埋もれる原爆の記憶 表現 被爆3世原田さん 埼玉で作品展
19年3月1日
「実態 想像を」思い込める
山口市出身の美術家原田裕規さん(29)=東京都=の作品展が、原爆の図丸木美術館(埼玉県東松山市)で開かれている。メインの立体作品「写真の壁」は、広島で被爆した祖父を持つ被爆3世として、記憶を継承する難しさを表現した。
縦5・5メートル、横1・8メートルの板の表面を約5千枚の写真で覆った。いずれも廃品回収業者から引き取った写真で、日常生活を切り取った人物写真が多い。「人々に捨てられ、忘れられていく写真の中の出来事は、継承されずに埋もれていく被爆者の記憶に重なる」と話す。
自身も、幼い頃に亡くした祖父の被爆体験を詳しくは知らない。小中高校時代は広島市内で過ごし、平和教育も受けたが、「原爆は『向き合うべきだ』と思いつつも、難し過ぎて避けてきた題材だった」。
2011年3月の福島第1原発事故が、新たな創作のきっかけになった。原爆を描いた先人に学ぼうと、丸木美術館に足を運び、自分でも表現しようと試行錯誤した。
「失敗を重ねたが、被爆者の数だけ体験は異なり、被爆の実態を真に『分かる』ことはできないと思い至った」と語り、「そのことに気付いた上で、想像しようと努めることが必要」とのメッセージを込めたという。
ほかに小品4点を展示。24日まで、月曜休館。(田中美千子)
(2019年3月1日朝刊掲載)