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社説・コラム

『書評』 「ベン・シャーンを追いかけて」 描き続けた 核の残虐性 被爆2世の永田・武蔵大教授 出版 

 米国の社会派画家、ベン・シャーン(1898~1969年)の軌跡をたどる本「ベン・シャーンを追いかけて」を、被爆2世の永田浩三武蔵大教授(60)=東京都杉並区=が出版した。広島市内の被爆建物が絵のモチーフだったとして「終戦直後から核兵器の非人道性に気づき、核実験を批判する作品につながった」と考察している。(坂田茂)

 永田さんは元NHKプロデューサー。第五福竜丸事件や太平洋戦争に関する番組を制作した。核実験を批判するシャーンの作品に興味を持ち、2013年4月から約1年かけ取材した。

 特に気になったのが、原爆投下の翌年、1946年制作のテンペラ画「ルネッサンス」。女性が不安そうに見つめる構造物だった。亡くなる前年に出版した版画集でも、ほぼ同じ構図で「多くの都市を」という作品に出てくる。

 構造物は、シャーンの作品を多く所蔵する福島県立美術館の学芸員荒木康子さんの研究で、被爆直後の広島市内の写真がモチーフだったことが分かっていた。永田さんは同市中区の原爆資料館の資料などから建物は中区胡町にあった呉服問屋、小田政商店と特定した。

 3階建ての商店は破壊されてねじ曲がった鉄骨だけになった。その姿を、震えるような独特な線で表現している、とする。

 版画集には、リルケの小説「マルテの手記」の一節「一行の詩のためには、あまたの都市(中略)をみなければならない」が添えられている。シャーンが広島、長崎について語った記録はないものの、永田さんは「核兵器の残虐性を認識し、全ての芸術家に被爆地・広島の存在を知らせたかったのではないか」と推察している。大月書店、2800円。

(2015年1月12日朝刊掲載)

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