中国新聞 政経講演会 2025年の韓日関係 元駐日韓国大使・申珏秀氏 朝鮮半島統一へ協力を
14年10月23日
中国新聞社と中国経済クラブ(山本治朗理事長)は22日、広島市中区の中国新聞ビルで中国新聞政経講演会を開いた。韓国の元駐日大使申珏秀氏が「2025年の韓日関係―北東アジアの平和と繁栄の夢物語」をテーマに講演。「朝鮮半島の統一には日本の協力が必要。その貢献は韓日関係の改善にもつながる」と提言した。要旨は次の通り。(田中美千子)
今、北東アジアの勢力図は転移期にある。中国が台頭し、不透明な外交安保政策を展開。これを受け、日本が保守化の傾向を強め、周辺国を懸念させている。中国は「自国を包囲する政策だ」と反発。韓日関係も悪化している。こうなると、米国も困る。中国の台頭に対応するには、同盟国である韓国や日本との良好な関係が不可欠だからだ。
韓日両国の関係は国交を回復した1965年以来、最大、最長の危機にある。両国政府が互いに意思疎通を図ろうとせず、経済、文化など、政治以外の面にも悪影響が出ている。双方の国民感情も悪化を深めており、わだかまりが定着する前に関係を回復させないといけない。
朝鮮半島の統一に向けた協力は、日本が韓国人の心をつかむ機会になるだろう。韓国では、朴槿恵(パク・クネ)大統領が年頭の会見で統一のメリットを強調し、社会の関心事になっている。実現すれば、北朝鮮の核問題を解消でき、安保上の脅威が消える。北東アジアの非核地帯化へ前進し、欧州のような地域安全保障体制の確立に向け、協議会を構築することもできる。経済的にも新たな市場をつくり出せる。平和と繁栄につながる。
関係改善を進める日本こそ、北朝鮮を改革、開放の道へ導けないか。また、統一には膨大な費用がかかるため、日本の資金協力も大切だ。地域が安定すれば日本の国益にもなる。韓日がもっと協調すべきだ。アジア政策が後退しがちな米国にも共に働き掛け、関与を確保するよう努力したい。
さらに、韓日関係の改善に何が必要か。日本は歴史認識を修正するような行動を抑制してほしい。右傾化が警戒されており、政策の透明性も高めた方がいい。集団的自衛権の行使を容認するなら米国だけでなく、周辺国にも説明すべきだろう。韓国も平和構築に向けた戦後の日本の努力を評価し、一部の過度な軍国主義批判を自制しないといけない。日本の右傾化にも客観的で冷静な対応が求められる。
来年は韓日の国交正常化50年、終戦70年の節目。それまでに関係を回復するには、年内に首脳会談を実現させ、土台をつくりたい。中長期的には、21世紀の新たな韓日関係の構築に努めたい。市民間の文化交流を制度化し、もっと増やしてはどうか。歴史認識については共同の研究会を早期に発足させ、長期的に取り組むべきだ。02年のサッカーワールドカップ日韓大会のように具体的な成果が見えることも必要。共通の関心事であるエネルギー分野での協力などが考えられる。
シン・カクス
1955年、韓国・忠清北道生まれ。ソウル大法学科を卒業後、77年に外務部(当時)に入り、条約局長、国連代表部次席大使、駐イスラエル大使などを歴任。2011年5月~13年5月に駐日大使を務めた。同年11月から韓国国立外交院外交安保研究所の国際法センター所長。
(2014年10月23日朝刊掲載)
今、北東アジアの勢力図は転移期にある。中国が台頭し、不透明な外交安保政策を展開。これを受け、日本が保守化の傾向を強め、周辺国を懸念させている。中国は「自国を包囲する政策だ」と反発。韓日関係も悪化している。こうなると、米国も困る。中国の台頭に対応するには、同盟国である韓国や日本との良好な関係が不可欠だからだ。
韓日両国の関係は国交を回復した1965年以来、最大、最長の危機にある。両国政府が互いに意思疎通を図ろうとせず、経済、文化など、政治以外の面にも悪影響が出ている。双方の国民感情も悪化を深めており、わだかまりが定着する前に関係を回復させないといけない。
朝鮮半島の統一に向けた協力は、日本が韓国人の心をつかむ機会になるだろう。韓国では、朴槿恵(パク・クネ)大統領が年頭の会見で統一のメリットを強調し、社会の関心事になっている。実現すれば、北朝鮮の核問題を解消でき、安保上の脅威が消える。北東アジアの非核地帯化へ前進し、欧州のような地域安全保障体制の確立に向け、協議会を構築することもできる。経済的にも新たな市場をつくり出せる。平和と繁栄につながる。
関係改善を進める日本こそ、北朝鮮を改革、開放の道へ導けないか。また、統一には膨大な費用がかかるため、日本の資金協力も大切だ。地域が安定すれば日本の国益にもなる。韓日がもっと協調すべきだ。アジア政策が後退しがちな米国にも共に働き掛け、関与を確保するよう努力したい。
さらに、韓日関係の改善に何が必要か。日本は歴史認識を修正するような行動を抑制してほしい。右傾化が警戒されており、政策の透明性も高めた方がいい。集団的自衛権の行使を容認するなら米国だけでなく、周辺国にも説明すべきだろう。韓国も平和構築に向けた戦後の日本の努力を評価し、一部の過度な軍国主義批判を自制しないといけない。日本の右傾化にも客観的で冷静な対応が求められる。
来年は韓日の国交正常化50年、終戦70年の節目。それまでに関係を回復するには、年内に首脳会談を実現させ、土台をつくりたい。中長期的には、21世紀の新たな韓日関係の構築に努めたい。市民間の文化交流を制度化し、もっと増やしてはどうか。歴史認識については共同の研究会を早期に発足させ、長期的に取り組むべきだ。02年のサッカーワールドカップ日韓大会のように具体的な成果が見えることも必要。共通の関心事であるエネルギー分野での協力などが考えられる。
シン・カクス
1955年、韓国・忠清北道生まれ。ソウル大法学科を卒業後、77年に外務部(当時)に入り、条約局長、国連代表部次席大使、駐イスラエル大使などを歴任。2011年5月~13年5月に駐日大使を務めた。同年11月から韓国国立外交院外交安保研究所の国際法センター所長。
(2014年10月23日朝刊掲載)