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社説・コラム

『想』 久保田涼子 次世代が何を継ぐか

 18歳の時、広島から上京しました。違う土地で初めて迎えた8月6日は、前日と同じ日常が続いていました。広島にとって特別な日が、他の地域ではそうではないと気づきました。

 戦後70年の2015年、クリエーターやアーティストの仲間と企画展を立ち上げました。タイトルは、第三世代が考えるヒロシマ「 」継ぐ展。戦争を体験していない世代が、ヒロシマの歴史や記憶、思いを継いでいく方法を考える参加型の企画です。

 「 」には、参加した人たちが自ら意志を持って過去の出来事を学び、聞き、考えて、自分なりの答えを入れてほしい―という思いを込めています。毎年夏に関東以北で開催し、1年目は東京都、2年目の今年は横浜市で開きました。

 始めたきっかけは、13年に広島弁指導で関わった「父と暮せば」という朗読劇でした。広島出身ではない女優さんが、真剣にヒロシマと向き合い観客に伝える姿を見て、自分にもできることはないか、考えました。

 それまで、身近な被爆者である祖母の体験談すら聞いたことがありませんでした。戦争・平和というテーマと向き合ったことのない私が、ヒロシマの何を伝えることができるのか、大変悩みました。答えを探すため、広島と長崎の原爆資料館や被爆建物を巡りました。本を読み、被爆者の話に耳を傾けました。自発的に動いていくと新しい発見と気づきが生まれ、その軌跡がそのまま企画展のコンセプトになりました。

 今年は、地元の助成や応援もあり、6日間で1260人の来場がありました。運営には広島大、広島修道大、神奈川大、関東学院大など広島と首都圏の大学生をはじめ、15歳から60代までの中国、米国人を含む約90人が携わりました。

 継ぐ展がきっかけで、広島市の被爆体験伝承者プログラムに応募を決めた大学生もいます。次世代が過去の出来事をどのように継ぎ、つないでいくか。企画者である私たちも、回を重ねながら考えていきたいと思います。(ウェブデザイナー)

(2016年11月11日セレクト掲載)

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