今回の課題と次回の回答編で、みんなの平和教室は最後となります。昨年の4月にこの連載を始めたときから、最後のテーマを何にするのかは決めていました。最終回は、「軍隊と平和」について考えたいと思います。
1977年、群馬県生まれ。中央大卒、英ブラッドフォード大学院修了(紛争解決学)。紛争後に兵士から武器を回収し社会復帰させることや平和構築が専門。NGO職員(ルワンダ)、国連ボランティア(シエラレオネ)、日本大使館書記官(アフガニスタン)、国連職員(コートジボワール)などとして紛争地での支援活動に携わってきた。2007年4月から日本紛争予防センター事務局長。
みなさんは、「軍隊」と聞くとどのようなイメージを持つでしょうか。まず国のしくみとして存在する軍隊を思い浮かべるかもしれません。米国や英国のような先進国で、大統領や首相など国のリーダーの指揮のもと軍事的な役割を果たしている軍隊もあれば、ミャンマーの軍事政権のように軍隊が政権を担当している国もあります。日本の自衛隊は、国を守るためのものなので軍隊ではないとされていますが、その役割や規模から国際的には事実上の軍隊にあたるとされることが多いです。
複数の国の軍隊が、ある目的で一緒に行動することもあります。国連平和維持活動(PKO)のように、国際社会が地域紛争をおさめたり再び争いが起こらないように各国から部隊を集めて展開する場合もあります。国連以外に、アフリカ連合(AU)に加盟する国々によるスーダンのダルフールやソマリアへの部隊派遣、北大西洋条約機構(NATO)によるボスニアへの部隊派遣など、それぞれの地域のイニシアチブにより平和維持部隊が組織されることもあれば、地域をこえた多国籍軍もあります。
そのほか、武装した反政府勢力、ゲリラ、民兵、ビジネスとして戦争に参加するために雇われる傭兵など、必ずしも正式な国のしくみではない軍隊もあります。
軍隊がなくても、その前に問題を解決すればよいと思う人もいるかもしれません。一方、話し合いで解決できなかった場合、軍事的な方法でしか解決できない、または軍隊で守らないと被害を食い止められないと考えて軍隊を置いているのが世界の現状でもあります。隣国と地続きだったり国内で争いの火種がある場合、日本で私たちが考えるよりも人々は身の危険を強く感じているかもしれません。
武装解除されるアフガニスタンの旧国軍(2003年、筆者撮影) |
軍隊には戦争を起こす側にいるものもあれば、逆に紛争を終わらせ安全を守る役割を持っているものもあるように見えます。難しいのは、必ずしもいつも国家の軍隊が正しいわけではなく、反政府勢力が間違っているとも言えないことです。また、テロ組織などは、軍隊と民間の線引きも難しくなっているという別の問題もあります。
9・11米中枢同時テロ以降、イラクやアフガニスタンを空爆した米国を中心とする連合軍は、必ずしも国際社会の中で平和目的の総意なく組織されました。石油利権が目的だったのではないかとの批判もあります。15年前のルワンダで、政府の指揮のもと特定の民族が殺され続けて被害者が80万人以上に達する中、政府と戦い、その事態を収束させたのは反政府勢力でした。
日本でも、自衛隊はなくてよいとの意見、北朝鮮などへの脅威から米国とさらに軍事的な協力をすべきとの意見、または米国に頼らず自衛隊を強化すべきだと主張する人もいて、意見が分かれています。そんな中、憲法9条の解釈も変わり、自衛隊が外国でも活動する姿が報道されるようになっています。
移りゆく世界の国々の中で軍隊はどんな役割をはたすか、日本はどうすべきかも含め、今回の課題を考えてください。
今回の課題 |
軍隊は平和をつくるために必要だと思いますか。必要だとしたら、どんな場合でしょうか。必要ではないとしたらなぜでしょうか。 ※締め切りは7月19日(必着)です。
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