原爆資料館が収蔵資料の実態調査始める
'99/8/6
被爆遺品にちなんだ人間ドラマを掘り起こそうと、広島市中区の 原爆資料館(畑口実館長)は近く、収蔵資料の実態調査を始める。 被爆から五十四年が経過して困難も予想されるが、可能な限り遺品 にまつわる被爆状況などの情報を集め、深みのある展示に生かす。
同館の収蔵資料は、家庭用品や台所用品、衣類など約一万二千 点。調査は、元安川の被爆かわらを除く約八千点の寄贈者約八百人 が対象となる。九月に調査票を発送し、資料の持ち主の名前や被爆 の状況、当時の年齢、職業のほか、寄贈者が亡くなっていないか― などを確認する。必要に応じて直接聞き取りも行い、約二カ月かけ て整理する。
収蔵資料のうち、常設展示しているのは約四百点どまり。調査担 当の学芸員、下村真理さん(27)は「収蔵庫に保管している資料につ いても背景が分かれば、展示できる。寄贈者や関係者が亡くなって いるケースもあり、急がなければ」という。
被爆資料が寄贈される際、資料館は二年前から被爆状況なども詳 しく記録しているが、それまでは簡単な寄贈申込書しかなかった。 一部の貴重な資料については担当職員がメモなどに被爆状況を記録 していたが、半数以上は詳しい情報が残っていない。
資料館は一九九七年、資料を分類整理した写真付きの検索台帳(資料 カード)を整備したが、個々の情報が十分でないことが分かった。
調査結果は、展示資料の入れ替えの際の説明文に反映させ、今秋 の稼働を目指す一般向け写真データベースにも入力する。来年度以 降は、寄贈者や持ち主のビデオ収録も検討している。
畑口館長は「被爆した三輪車や弁当箱のように、他の資料にもそ れぞれ背景やドラマがあるはず。それを掘り起こして展示に生かせ ば、資料が訴える力も増すだろう」と話している。
【写真説明】収蔵資料の布製かばんをチェックする学芸員の下村さん(原爆資料館)