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御幸橋周辺 CGで再現 被爆直後の惨状伝えたい 福山工業高生 広島・福山上映へ

 福山市の福山工業高の生徒が、広島に原爆が投下された直後の御幸橋(広島市中区)付近の様子をコンピューターグラフィックス(CG)で再現し、約7分の映像にまとめた。11月に広島市南区、12月に福山市であるイベントで披露する。

 やけどを負った被爆者が御幸橋に身を寄せている様子をカラーで再現。被爆直前に橋周辺で無邪気に遊ぶ子どもの姿も描き、市民の命や生活が一瞬にして奪われたことが伝わるよう工夫した。

 計算技術研究部の2、3年約20人と顧問の長谷川勝志教諭(49)が3月、中国放送(中区)の協力を得て制作を始めた。中国新聞社カメラマンの故松重美人氏が撮影した被爆直後の御幸橋の白黒写真を参考にした。この写真に写っている2人の被爆者、河内光子さん(84)と広島県被団協理事長坪井直さん(90)に直接会って当時の状況を聞き、細部を描いた。

 ただ、生徒が想像した以上に被爆者の姿は悲惨だった。「多くの命を奪い、生き残った人に苦しみを与え続けている原爆の被害を、数カ月の作業で再現していいのか」と葛藤もあった。しかし「惨状を伝えてほしい」と言われ、悲惨だからこそ、その記憶を風化させてはいけないと思うようになったという。

 週6日活動し、約5カ月で仕上げた映像は8月6日に中国放送のテレビ番組で放映された。さらに編集し、英語の字幕を付けた作品を11月5日に広島市南区の県立広島産業会館である技能フェア、12月13日には、福山市の市人権交流センターである「ふくやま人権・平和フェスタ」で上映する。

 3年皿谷創基部長(18)は「原爆被害を忘れず二度と起こしてほしくないという被爆者の思いを伝えたい」と力を込める。長谷川教諭は「生徒が悩みながら作った。原爆被害の継承に役立てば」と願っている。(小林可奈)

(2015年10月23日朝刊掲載)

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