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「勝訴より強い」 歓迎の声 上関原発工事 損害賠償訴訟が和解

 「勝利的な和解だ」―。上関原発(上関町)建設に伴う埋め立ての準備工事を妨害されたとして、中国電力が同町祝島の住民たち4人に損害賠償を求めた山口地裁での訴訟の和解が成立した30日、約3900万円の請求の全額放棄に、4人の支援者からは歓迎の声が上がった。原告の中電側は、妨害行為の禁止を確認した内容に手応えを強調した。

 地裁前には祝島や広島市など県内外から、上関原発に反対する約150人が集結。協議を終えた4人と弁護団を拍手と歓声で迎えた。被告の一人、上関原発を建てさせない祝島島民の会の清水敏保代表(61)は声を詰まらせ、「勝訴より強い和解」と力を込めた。

 和解の条件は、原告側は損賠請求を放棄し、被告側は埋め立て工事再開時、妨害行為の禁止などを守る。ただし、被告側は「原発に反対する一切の表現行為を続けられる」(小沢秀造弁護団長)という内容の条項も盛り込まれている。

 一方、原告弁護団の松村和明弁護士は「総合的に検討した」と和解理由を説明。福島第1原発事故直後からの中断が続く埋め立て工事について、「再開できるようになったら、スムーズに進む」との見方を示した。

 6年8カ月に及んだ訴訟。この間に上関原発計画を巡る状況は激変し、見通しは立たない。被告の「応援団長」を務めた米国出身の詩人アーサー・ビナードさん(49)=広島市中区=は「予定地は生態系が豊か。建設の白紙撤回が最終目標だ」と述べた。(井上龍太郎、折口慎一郎)

(2016年8月31日朝刊掲載)

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