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8・6を伝える

国本隆史さん「ヒバクシャとボクの旅」

book 被爆当時の記憶がない「若い被爆者」に焦点を当て、継承活動に悩みながらも行動する姿を伝える。ベトナムでの枯れ葉剤の被害者、ギリシャでのナチスによる虐殺により村でただ一人生き残った男性など、旅先での出会いを重ね、若い被爆者たちは活動を始める。

被爆者の思い共感できる/決して過去の話ではない



国本隆史

くにもと・たかし

1980年、東京都生まれ。一橋大社会学部を卒業後、民間企業で働きながらドキュメンタリーの制作を始める。2002年ワールドカップ(W杯)時のサポーターの熱狂を撮った「青きテハミング」が初作品。現在はNPO法人職員として神戸市のコミュニティーFM放送局で働く。

被爆当時乳幼児だったため記憶がほとんどない「若い被爆者」に焦点を当てたドキュメンタリー映画「ヒバクシャとボクの旅」を監督しました。被爆者を乗せ2008年9月から4カ月間で世界一周した非政府組織(NGO)「ピースボート」の航海の記録です。

冒頭、被爆体験を語る被爆者の映像が続いた後、「被爆証言を聞くと、ボクはどうしらいいのか分からなくなる」とつぶやくナレーションが印象的です。

被爆体験の継承という問題について考え行動しようとする被爆者を取り上げながら、撮影している自身も悩んでいるのが伝わってきます。若い被爆者をテーマにしたいと思いながら、特に方向性が定まらないまま乗船したそうです。転機はベトナムで枯れ葉剤の被害者に会ってからでした。

「どうしたらいいか」と悩んでいた被爆者ですが、「他の戦争被害者と会うことで、同じ目線に立った」と感じたのです。そして、自分にできることはないかと模索を始めた若い被爆者をカメラは追います。

記憶がないので経験は語れない。でも知識なら伝えられると船内での証言に取り組みだした被爆者。「体験を100パーセント継承することは無理だけど思いは共感できるはず」と国本さんはと言います。「共感することで今も核兵器が世界にある現状や原子力発電などにも関心が広がってくる。決して過去のことではないと気付くようになる」

東京生まれの国本さんは高校時代に修学旅行で広島を訪れ、被爆体験を聞きました。具体的な内容は覚えていないそうです。大学時代に長崎の被爆者の生活史を聞き取りし、その後も「何かをしなければ」と胸に引っかかり続けていました。そんな時にピースボートの旅を映像で記録する若者を募集している話を聞き、乗船を決めました。

被爆の記憶を語り継ぐ上での課題にも向き合っています。「どの人の話も結局、同じ内容」「悲しまなきゃいけないという気分にさせられる」。被爆体験を聞いた若者たちの厳しい感想も入っています。

原子爆弾について「ハエを殺すもの」と笑いながら答える海外の若者もいました。「ヒロシマ、ナガサキという地名は知られている。けれど、そこで何が起きたかは知られていない」。被爆体験を身近に聞くことができる日本人はラッキーだと言います。

約250時間分の映像を収録し、帰国後約1年かけて完成させました。「善悪を示すのではなく、自分が気になった事象を知っていくプロセスを描くのがドキュメンタリー。見る人それぞれにメッセージを感じてもらえれば」と話します。(村島健輔)


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私はこの監督の考えに共感しました。「被爆証言を聞くと、ボクはどうしたらいいのか分からなくなる」。このつぶやきをきいてその通りだと思いました。身震いがしました。

「ヒバクシャがいなくなったら誰が証言するのでしょうか。自分には何ができるのでしょう。でも、僕たちが何かしなくてはいけないのです」。そんな問いを見る者に投げかけてきます。

作中に出てくる世界の若者たちのあまりの無知に少しいら立ちました。もっと多くの人に「原爆」を伝えていく必要を感じました。


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