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社説・コラム

どう見る安保関連法案 作家・和田竜さん 戦争体験 思いはせよう 被爆者人形 強烈な印象

 歴史をひもとくと、戦争は何となく機運が盛り上がって、どうしようもなく起こる。政治家であれ、戦国武将であれ、誰も戦争や合戦をしたいわけではない。いや応ない状況の中で、起こらざるを得ない形になる。だから、戦争へのハードルというべきものは高い方がいい。

相手国の視点も

 映画化もされた「のぼうの城」でデビュー。昨年出版した「村上海賊の娘」が本屋大賞を受賞するなど、戦国時代に生きた人たちを生々しく描く新感覚の歴史小説の旗手として注目されている。

 「のぼうの城」は、豊臣秀吉が北条家を攻めるところから始まるが、その前に秀吉は北条家を懐柔というか、仲間に入れようとするんですね。独立してやってきた北条家は聞き入れたくないのが人情。文献や資料を調べていて、人情に人情が重なって、行き着くのが戦争なのだと感じる。

 戦争は悪魔が起こすものではない。日本からすると、例えば中国や北朝鮮に非があるように思えるかもしれないが、別の視点に立てば、また違うふうに見えるかもしれない。安倍政権が安全保障関連法案の成立を目指すのも、戦争をしたいからではないだろう。だけど、そんなところから戦争につながっていかないか、という心配がある。

意外な人が反対

 大阪府寝屋川市で生まれ、生後3カ月で広島へ。中学2年まで広島市安佐南区川内で過ごした。

 戦争は悲惨だという感覚が染み付いている。原爆資料館の被爆者の人形や人影の石は、強烈な原体験。だからノーモア・ウオーと言い続けたい。でも、それだけでは「抑止力は必要だ」と主張する人たちを説得できないのも事実で、有効な反論になっていない。正直もどかしさを感じている。

 今回の安保関連法案の議論を通じて、驚いたことがある。意外と思われるようなベテラン政治家が反対の声を上げている。みんな戦争を体験している。よほどその体験が嫌だったのだと思う。

 物語を書く時、登場人物の置かれた状況や気持ちをグーッと想像する。その人に成り切るぐらい。意外な人が反対の声を上げる理由を、僕も含めてもっと想像すべきではないでしょうか。抑止力が必要か、不要かを熱く議論するよりも、虚心になって、戦争体験者の感覚に少しでも近づくことの方が大事な気がする。(藤村潤平)

(2015年7月25日朝刊掲載)

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