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NPOとNGO、草の根パワー
 〜世界を変える。夢じゃない〜

「人のために」「世界のために」と頑張っている人たちがいます。子どももいます。被爆体験継承や国際交流、平和イベント…。草の根で活動する人たちは「ひろしま国」の誇りです。

同じ志を持つ人たちが集まった民間非営利団体(NPO)や、非政府組織(NGO)には、どんなものがあるのでしょうか。ジュニアライターは興味を持った3団体に取材しました。実際に活動も体験してみました。

取材を経て、どんな団体があれば、より平和な世の中がつくられるかについても議論をしました。編集後記には「自分の力を世界で生かせることは、すてき」「やりたいことを実行できる人になりたい」―。彼らの成長ぶりが読み取れます。



    

■国際協力 ヒロシマならでは −広経大の中山修一教授に聞く


中山修一教授

広島にはどんなNPOやNGOがあり、特色は何だろう。広島大大学院国際協力研究科長などを務め、NGOなどに詳しい広島経済大の中山修一教授に聞いてみました。(高1・吉岡逸登)

広島県内に事務所のある特定非営利活動法人(NPO法人)は2007年3月末現在で468(県調べ)。資金不足などから活動休止のものも含まれます。具体的な成立条件がないNGOは把握している機関がありませんが、中山教授は「実働しているのはNPOと合わせ500弱くらい」と推定します。

その特徴は、やはり平和活動に取り組む団体が多いことです。「活発な団体が30はあるのでは。最近は核兵器廃絶などを前面に押し出すものから、被爆地からの国際協力をしようとする団体が増えた」と分析しています。課題としては、市などによる平和の取り組みが進んでいるため、そこに頼ってしまう傾向があるとも言います。

中山教授は、県内を拠点にするNPOや企業など14団体21個人が加盟する平和貢献NGOsひろしま(PEN)=広島市中区=の理事長でもあります。それぞれの団体が連携することで、より大きな力にすることを目指しています。2005年、スマトラ沖地震の支援の際は、ヒロシマから来たというと現地の人がそれだけで勇気づけられたそうです。ヒロシマの知名度を生かした活動が今後も期待できます。

 
広島のNPO法人を取材・体験
平和公園の清掃 海外の児童施設支援 ピースキャンドル… いろんな活動があるね
 

■HPS国際ボランティア

平和記念公園で松下さん(手前左端)と一緒にごみを拾った(撮影・高3田辺春奈)

NPO法人HPS国際ボランティア(広島市中区、会員78人)の副理事長、松下英樹さんは高校2年生です。広島大付属高に通いながら、平和集会を開いたり、清掃ボランティアなどを率先してやっています。月1度の平和記念公園(中区)の清掃に私たち4人も参加しました。

約30分間、空き缶やたばこの吸い殻などを拾って歩きました。ホームページから参加申し込みをした親子など20人も参加しました。暑い中での作業はとても疲れましたが、ごみ袋約10袋分が集まりました。

松下さんが清掃活動を始めたきっかけは、中学1年のとき平和記念公園にごみが落ちているのを見たことだそうです。「神聖な場所がこれでいいのかなあ」と思い、翌年春に同級生6人と始めました。今では多いときで約60人が参加するようになりました。

2005年に、被爆者たちの講演会や原爆劇をする「広島平和市民の集い」を開いていた被爆者佐藤広枝さんと意気投合。一緒にNPO法人を設立しました。設立後2回目となる今年8月5日の集いの準備に力を入れています。

「平和に興味のない若い人にも来てもらいたい」と内容に工夫をしているそうです。有名人や市民の平和のメッセージをビデオ上映することなどを企画しています。(小6・小坂しおり)



    
 

■ANT(アント)―Hiroshima

昨年のART PARTYで展示した作品を手にとって説明する渡部さん(左)(撮影・中3川本千夏)

「アリ(ant)のような小さな力を結集して、大きな平和実現に取り組む」。NPO法人ANT―Hiroshima(広島市中区、会員107人)は2003年から、約15カ国の児童養護施設で暮らす子どもが描いた絵約300点を毎年中区で展示しています。1枚1000円以上で売り、売上金はその施設に寄付する活動「ART PARTY(アート・パーティー)」です。

市内のNPOなどと協力。絵は海外の提携団体から紹介を受けるなどして集めています。

代表の渡部朋子さんは「昨年モンゴルの児童養護施設が出展してくれた10枚を完売し、会場での寄付金などと合わせて約3万円を贈った。一冬分の石炭代になった」とうれしそうに話します。展示会を訪れる人に視野を広げてもらうことも目的の一つと言います。(高2・多賀谷祥子)



    
 

■ひろしま点灯虫の会

牛乳パックをはがすと、固まったキャンドルが現れた(撮影・中3川本千夏)

NPO法人ひろしま点灯虫の会(広島市西区、会員38人)は、メッセージなどを書き込んだ箱形のろうそく「ピースキャンドル」で、原爆ドームを囲むイベントを毎年8月6日にしています。

「以前の原爆ドームは夜、大きなお墓のように見えました」と事務局長の鈴木俊哉さん。ろうで作った箱の中に、さらにろうそくを立てます。火が箱のメッセージを闇の中に浮かび上がらせます。広島青年会議所のメンバーとしてイベントを始めた1997年から参加者は増え、昨年約2900個でした。1個500円で販売します。

私も牛乳パックを使い、キャンドルを作りました。クレヨンで「平和一番」と書きました。今年の8月6日、原爆ドーム周辺に持って行き、点灯するのが楽しみです。(中3・土田昂太郎)

 

ジュニアライターも参加したHPS国際ボランティアの清掃活動 スタートボタンを押してね

 

■私たちの提案 −みんなで考えた3つを紹介します


私たちの提案
 

なるほどキーワード

  • 民間非営利団体(NPO)と特定非営利活動法人(NPO法人)

    NPOは福祉(福祉)、国際協力などさまざまな社会活動をする営利(えいり)を目的としない民間組織。中でも1998年に施行(せこう)された特定非営利活動促進(そくしん)法(NPO法)により、法人格(かく)を取得するとNPO法人となる。法人格があれば団体名で銀行口座(こうざ)の開設などができるようになる。

  • 非政府組織(NGO)

    営利(えいり)を目的としない民間団体の中でも、国際的な活動を行う団体。