クリックで拡大画像を見ることができます。 |
31号に続き、「ピカ資料研究所」(竹原市)が所有する平和切手を紹介します。日本編の今回も、代表のせせらぎ了さんに多くの実物を見せてもらいました。
世界の切手と同じように、日本でもハトが平和の象徴として描かれていました。最も古いものは、1919(大正8)年に発行されています。図柄を公募した切手にも、ハトは多く登場しています。
原爆被害からの復興のための法律ができたときや、戦後50年の記念など、広島と関係の深い切手の紹介も受けました。ただ人類史上初めての被爆国であるにもかかわらず、海外に比べてデザインにメッセージ性が薄い、と感じたジュニアライターもいました。
「平和のハト」度々登場 ―最初は1919年発行
日本で平和をテーマにした最初の切手は、1919(大正8)年に発行された「平和紀念」=写真左上=です。第一次世界大戦が終わったことを祝うこの切手は、2種類のデザインがあり、どちらもハトとオリーブの葉が描かれています。
| ||
|
せせらぎさんに見せてもらいました。戦争に勝ったことでなく、終わったことを喜んでいる切手というのが印象的でした。
海外約29万種類と国内約1万種類の切手を所蔵する、郵政資料館(東京)によると、平和の象徴としてハトをモチーフにした図柄は当時は珍しかったそうです。海外では1918年に旧チェコスロバキアが発行した切手に「平和のハト」が描かれている程度だそうです。
日本でこの時期にハトが使われた理由について、同資料館は「記録は残っていないが、絵は西洋風。ハトが平和の象徴だという西洋文化の影響があるのでは」とみています。
せせらぎさんによると、その後も平和にまつわる出来事があった時には、ハトの切手が出ているそうです。
国連が定める「国際年」の記念切手では、国際協力年(65年)や国際婦人年(75年)に、ハトが登場します。日本復帰前の沖縄では、72年に「沖縄返還協定批准記念」の切手=同左下=が出ており、日の丸と星条旗が線で結ばれ、その下に白いハトがいます。「琉球郵便」の文字があり、5セントでした。
デザインを公募した切手にもハトは多く出てきます。平和のシンボルとして定着していることを再認識しました。
平和をテーマに募集した「世界遺産シリーズ第11集」(2003年発行)には、海外を含め1万19点の応募がありました。採用された8枚のうち5枚にハトがいます。原爆ドームの上を飛んでいたり、子どもを抱いた母親と一緒に描かれていたりと図柄はいろいろですが、平和への思いが伝わってきます。
一方ハトは、伝書バトとして使われた歴史があるため平和だけでなく、郵便の象徴としても切手になっています。日本の切手に初めて登場したのは1905年の「日韓通信業務『合同』記念」です。「万国郵便連合加盟100年記念」(77年)などにもハトを見ることができます。(中1・小坂しおり)
「広島平和記念都市」「長崎国際文化都市」建設法記念・1949年 平和の表現 不満の声も | |
広島と長崎が切手になっていました。被爆から4年後の1949年です。原爆被害から復興させ、平和を象徴する都市をつくろうと、国が市の計画を補助金などで手助けする「広島平和記念都市建設法」「長崎国際文化都市建設法」ができたのを記念して作られました。 広島の切手=写真右=は、8月6日の発行です。背景は茶色で、一輪のバラを手にした女性が座っています。広島市は、平和を象徴するような図柄を使い、色は緑色にするよう旧逓信省に要望していましたが、同月9日に発売され、3羽のハトや眼鏡橋などの観光名所が描かれた長崎の切手=同左=の方が緑色になっています。 郵政資料館によると、バラを持った女性は平和を表現しているそうですが、ぼくにはそう感じられませんでした。せせらぎさんも「広島の被爆者は怒っていた」と話していました。(中3・高田翔太郎) |
平和50周年記念・1995年 ドーム 戦争や血を連想 | |
「平和50周年記念(広島・長崎平和祈念)」(1995年)の切手には、公募で集まった8646点の中から選ばれた3種類の図柄が採用されています。ハトを背景に、原爆ドームを描いた「平和のはばたき」が、最も平和の切手という印象がしました。 赤いドームは、戦争や血を連想させます。その一方で、翼を広げた白いハトが、平和をもたらしていると感じました。(中3・古川聖良) |
国際平和年記念・1986年 優しい色使いが特徴的 | |
国連が国際平和年と定めた1986年に、日本でも記念切手が発行されました。図柄は公募され、「ハト」と「手をつなぐ子どもたち」の2種類があります。 ハトの切手は、オレンジや青など7色で描かれていて、優しい色使いが特徴的です。だけど、せせらぎさんに見せていただいた、きのこ雲などを使った海外の国際平和年の切手に比べると、訴える力が弱いと感じました。(中3・古川聖良) |
たばこ・シールでもはばたく | ||
せせらぎさんに見せていただいた資料の中には、たばこのパッケージや紙幣、シールなど切手以外にもハトを使ったデザインがありました。 日本専売公社(当時)は1952年、たばこ「ピース」の図柄をオリーブの葉をくわえたハトにしました。米国の有名なデザイナーに依頼し、発売後、売り上げが大きく伸びたそうです。デザイン料は当時のお金で150万円もしました。これは現在も使われています=写真上の左。 原水爆禁止の切手発行を呼び掛けるシールもあります=同上の右。東京の若者グループが55年、切手形のものを作りました。市民に身近な切手で反核の意思を示そうと、きのこ雲が上り、その横にハトが飛んでいます。茶色が多く使われた絵の中で、白いハトが平和をアピールしているように感じました。 47年から発行された十銭紙幣=同下=には大きくはばたくハトが描かれています。「お札と切手の博物館」(東京)によると、これまでハトが登場する唯一の紙幣だそうです。(小6・坂本真子) |
【注】郵便切手類模造等取締法に基づき、切手に斜線を入れています。