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「東京フォーラムの勧告と新ガイドライン(日米防衛協力の新指
針)の姿勢のどちらを信じればいいのか」―被爆五十四周年の「原
爆の日」のきのう、広島市を訪れた小渕恵三首相を囲んで開かれた
「被爆者代表から要望を聞く会」で、こんな疑問が投げ掛けられ
た。
政府が呼び掛けた東京フォーラムは、米ロの核削減や朝鮮半島の
非核化などを提起。一方で日本の周辺事態に備えるための日米安保
体制を強めるガイドライン関連三法は、軍拡競争につながり戦争放
棄を定めた平和憲法にも触れる恐れがありはしないか―政府の非
核、軍縮の姿勢のあいまいさを被爆者の素朴な不安が突いた感じ
だ。
小渕首相は平和記念式典のあいさつで国是である非核三原則の堅
持と核軍縮の努力を表明したが、被爆者らが強く求めた三原則の
「法制化」には、今回も触れずじまいだった。
秋葉忠利市長が式典で発した就任後初の平和宣言は「被爆者の足
跡」に大半をさいた。「過ちは繰り返さない」原爆慰霊碑の誓いと
憲法の精神の「具現化」に立ち返るためだ。戦後世代が七三%に増
え被爆体験の風化が心配されるだけに、核兵器を「絶対悪」と位置
づけた取り組みを振り返り、核兵器廃絶の「強い意志」を若者らに
アピールする狙いは理解できる。
「憲法の前文にのっとって各国政府を説得し、世界的な核兵器廃
絶の意志を形成」するよう政府に求めたのも今年の特徴だ。背景に
はハーグの世界市民平和会議で、憲法の理念の採用を各国政府に求
める決議が採択されたことが挙げられる。平和憲法の世界化への働
きかけは歓迎したい。
これまでの平和宣言は、その年のヒロシマを取り巻く情勢に触
れ、その課題を掲げてきた。しかし今回は情勢分析が省かれ、時代
を映す宣言の意味が薄れたような気がする。さらに市民が「強い意
志」を踏まえて何をすべきかの具体的な目標も示してほしかった。
秋葉市長は小渕首相に@非核三原則の厳守と非核武装の法制化な
ど核兵器廃絶の推進Aアジア・太平洋地域の信頼醸成の場の広島へ
の設置Bガイドライン関連法を発動しない外交努力―などを要請し
た。しかし、わずか二十分程度の場である。小渕首相が「いずれも
重要な問題」と述べたにとどまったのは残念だ。せっかくの被爆地
訪問。平和問題で、もっとじっくり対話をする日程が組めないか。
さらに首相は被爆者の要望を聞く場でも、核搭載艦の寄港を政府
が過去に認めていたとの疑惑について「調べさせたが、そんな事実
はない」と説明。非核三原則は「破られないよう努力する」との答
えから出ず、被爆者らの疑念はぬぐえなかった。非核の姿勢を貫
き、世界への訴えに説得力を持たせるには「核の傘」に頼る安全保
障政策の見直しも必要だろう。その矛盾を解決する取り組みが課題
だ。
「恒久平和を広島から実現する」広島平和記念都市建設法が制定
されて五十年の節目でもある。広島平和研究所や世界平和連帯都市
市長会議の機能を強め、非核の二十一世紀を目指すプラン作りを急
ぎたい。
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