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未来への伝言 95歳の筆 富山妙子さん特別展示 埼玉・原爆の図丸木美術館

 アジアとの関係や戦争が残す傷痕に向き合い、創作を続ける画家富山妙子さん(95)=東京都世田谷区。新作を含む油彩画やコラージュ作品を集めた特別展示が1月14日まで、埼玉県東松山市の原爆の図丸木美術館で開かれている。

 「富山妙子 終わりの始まり 始まりの終わり」展。出品は30点と小規模ながら、「芸術とは何か、何のために描くのか」と自問を重ねてきた画家の、未来への伝言のような空間になっている。

 神戸市に生まれ、少女時代を旧満州(中国東北部)で送った。本展のために制作した「始まりの風景」は、赤く染まる広大な大地。「私にとって旧満州の風景は、戦争の始まりであり、私の人生の始まり」と話す。

 その行き着いた先にある現在。同じく新作の「終わりの風景 崩れゆくもの」=写真=も赤が鮮烈だが、奥には深い闇が広がっていて、暗く重苦しい。経済大国へ突き進んだ社会の末路を表したといい、遠景のきのこ雲や崩壊した建物が、中央に配した異様な塊への想像をかき立てる。

 福島第1原発後に描いた「フクシマ―春、セシウム137」なども出展。富山さんは「ひとたび戦争をすると、苦しみは世代や世紀を超えても癒えない。原発事故も同じ」と語った。

 12月29日~1月3日、10日は休館。(森田裕美)

(2016年12月28日朝刊掲載)

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