前回は紛争が終わった後、兵士や戦闘員にどのように武器を手放させ、一般市民として生活できるようどんな支援をするかについて考えました。加害者として位置づけられる兵士や戦闘員の中には、そうならざるを得なかったさまざまな理由があり、配慮した支援が必要になることもあると説明しました。今回は逆に、被害者の視点から考えてみましょう。
1977年、群馬県生まれ。中央大卒、英ブラッドフォード大学院修了(紛争解決学)。紛争後に兵士から武器を回収し社会復帰させることや平和構築が専門。NGO職員(ルワンダ)、国連ボランティア(シエラレオネ)、日本大使館書記官(アフガニスタン)、国連職員(コートジボワール)などとして紛争地での支援活動に携わってきた。2007年4月から日本紛争予防センター事務局長。
そもそも「紛争による被害者」って、誰のことを指すのでしょうか。一番に思い浮かぶのは、紛争に巻き込まれて命を落とした人ですね。それから家族や友人を亡くした人、ケガをした人、住む家を壊されたり危険だから他の土地に引っ越さなければならなくなったりした人、財産を盗まれた人、誘拐された人…。
そのほか、どの紛争地でもよく見受けられるのですが、暴力や争いを目撃して心に傷を負った人、商売が続けられなくなったり就職できなくなったりした人、学校が壊されて何年も勉強ができなくなった子どもも被害者と呼べるかもしれません。つまり広い意味では、紛争が起こった社会に住むほぼすべての人が被害者だと言えます。
では、紛争が終結して、加害者である元兵士や元戦闘員たちが被害者の住む村や町に戻ってきたとき、いったいどうなるのでしょうか。
前回見たように、加害者が再び争いに走らないよう武器を差し出すのと引き換えに、紛争中に殺人や暴力を行った人を無罪にしたり、仕事が見つけられるように職業訓練をしたりしています。ルワンダのように隣人同士が命を奪い合う状況になった場合、自分の家族を殺した相手が戻ってきて、裁かれることもなく普通に近所で生活しているという例も少なくありません。また紛争で勉強する機会がなくて就職が難しくなっているのに、元兵士はさまざまな支援を受けているのを目の当たりにすることもあるでしょう。
ルワンダの首都キガリの郊外にある虐殺被害者の集団墓地(2000年、筆者撮影) |
そのような状況の下、政府や国際社会は「争いは終わった、平和は大切」と言います。あなたが被害者だったら、どう感じるでしょうか。
被害者の中には、耐えられずに仕返しをする人もいます。しかし多くは、悲しみや不公平だという気持ちを抱えたまま、我慢して生活するしかないのが現状です。そのように被害を受けた人が紛争後も苦しい生活を続け、不満を抱えたまま耐えるしか選択肢がない社会というのは、どこかで歯車がおかしくなり、また争いの火種を抱えてしまうこともあります。
紛争地に平和を作るためには「和解」が必要だとも言われます。現実には和解は、被害者の我慢や苦しみの上に成り立つことになります。そして当然、実現するのが難しいことがほとんどなのです。そんな中、少しでも被害者の気持ちを楽にすることはできるのでしょうか。
今回は、皆さんの日常生活にも起こりうる状況で、紛争地の被害者の置かれた立場に思いをはせ、和解には何が必要なのか考えてみてください。
今回の課題 |
あなたの宝物を友達が取り、ケンカになりました。「もう返さない。でも仲直りしよう」と言ってきました。周りの人は仲直りはいいことだと言います。仲直りしますか、しませんか。するには何が必要ですか。 ※締め切りは12月21日(必着)です。
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