『書評』 「どくだみ」 古里・戦争体験…優しい言葉で 峠三吉と交流 山岡さん(広島・大崎上島出身)が刊行
15年5月8日
人生重ねた詩集「どくだみ」
峠三吉が中心となり1949~53年に発行した詩誌「われらの詩」でも活躍した、広島県大崎上島町出身の詩人山岡和範さん(83)=西東京市=が、詩集「どくだみ」を刊行した。
山岡さんは被爆の爪痕が残る46年、広島師範学校(現広島大)予科に入学。学内詩誌に寄せた作品が峠の目に留まり、「われらの詩」の活動に加わった。50年8月に出した「われらの詩」平和特集号で初めて原爆をテーマにした詩を発表した。
峠を兄のように慕い峠が自宅で血を吐いて倒れたときに輸血を手伝った経験もあるという。卒業後は上京、教員をしながら反核の思いを詩にしてきた。
題名は、自宅の庭にしっかりと根を張り、地下茎でつながって広がるドクダミ。戦後70年のことし、時代を見つめてきた人生を重ね、近作21編を収めた。古里の原風景、戦争体験、教員生活、東日本大震災と福島第1原発事故…。戦争や核を拒絶する率直な言葉は、教え子に語りかけるような優しさに満ちている。
A5判、96ページ。1620円。コールサック社。(森田裕美)
(2015年5月5日朝刊掲載)