも周囲の波を使って電力を作り出せます。

主に防波堤を使う大規模なものと、水面や水中に装置を設置するものの2種類あります。

前者は空気室を設け、波の上下運動でできる空気の流れでプロペラを回す仕組みです。防波堤建設のときにしか設置できず、コストが高いという短所があります。

一方後者は、強い波を受けると壊れやすいという問題がありました。

そこで羽田野教授は、海に浮かぶ円柱形の鉄製フロート(浮き)をワイヤにつるす仕組みを考えました。フロートが波で上下に動くことにより、真上につないだワイヤが動き、ローラーを回します。ローラーは一方向にしか動かないように工夫され、従来よりも効率よく発電できます。

実用化はまだされていませんが、韓国の電気のつかない離島で導入する計画があるそうです。(中3・岩田皆子)

羽田野先生に波力発電のしくみを聞きました



水力11.9円 太陽光47円 風力10円
 普及 コスト面が課題

中国電力は水力と太陽光、風力発電を導入しています。より普及させるには「コストが課題」だそうです。

経営企画部門(電力取引担当)の千葉治義マネージャー(52)によると、ごみを燃やすときに出る蒸気でタービンを回す廃棄物発電が一番コストが低く1キロワットで1時間発電するのに9円から12円、太陽光発電では47円かかります。火力発電は5・7円から10・7円なので、かなり高いと言えます。(小6・白川梨華)