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核禁止条約「交渉を」 広島平和宣言 素案 安保法案言及せず

 広島市の松井一実市長が被爆70年の平和記念式典で読み上げる平和宣言の素案が21日、被爆者や有識者でつくる懇談会の最終会合で示された。「絶対悪」である核兵器の2020年までの廃絶へ、禁止条約の交渉開始を世界に働き掛ける決意を表明し、市民にも行動を呼び掛ける内容とみられる。宣言は今月末までに松井市長が起草する。(和多正憲)

 素案では、来年にある主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)などを念頭に、オバマ米大統領の名を挙げて各国のリーダーに被爆地訪問を呼び掛ける。核兵器禁止条約を含む法的枠組みの議論開始につなげてもらう狙いを込めるという。

 前半部分の被爆の実態に関する記述は、懇談会での意見を踏まえ例年より厚くしている。被爆者の気持ちを書き連ね、昨年までに市に寄せられた被爆体験談の中から男女2人の平和を願う声も引用している。

 一方、1日にあった前回の懇談会後に松井市長が表明した通り、集団的自衛権の行使を可能にする安全保障関連法案には直接言及しない。リーダー間の対話による信頼醸成や、日本国憲法の平和主義を挙げて、核兵器廃絶、平和実現への道筋を説くという。

 市は前回懇談会後、「核兵器をめぐる世界情勢」など7項目に一定程度記述を割いた従来型の案と、被爆の実態部分を厚くした案を委員に配布。意見を踏まえて素案をつくり、この日の懇談会で提示した。座長の松井市長を含む全10人が非公開で協議し、大筋で了承された。

 終了後、松井市長は安保法案に言及しなかった理由について「わが国を含め世界の為政者に訴えたいことを記述すべきだとの立場。国内の議論に直接言及しなくても、十分に基本的な考え方を提示できる」と述べた。

(2015年7月22日朝刊掲載)

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