永田町発 核廃絶 国会決議目指す 広島選出の与野党議員ら協議に着手
20年3月16日
「禁止条約」言及が焦点
被爆75年の節目に政府へ被爆国として核兵器廃絶への一層の努力を求める国会決議を目指し、広島県を地盤とする与野党議員が協議を始めた。過去には被爆60年やオバマ前米大統領が「核なき世界」を訴えた2009年にも決議している。政府・自民党が現段階での批准に後ろ向きな核兵器禁止条約に言及できるかが焦点となりそうだ。(河野揚)
野党の「核兵器のない世界を目指す議員連盟」で事務局長代理を務める国民民主党の森本真治氏(参院広島)が2月下旬、原案をまとめた。自民党の「被爆者救済と核兵器廃絶推進議員連盟」事務局長の平口洋氏(広島2区)が協議に応じ、文言調整を進めている。
原案は米国による広島、長崎への原爆投下75年に加え、核拡散防止条約(NPT)発効50年を迎えると指摘。節目の最重要会議であるNPT再検討会議で日本が主導的な役割を果たすよう求める内容だ。
各党に呼び掛け、それぞれ外交部会などの了承を得て今国会に提出する方針。決議は4月下旬の再検討会議開幕前を目指したが、新型コロナウイルスの世界的大流行で開幕の1年延期が検討されており、提出の時期は慎重に見極める。
核兵器禁止条約を巡り、原案は「核兵器の非人道性に対する国際的な認識の高まりは、17年の条約の採択を導いた」と記す。ただ政府・自民党は米国の核抑止力に固執しており、最終的に盛り込まれるかは不透明。広島市南区の被爆建物「旧陸軍被服支廠(ししょう)」の重要性に言及する意見も出ている。
05年の被爆60年の衆院決議は戦後60年決議と一体だった。戦後50年決議で盛り込まれた「侵略的行為」などの文言が消えたため、野党が反発し調整が難航。15年の被爆70年決議はそれが尾を引き、自民党が戦後70年決議に慎重な姿勢を示したことで実現しなかった。
一方、オバマ氏のプラハ演説を受けた09年には衆参両院で決議した。今回の決議は戦後75年には触れず、実現を目指す。平口氏は「核兵器禁止条約を盛り込むのは難しい。決議自体は与党内で調整すれば可能だ」、森本氏は「野党としては禁止条約にこだわりたいが、与党の協力も得たい。決議で核兵器廃絶への機運を高めたい」と力を込める。
<過去に採択された主な核兵器廃絶に関する国会決議>
①決議名
②主な内容
1971年 11月 ①非核兵器ならびに沖縄米軍基地縮小に関する決議
②政府は核兵器を「持たず、作らず、持ち込まさず」の非核三原則
を順守するとともに、沖縄に核を持ち込ませない措置を取るべきで ある
78年 5月 ①国連軍縮特別総会に関する決議
②核兵器の究極的廃絶などが早急に実現するよう強く訴えること
を政府に要請する
82年 5月 ①第2回国連軍縮特別総会に関する決議
②核兵器の製造、実験、貯蔵、使用の禁止を目指すよう強く訴える
ことを政府に要請する
2005年 8月 ①国連創設及びわが国の終戦・被爆60周年に当たり、更なる国際
平和の構築への貢献を誓約する決議
②政府は、核兵器廃絶など持続可能な人類共生を切り開くための最
大限の努力をすべきである
09年 6月 ①核兵器廃絶に向けた取り組みの強化を求める決議
②我が国は唯一の被爆国として、世界の核兵器廃絶に向けて先頭に
立って行動する責務がある
(2020年3月15日朝刊掲載)