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「広島・長崎訪問」復活せず NPT最終文書案  経験共有呼び掛け 「核禁止条約」削除

 米ニューヨークの国連本部で開かれている核拡散防止条約(NPT)再検討会議で、議長が作った最終文書案の一部が21日、判明した。被爆地への訪問を呼び掛ける記述が中国の反対により削除された問題では、広島、長崎の地名は復活しなかった。世界の指導者や若者が核兵器の非人道性に理解を深める必要性を強調。戦後70年の節目に「核兵器を経験した人びとやコミュニティーの経験を直接的に共有」するよう呼び掛ける文言が盛り込まれた。 (ニューヨーク発 田中美千子)

 また核軍縮義務を全うするため、法規制を含めた効果的な措置を特定する作業部会を9月の国連総会に設けるよう提言。全ての国に参加するよう促している。

 5年に1度の再検討会議では、核軍縮を扱う第1委員会の議論が紛糾。「段階的な核軍縮」を訴える核兵器保有国と、核軍縮を進める新たな法的枠組みの検討を求める非保有国が互いに譲らず、タウス・フェルキ議長の主導で非公式会合で交渉を進めてきた。

 第1委がまとめた最終文書の草案には当初、核軍縮の法的枠組みとして、廃絶までの期限を設けた核兵器禁止条約などが例示されていたが、「核兵器禁止条約」の文言は削除された。議長案では「単独型の法的文書」や枠組み合意を含む効果的措置を掲げている。核兵器保有国に配慮したものとみられる。

 第1委では核保有5大国や日本、核軍縮に熱心な新アジェンダ連合(NAC)の代表など約20カ国が参加する非公式会合を続けてきた。フェルキ議長は21日午後、主要3委員会の報告を基に最終文書案を策定し、各国に配布する見通しだ。

(2015年5月22日朝刊掲載)

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