×

ニュース

共に歌おう平和 音楽祭 加藤さんら熱唱 2015ひろしまフラワーフェスティバル

 2015ひろしまフラワーフェスティバル(FF)は2日目の4日、平和への願いに包まれた。被爆70年の節目に開かれた「花と平和の祭典」。広島市中区の平和大通り一帯でアーティストが歌声や演奏を響かせ、祈りをささげた。陸上や神楽など躍動の舞台も繰り広げられた。

 前日から降り続いた雨が上がり、青空が広がった。歌を通じて平和の大切さを訴えるFFの被爆70年企画「ピース・アクト・ヒロシマ音楽祭」が開かれた4日、会場のカーネーションステージ一帯には約5万人が詰め掛け、平和を願う熱気に包まれた。

 「昭和20年7月16日午前5時30分。人類にとって、恐るべき核兵器の時代が始まった」―。米国が核実験に初めて成功した日を挙げ、音楽祭の呼び掛け人で歌手の加藤登紀子さん(71)が語り始めた。

 故中沢啓治さんの漫画「はだしのゲン」から抜き出した言葉。加藤さんが再構成し、核の時代の始まりや放射線被害の怖さを切々と訴え、音楽祭は幕を開けた。

 広島ゆかりのミュージシャンたちが集まった。島谷ひとみさん(34)、TEEさん(32)、二階堂和美さん(41)…。平和への思いを口にし、歌声を響かせた。

 音楽祭のクライマックスは「広島 愛の川」の大合唱。中沢さんが残した詩に作曲家の山本加津彦さん(35)が曲を付け、加藤さんがCD化した歌。

 〽語ろうよ 川に向かって 怒り、悲しみ、優しさを。広島の川は 世界の海へ巡り行く―  中沢さんの母校である神崎小の児童たち約150人も舞台に並び、加藤さんと一緒に歌声を響かせた。そばで聴いた中沢さんの妻ミサヨさん(72)は「小さな子どもや若い人が歌う姿に夫も喜んでいるはず」と児童をじっと見詰めた。

 舞台が終わり、加藤さんは「歌でみんなが一つになり、平和を伝える第一歩が始まった」と表情を緩めた。神崎小6年吉永壮君(11)は「二度と戦争が起こらないよう世界の人と交流したい。歌を通じて平和の大切さを伝えていきたい」と誓っていた。(加茂孝之)

世界中 ヒロシマ知る TEEさん/70年振り返り考えて 二階堂さん 2015ひろしまFF

 広島ゆかりのアーティストたちが集った「ピース・アクト・ヒロシマ音楽祭」。舞台からそれぞれメッセージを発信した。

 加藤登紀子さんは「広島 愛の川」を児童と合唱しながら「この歌にたくさんの明かりがともったように思う。子どもたちが次の世代に届けていくことを心から願っている」と語った。

 大竹市在住の二階堂和美さんは「怒りや悲しみはあるけれど、敵はいないと思いたい。いま一度、みんなで70年を振り返り考えなくては」と訴えた。

 原爆ドームをデザインしたベスト姿で登場した広島市安佐南区出身のTEEさん。留学先のカナダでの体験を紹介しながら「ヒロシマを知らない人はいない。悲しい歴史があるから」と話した。

 被爆ピアノの音色に声を重ねた財満光子さん(中区出身)は85歳。「この私にも死は訪れる。誰かが受け継いでいってくれるでしょう」

 呉市出身で、平和学習で被爆体験を重ねて聞いてきた島谷ひとみさんは「平和への願いを次世代につなぐには、もっと多くの人が思いを共有する必要がある。地元を離れ、その思いを強くした」と語った。(奥田美奈子)

(2015年5月5日朝刊掲載)

年別アーカイブ