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山口県・中電やりとり文書要旨 上関埋め立て免許延長許可

 中国電力が上関原発(山口県上関町)建設計画で申請した海を埋め立てる免許の延長を巡り、中国新聞の情報公開請求で山口県が12日開示した、県と中電がやりとりした文書の要旨は次の通り。

  【1度目の補足説明】 (県=2012年10月23日付、中電=12年11月13日付)

 県 福島第1原発事故後、国のエネルギー政策における上関原発計画の位置付けを踏まえ、現在も、かつ今後も、原発用地としての土地需要があることが明確だと説明されたい。

 中電 長期的な電力の安定供給確保、地球温暖化問題への対応、経済性の観点から、当社にとって上関原発は重要な電源で、用地を確保するための埋め立ては必要だ。ただし政府の戦略では、原発の「新設・増設は行わない」との原則が示されており、政府の検討を注視する必要がある。

 県 上関原発の着工、営業運転開始の時期の見通しを説明すること。

 中電 現時点でお示しできる状況にない。

 県 国が最新の知見に基づく安全基準を未策定であるにもかかわらず、上関原発の安全対策を津波対策のみとした根拠は。

 中電 今後、国により策定される新たな安全基準などに基づき、必要な対策を講じる。今回は福島第1原発事故を踏まえ、未曽有の津波に対する安全・安心のための対策を自主的に実施することとした。

 県 (地盤を高くするなどの)事業内容の変更に伴う環境影響予測と評価が説明されていない。

 中電 今回の変更は発電所の主要建物用地の地盤高の引き上げなどで、埋め立て区域などは変更しない。環境影響評価の変更項目は「景観」のみで、その他の項目に変更はない。景観は、環境保全措置を講じることで周辺の自然景観との調和が図られるため、評価は変わらないと考える。

  【2度目の補足説明】 (県=12年11月22日付、中電=12年12月21日付)

 県 国のエネルギー政策を所管する経済産業相は、上関原発は原発の新増設をしないという原則の適用対象だと発言している。

 中電 発言についての報道は承知している。しかし国からは指導などがなく、原則の具体的な適用は現在も検討が進められていると考える。

 県 津波対策以外の地震に対する安全対策を自主的に実施しない理由は。

 中電 今回の対策は本件埋め立てに関して取り入れた安全対策だ。発電所本体では今後、国が策定する新たな安全基準を設計に適切に反映し、さらなる安全性向上につながる対策を積極的に取り入れたい。

 県 変更後の景観が「周辺の自然景観との調和が図られる」との根拠は。

 中電 図に示す通り航路上からの景観予測はほとんど変わらない。改変する区域は適切に緑化し、建物の配置、形状、色彩に配慮する。

  【3度目の補足説明】 (県=13年1月4日付、中電=13年1月25日付)

 県 政府が戦略で示した「原発の新設・増設は行わない」との原則の具体的な適用について、「現在も国で検討が進められている」と考えている理由は。

 中電 (民主党政権だった)12年9月、当時の経産相は「新増設は行わないという原則はしっかり守る。その具体的な適用について一個一個、丁寧にやっていく」と発言したが、国から指導などはなかった。その後、(自民、公明両党への)政権交代で新たに就任した現在の経産相は12年12月に「30年代に原発ゼロという決めつけはしない」と発言した。新政権が前政権のエネルギー政策を見直す意向、との報道もある。

  【4度目の補足説明】 (県=13年1月30日付、中電=13年2月22日付)

 県 免許出願時に添付した埋立必要理由書で説明した国や地方公共団体の計画との整合は。

 中電 上関原発は05年2月に国の重要電源開発地点に指定されており、現時点も変更がない。上関町の総合計画も変更がなく、整合性に変わりはない。

  【5度目の補足説明】(県=13年3月19日付、中電=14年4月11日付)

 県 国のエネルギー政策において重要電源開発地点に指定された上関原発の位置付けが何ら変わることなく存続しており、今後変わる見込みもないことを、挙証・説明されたい。

 中電 重要電源開発地点制度の見直しについて「現時点では想定していない」との国の見解を得た。

  【6度目の補足説明】 (県=14年5月14日付、中電=15年5月15日付)

 県 重要電源開発地点に指定された上関原発の位置付けが何ら変わることなく存続しており、今後変わる見込みもないことを挙証・証明すること。

 中電 重要電源開発地点制度の見直しについて「現時点では想定していない」との国の見解を得た。

 県 閣議決定されたエネルギー基本計画では今後の原発新増設が触れられていない。エネルギーミックス構築などの検討の中で上関原発が位置付けられることを補足説明すること。

 中電 基本計画は原子力を「重要なベースロード電源」と位置付けた。温室効果ガス削減を継続的に進めるには、将来においても原子力を一定比率維持していく必要がある。経年化した原発に代わる安全性に優れた新規原発開発を計画的に進めていくことが必要で、島根原発1号機の廃止を考慮すると、上関原発の開発はこれまで以上に重要だ。

  【7度目の補足説明】 (県=15年6月22日付、中電=16年6月22日付)

 県 重要電源開発地点に指定された上関原発の位置付けが何ら変わることなく存続しており、今後も変わる見込みもないことを挙証・証明すること。

 中電 上関原発の重要電源開発地点指定について「引き続き有効であり、事情の変化がない限り、解除することは考えていない」との国の見解を得た。

(2016年9月13日朝刊掲載)

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