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社説・コラム

メル・ダンカン氏 原稿全文  ヒロシマへ:ごめんなさい 

2016年7月6日

メル・ダンカン
Mduncan@nonviolentpeaceforce.org
国際NGO非暴力平和隊・創設者

 私は、ローラー式アイロンの傍に立ち母と話していた時のことを思い出します。母は、服にアイロンをかけながら泣いていました。母は自らが「ブルー」と呼ぶ、今ならたぶん「うつ」と言われる状態でした。彼女は世界の状況を嘆いていました。東西の冷戦は激しさを増しており、母は核戦争を恐れていました。 母は、この世で子供を産むことが本当に正しいことなのかどうか、私に遠慮することなくいろいろと思いを巡らせていました。私は当時10歳でした。私の母、そして世界全体にとって悪い状況で、私は自分に責任があるように感じました。

 私は、自分が小学校に通ったときに行われた、机の下で「隠れて身を守る」という空襲避難訓練を馬鹿にしていたのを思い出します。

 今日、残忍で恐ろしい暴力から、他を思いやる全人的非暴力への変換を図るために我々はここに集まっています、それは被爆者のサーロー節子さんが、「我々の暴力と戦争への執着から離れた、文化的変容そのもの」だと思い描いているものです。しかし、ここ広島で起こったことを、世界は決して忘れてはならず、否定してはなりません。

 私はアメリカ合衆国の国民です。私の国が原子爆弾を製造し、投下しました。 原爆で幾千人もの人々が焼かれ、その後の世代の多くの人々に被害が残りました。何十万人もの民間人が殺されたことに対する正当な根拠というものは決して存在しません。これは、人類全体に対する犯罪です。我々は誰かの命を救うために互いを殺し合うことはしません。

ごめんなさい。

 71年前に私の国が原爆を広島と長崎に投下したことだけではなく、その後自らの核兵器の所有を通じて、世界各国との関係を形作るという私の国のやり方について、私は「ごめんなさい」と言います。多くの場合において、軍事力というものが、国際社会という家族の中で兄弟や姉妹としてふるまう代わりに、弱い者いじめをするという役割を果たしているように我々には感じられます。

 そして、アメリカが現在1兆ドルを費やし、核兵器の近代化を行っていることについても「ごめんなさい」と言いたいです。その費用を支出することにより、世界中の飢える人々、病人、ホームレス、そしてきちんとした教育を受けられない、または機会を持たない子供たちのためのお金が奪われているのです。

 私の国は、新しいSTART(戦略兵器削減条約)やイランとの核兵器合意など、大きな前進のいくつかに関与してきましたが、これらの方策だけでは不十分です。オバマ政権は、冷戦後の他のどの大統領よりも、核保有量の削減が少ないことを述べておきます。

 私は、核のない世界を求める被爆者とピースボートの友人の皆さんを支持しています。

 20世紀初頭において、1000人に満たない男女が自らを化学者、物理学者であると称していました。その後30年間で、彼らは大きな成長点を経験し、欧州、米国、日本において物質やエネルギーの性質に関する優れた発見が行われるようになりました。科学者達はネットワークを形成し、情報を共有しました。ルイ・パスツールが学生達に話したように、彼らは自分達の発見を必然的なものであるがごとくに見せようとしました。

 これらの男性達、そして少数の女性達は、人間に関する物事の仕組みだけでなく、人間の意識の実存的な性質をも変えてしまいました。

 リチャード・ローズはピューリッツァー賞受賞作である自著の「原子爆弾の誕生」の中で、人類は自らの紛争を解決するために暴力を使用するという過程を続けてきていると述べ、以下の通り記しています:

 国際社会が、防衛のための新しい手段、そして新しい形の市民権を築き上げていく上で、破壊の無益さを十分に心に刻んでいる限り、戦争の少ない状態は続くだろう。

 20世紀初頭の科学者達のように、我々は今、新しい成長点を迎えています。歴史上かつてないほど数多くの平和構築者、非武装民間後援者、 紛争変革者、非暴力市民抵抗者たちが、現在、地球全体で活動を行っています。我々は試行を重ね、探求し、学習しています。非武装民間後援者たちが、今日世界で最も暴力的な幾つかの地域で、非暴力平和隊の創設者たちには想像もできなかったほど創造的な非暴力戦略を実施しているところです。

 古いものは死にかけており、バグダッド、ダッカ、イスタンブール、マラカル、オーランドで見られるように、暴力と混乱という反応が次々ともたらされています。けれど、古いやり方が崩壊する時には、謎が生まれます。現在のこの混乱を通じて、まさに100年前に物理学者や科学者たちが謎を探求したように、我々はもっと深いレベルで謎に耳を傾け、探求するようになっています。紛争を解決するための非暴力的な方法を生み出しているところであり、それによって近いうちに使い古された残酷な軍事的手法は廃れてしまうでしょう。必要なものは今ここに全てそろっているのです。我々は世界がどう動いているのかについて、新たな知見を獲得しているところです。我々の発見はまさに必然です。憲法第9条は、国家が戦争を放棄し、紛争を非暴力的に解決するための方針を明示しています。第9条は、維持されるだけではなく、全ての国々に対する模範として扱われるべきです。

 好奇心、勇気、創造性、そして信念を抱き、我々はこれらの発見を構築し、戦争をなくせるよう、説得力を持ち協力してまとめあげていきます。その道のりは困難なものであり、代償も大きいでしょう。規律と犠牲が必要となります。我々のなかには代償として命を失う者もいるでしょう。それでも、フランスの地質学者、神学者のテイヤール・ド・シャルダンが予測したとおり、我々が愛の力を活かすことを学ぶ時、火の再発見のような、根本的な学びが再度得られることでしょう!

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