NPT会議、NGOと連携に手ごたえ

'00/5/6 ロシア外務省のカブラノフ局長(中央)に臨界前核実験の中止などを要請する広島市の森元助役(左)と長崎市の伊藤市長(2日午前11時、日本時間3日午前零時、国連本部)

 【ニューヨーク4日江種則貴】米ニューヨークで開会中の核拡散 防止条約(NPT)再検討会議を舞台にした広島、長崎市による 「被爆地ロビー外交」が四日(日本時間五日)で終わった。核保有 国との折衝では「核兵器廃絶への壁は厚い」と思い知らされた半 面、カナダでの原爆展が実現化するなど、各地の非政府組織(NG O)とのネットワーク形成では手ごたえも生まれている。

 ロビー外交を担ったのは、広島市の秋葉忠利市長の代理で出席し た森元弘志助役と、長崎市の伊藤一長市長。四月三十日にニューヨ ーク入りし、一日から四日間、NPT再検討会議の会場である国連 本部に通って国連や各国の代表と面会。世界平和連帯都市市長会議 の加盟都市に呼びかけて今回の会議のために作成した、核兵器廃絶 を願うメッセージ集四百冊も持ち込んだ。

 冷たい反応を浴びせられたのは米ロの政府代表との面会だった。 両市が先進国首脳会議(サミット)に合わせて七月に沖縄で開く原 爆展への首脳の見学を持ちかけても「知らせてくれてありがとう」 (米ウィーン代表部のリッチ大使)、「サンキュー」(ロシアのカ ブラノフ外務省安全保障軍縮局長)と素っ気ない返事。臨界前核実 験の中止を迫っても「核兵器の安全性を保つために必要」と両国と も正当性の主張に終始した。

 「廃絶への道は遠いのか」とこぼす森元助役は、非公開の委員会 の終了を見計らって会場に駆けつけ、秋葉市長のメッセージ入りの ビラを各国代表に配ったりもした。政府筋からの反応は薄かった が、カナダのNGOから「カナダ各地で原爆展をやりたい」との申 し出があった。「粘り強く訴え、行動する意義を実感した」と森元 助役は話す。

 一方、今回の会議参加の最大の舞台である三日の演説で、核兵器 全面禁止条約の実現を訴えた伊藤市長は「熱意のこもった視線を感 じた」と顔を上気させた。長崎市は今年十一月、世界のNGOを集 めて「核兵器廃絶地球市民集会」を開く。その打ち合わせにも余念 のない伊藤市長は「NGOは増えることはあっても減ることはない パートナー。協力関係をますます強めていきたい」とロビー外交の 成果を総括した。

【写真説明】ロシア外務省のカブラノフ局長(中央)に臨界前核実験の中止などを要請する広島市の森元助役(左)と長崎市の伊藤市長(2日午前11時、日本時間3日午前零時、国連本部)


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