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被爆再現人形 姿消す 広島の原爆資料館改装で来月25日 来館者ら惜しむ声

 原爆資料館(広島市中区)本館に展示されている被爆者の姿を再現した人形が、4月25日を最後に姿を消す。資料館の全面リニューアルに合わせ、展示を犠牲者の遺品や写真といった「実物」資料中心にするため、市が2013年に撤去方針を決めていた。来館者たちから「原爆被害が誰の目にも分かるのに」と、惜しむ声は絶えない。(長久豪佑)

 人形は大人の女性、女学生、男児を模した等身大の3体でプラスチック製。被爆証言などを基に、焼けただれた皮膚でがれきの中をさまよう姿を再現している。開館18年後の1973年に置かれた先代のろう人形に代わり、91年から本館に入ってすぐのコーナーで展示されてきた。

 春の旅行シーズンでごった返す館内。「もうすぐ見られなくなります」というガイドの説明を聞き、顔をしかめて見入る姿が目立つ。安佐南区の派遣社員藤川明秀さん(73)は「核兵器被害の悲惨さが一目で伝わる。残してほしい」。東京都世田谷区の会社員西尾完太さん(29)は「実物重視と言うなら科学的に検証し、より実態に近い人形を作り直してはどうか」と提案する。

 本館は耐震工事のため、4月26日に改装オープンする東館と入れ替わる形で、同日から閉鎖される。人形はその後に撤去、保管され、18年7月に全面オープンした後も常設展示されない。

 市の方針が明らかになって以降、インターネット上で反対の署名を集めた佐伯区の会社員勝部晶博さん(46)は「人形が与える強いインパクトが間違いだとは思わない。リニューアル後の展示が来館者に原爆の悲惨さを訴え掛ける展示になっているか、撤去の妥当性も含めてしっかり検証すべきだ」と話す。

 資料館は「人形は収蔵庫で保管し、今後は特別展などで展示する可能性はある」とし、理解を求める。

原爆資料館の展示見直し
 資料館本館の耐震改修に合わせ、広島市は展示を全面更新。有識者の意見を踏まえ、実物資料を重視する。計画では、所蔵する被爆資料約2万点のうち約200点を効果的に配置。焼け焦げたシャツや自転車、変形した鉄扉などの資料と、やけどに苦しむ被爆者の写真を並べるといった「集合展示」の手法を取り入れるという。本館の改装オープンは来年7月予定。

(2017年3月31日朝刊掲載)

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