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水上特攻の悲劇たどる 広島県江田島の奥本さん出版

 フェリー船長で、船の研究に取り組んでいる奥本剛さん(41)=広島県江田島市江田島町=が、第2次世界大戦末期にベニヤ板で造ったボートで水上特攻した、旧陸軍海上挺進(ていしん)戦隊と旧海軍震洋特別攻撃隊についてまとめた「陸海軍水上特攻部隊全史」を出版した。

 海上挺進戦隊は陸軍船舶特別幹部候補生の少年兵たちで組織し、「マルレ」と呼ばれた「四式連絡艇」に乗り込んだ。震洋特別攻撃隊は海軍予科練習生たちで構成し、震洋と名付けたボートで敵に突っ込んでいった。それぞれの全部隊史や訓練風景の写真、図面を掲載した。

 元隊員たちでつくる戦友会がまとめた部隊史を踏まえて執筆し、防衛省防衛研究所(東京)や大和ミュージアム(呉市)などで資料も集めた。

 奥本さんによると、海上挺進戦隊は53部隊で、震洋特別攻撃隊は116部隊あった。フィリピンや台湾などに配備された部隊もあり計1600人以上が戦死したという。

 海上挺進戦隊は、原爆投下後の広島で被爆者の救護もした。訓練基地があった江田島市江田島町幸ノ浦には慰霊碑が残っている。

 奥本さんは「水上特攻部隊に関する書籍は少ない。その存在や過去の悲劇を知ってほしい」と願う。A5判、195ページ。2300円(税抜き)。全国の書店で扱っている。(加茂孝之)

(2013年12月11日朝刊掲載)

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