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社説・コラム

2014平和のかたち~ヒロシマから ひろしまジン大学学長・平尾順平さん

対話重ね 世界に発信を

 世界中を見ても広島ほど平和のメッセージを発信できる都市はそうない。大学時代の旅や国際協力機構(JICA)の勤務で約60カ国を巡った。ヒロシマを知らない人はほとんどいない。原爆投下という悲しい歴史があるからこそ、世界の国々に寄り添える。

 「あの日」に起こったことを受け継ぎ、伝えることももちろん大切だ。併せて世界中の人と対話を重ね、平和とは何なのか、なぜ戦争が起こるのか、議論を重ねるべきだ。世界で紛争が起こったときに各国の特派員が取材に来るぐらい、市民が発信力を持つ街になる潜在力は十分ある。

 ひろしまジン大学をつくったのも、世界から見た広島に可能性があると感じたからだ。抜群の知名度がありながら、暮らしている人がその魅力に気付いていない。コミュニティーを大切にする街にし、復興の歴史を学びに来る世界の人に見てもらいたい。

 JICAの研修で紛争国から広島を訪れた人の多くが「日本は平和でいいね」と言う。交戦しないことを貫いているからだ。憲法9条の戦争を永久に放棄する条文には重みがある。どこの国とも戦争をしなかった69年間。多くの人が平和を守り、つくり上げてきた。

 それがいま、大きな曲がり角に差し掛かったと言わざるを得ない。集団的自衛権の行使を認める憲法解釈は、非戦の精神を台無しにする。私たちの無関心がそれを許した面も否めない。

 原爆の問題や平和運動にはあまり関わりたくないと一歩引いた考え方の若者が多いように感じる。自主的に考えられるきっかけになればと、この夏、「未来の平和のカタチ」と題した講座を開く。目指すべき平和のビジョンを語り合い、来年の被爆70年から30年後の広島の街がどうなっていてほしいか新聞にまとめる。

 同じ街に住む人、隣町に住む人、世界中の人とつながりを持つ仕掛けを考えていく。一人一人の顔や生活が見えれば、原爆投下も戦争も起きることはない。そう信じている。(聞き手は有岡英俊)

ひらお・じゅんぺい
 広島市安佐北区出身。広島市立大国際学部を卒業し、日本国際協力センターや国際協力機構、広島平和文化センターに勤務。2010年5月に市民団体「ひろしまジン大学」を設立。12年2月にNPO法人化した。地域をキャンパスに見立て、広島の魅力を探る講座を続けている。38歳。

(2014年7月31日朝刊掲載)

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