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社説・コラム

『記者縦横』 基地問題 住民本位が鍵

■岩国総局 松本恭治

 輸送機オスプレイの運用部隊が米軍岩国基地(岩国市)で訓練を始めた―。昨年12月、基地ホームページに掲載された記事を読んで驚いた。沖縄を本拠とするオスプレイが基地を使う理由を、国は「日米共同訓練の機体整備などのため」と説明していたからだ。

 記事は「低空飛行訓練などで(沖縄とは)異なる岩国の環境を活用した」とも伝えた。飛行ルートは不明だ。日米合意違反は確認されておらず、その運用を一概には批判できない。

 問題なのは国の説明とのずれだ。基地の使用理由だけではない。国が日米共同訓練の場所として公表していたのは熊本の演習場だけだった。被災地支援などに貢献しているとはいえ、事故やトラブルの絶えない機体。「訓練場所」と異なるエリアで低空飛行したとすれば、住民不安をあおるのは当然だろう。

 米空母艦載機の岩国移転が本格化する中、日米間の「意思疎通の不足」が顕在化している感がある。移転時期を巡り、国の当初説明と実際の状況に食い違いが目立つのは典型例だ。米側が前倒しを発表したのに、移転直前まで3カ月以上も軌道修正できなかった国の対応には疑問が拭えない。

 米軍の運用は性質上、つまびらかにできない面もあろう。一方で艦載機移転は地域に新たな負担をもたらす。国や地元自治体はもっと積極的に米側へ情報を求め、米側も柔軟に応えてほしい。正確な情報の速やかな公表も欠かせない。住民本位の姿勢こそが、地域の安心安全や米軍への理解につながるはずだ。

(2018年1月19日朝刊掲載)

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