■平和市長会議 再認識呼び掛け
国連の主要機関の一つである国際司法裁判所(ICJ)が、「核兵器の使用と威嚇は一般的に国際法に違反する」との勧告的意見を出して、八日で十年になる。法的拘束力はないものの、核兵器について下された初めての国際的な司法判断が、その後の国際社会に与えた影響は大きい。(7面に特集)
勧告的意見は「核兵器の使用と威嚇は、国際法や人道に関する諸原則、法規に一般的に反する」と指摘する一方、国家存亡にかかわる自衛の場合には、「違法か合法か結論は出せない」と明確な判断は示さなかった。踏み込んだ結論を期待していた被爆地広島では当時、不満も強かった。
ただ、ICJは、核軍縮を進める必要性も強調した。核拡散防止条約(NPT)の第六条で、核兵器保有国に義務付けている「核軍縮への誠実な交渉」に触れ、結果に達する義務も含むとの解釈を示し、「成果」を求めている。
核軍縮への努力を迫る内容は一定の成果を挙げた。勧告的意見が出された一九九六年の九月には包括的核実験禁止条約(CTBT)への署名が始まった。二〇〇〇年のNPT再検討会議は、(核兵器保有国も含めて)核兵器廃絶への「明確な約束」で合意に達した。
逆に、インドとパキスタンの核実験や北朝鮮の核兵器製造宣言、イランの核開発問題など核拡散の懸念も現実化した。
広島や長崎など世界千三百八十一都市でつくる平和市長会議は、勧告的意見十年を機に、核保有国をはじめ各国政府や市民に、その意義をあらためて訴え、核軍縮に向けた「誠実な交渉」をするよう呼び掛けるキャンペーンを新たに展開する。
勧告的意見という大きな「成果」を得ながら、進まなかった核軍縮を今後どう進めるのか―。国際社会に突き付けられた問いかけは重い。(宮崎智三)