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原爆文学 記憶遺産化探る 広島で研究者らシンポ

 原爆詩人栗原貞子たち被爆作家の直筆資料を、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の記憶遺産に登録する意義などを考えるシンポジウムが13日、広島市中区の広島YMCAコンベンションホールであった。登録を目指す広島文学資料保全の会が主催し、約100人が参加した。

 国内外の研究者たち4人が、栗原、原民喜、峠三吉の3作家の資料の価値などについて語り合った。世界遺産総合研究所(広島市佐伯区)の古田陽久所長(64)は「世界遺産である原爆ドームにつながる遺産であり、世界的にも分かりやすいのでは」と指摘した。

 保全の会顧問の水島裕雅・広島大名誉教授(72)=千葉県=は、作家像や資料の特徴を解説。「命懸けで残したもの。核戦争への警鐘にもなる」と強調した。

 登録後を見据えた提言もあった。「山本作兵衛炭坑記録画・記録文書」が国内で初の記憶遺産に登録された福岡県田川市の市石炭・歴史博物館の安蘇(あそ)龍生館長(75)は、保存の動きが加速する現状を紹介。「劣化が進む紙資料は広島も同じ。どう活用し、引き継いでいくか。情報交換していきたい」と語った。

 シドニー大で日本文学を研究するクレアモント康子准教授(70)は「3作家が伝えたかったヒロシマの精神、それこそが保存されるべきだ」と訴えた。

 同会と広島市は、17日にも申請書をユネスコ国内委員会に送る。(石井雄一)

(2015年6月14日朝刊掲載)

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