前回スーダンからお届けして以来、ほぼ2カ月ぶりの平和教室になりました。その間に、海外で発生した新型インフルエンザの日本への上陸についても連日報道されるようになっていますね。
1977年、群馬県生まれ。中央大卒、英ブラッドフォード大学院修了(紛争解決学)。紛争後に兵士から武器を回収し社会復帰させることや平和構築が専門。NGO職員(ルワンダ)、国連ボランティア(シエラレオネ)、日本大使館書記官(アフガニスタン)、国連職員(コートジボワール)などとして紛争地での支援活動に携わってきた。2007年4月から日本紛争予防センター事務局長。
そんな中、私は5月初めからまたアフリカに来ています。ソマリアという内戦状態の国でどうしたら安全を確保できるかについて調査するためです。ソマリアは、南部地域の治安が悪化している一方、周辺の海で海賊が大型船を襲うため、アメリカや日本を含む各国が護衛艦を送っています。
新型インフルエンザとソマリアの海賊問題には共通点があります。それは、「どのように国境を管理するか」が重要な対策のひとつだという点です。新型インフルエンザの場合、海外からの感染が国内に入り込まないよう空港などで確認したり、感染の恐れのある人に対応することがまず必要です。一方、海賊が問題を起こしている場合、その海域を領土にもつ国が国境内を管理して、犯罪や暴力、他国からの勝手な侵入が起こらないように安全を確保する必要があります。
ということで今回は、日本でも紛争地でも変わらず問題となることが多い「国境を管理すること」について考えてみたいと思います。
そもそも「国境」は土地や海に境界線を引いて国のテリトリー(領域)を決めるものですが、この国境を決めること自体が紛争の原因になっている例はとても多いです。
たとえばスーダンのように石油などの天然資源が出る土地をめぐって争いが起こることもあれば、砂漠地域では貴重な水源を、またイスラエル・パレスチナ問題のようにそれぞれの民族や宗教を基盤に自分たちの土地を求めて問題が生じる例もあります。
ソマリアの沿岸で海賊の取り締まりをする海岸警備隊(筆者提供、2009年撮影) |
周りを海に囲まれた日本でも、周辺国との領土問題が報道されることがありますね。
国同士が合意して国境線を決めた場合でも、国境周辺の住民や特定の民族がそれに納得せず、独立運動や小競り合いが起こる場合もあります。政府が特定の民族だけに良い対応をしてその他の民族や住民を差別したため、自分たちの民族の権利を守るために独立を求める人々もいます。
国境問題では、第一に土地や海などの境界線について政治的に合意することが必要です。その次に大切なことが、国境をその国がきちんと管理して、違法なモノや人が勝手に行き来することを防ぐことです。
国境が決まっている場合でも、その領土を管理する政府の力が弱いと、ソマリアのように犯罪者集団や武装集団を取り締まれず、野放しになってしまうこともあります。紛争を経験する国の多くは、国境をきちんとコントロールできないため、紛争のときに道具となるものや、犯罪の原因となるものが簡単に国内に入ってきてしまうことが多いのです。こう考えると、国境で管理しなければいけないのは、人だけでなくモノであることもあるようですね。
日本への持ち込みや持ち出しが禁止されているモノは何か、出入国が制限される人はどんな人かを参考に、国境がきちんと管理されていない紛争地や、陸続きで国境を越えやすい国の状況を想像して、今回の課題を考えてみてください。
今回の課題 |
紛争や犯罪が起こらないよう、国境を越えた持ち込みを制限したり管理する必要があるのはどんなもの、どんな人でしょうか。また、それらが国内外に自由に入ったり出たりすることがなぜ問題だと思いますか。 ※締め切りは6月7日(必着)です。
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