核兵器廃絶に関するキャンベラ委員会報告書(96年) |
一九九五年十一月、オーストラリア政府が主催し、十二カ国十七 人からなる独立委員会を設置。翌年八月に核兵器廃絶に向けての具 体的なステップと、その間の平和維持の問題について提言をまとめ た。核廃絶に向けた具体的な方策について、国がイニシアチブを取 った初のケースである。
委員には物理学者でパグウォッシュ会議議長のジョセフ・ロート ブラット氏(英国)、元米国防長官のロバート・マクナマラ氏、日 本からは元軍縮大使の今井隆吉氏が加わった。
報告書はまず、米ソ冷戦終結が核破壊の危険を取り除いておらず 「ある面で事故や判断ミスによる核兵器使用の可能性が高まってい る」と指摘。核兵器所有の目的が、他国による核兵器使用の抑止で あるとしながら、そのことが逆に「核兵器の存続につながってい る」としている。
また、限られた国の核兵器所有は「差別的で、不安定であり、こ うした状態は永続しない」と強調。国際社会が直面する最も緊急の 課題として核拡散問題を挙げ、テロリストによる核兵器や核兵器物 質の獲得にも強い懸念を示す。
核保有五カ国が緊急にとるべきステップとして(1)核戦力の警戒態 勢の解除(2)ミサイルなどの運搬手段からの核弾頭の取り外し(3)非戦 略核兵器の配備の中止(4)核実験の中止(5)米ロ間のさらなる核兵器の 削減交渉開始(6)核保有国間の先制攻撃の相互中止と非核保有国への 核不使用に関する合意達成―を挙げる。
次の強化策としては、核拡散防止のための行動、非核世界構築に 向けての高度な査察システムの開発、兵器用核分裂性物質の生産中止 ―の三点を掲げる。
核兵器廃絶のためのタイムテーブルは設定せず、「可能な限り早
い時期」の達成を求めている。九六年の国連総会でオーストラリア
政府から同報告書が公式に提示された。