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被爆遺構を来月撤去 サッカー場予定地 広島市方針 現地説明会なく反発も

 サッカースタジアム建設予定地の中央公園広場(広島市中区)で見つかった旧陸軍の輸送部隊「中国軍管区輜重(しちょう)兵補充隊」施設の被爆遺構を巡り、市は22日、7月に撤去作業を始めて江戸期の地層を調べる考えを明らかにした。被爆遺構を市民に公開する現地説明会は開かず、写真や映像を使った報告会を7月にも開く検討をしているという。

 現地説明会の早急な開催を申し入れた市民団体「広島文学資料保全の会」(中区)の土屋時子代表(73)たちに、市文化振興課の平田太・文化財担当課長が説明した。土屋代表は「江戸期の調査に入るのを遅らせてでも、現地説明をするべき重大な遺構だ」と反発。ほかの市民団体と連携し、あらためて要望する考えだ。

 保全の会が提出した松井一実市長宛ての要望書は、今回の遺構は被爆の「物言わぬ証人」であり、「軍都広島の実相を語る上で貴重な軍事史跡」だと強調。現地説明会を早急に開いた上で、市民から広く意見を募って保存・公開に向けた検討をするよう求めている。

 土屋代表から要望書を受け取った平田担当課長は、当初は今月中に現地説明会を開く検討をしていたが、新型コロナウイルスの感染拡大を理由に見送った経緯を紹介。「陸軍遺構を取り外さないと下の調査ができない」として、7月に撤去を始めるとした。予定通り来年3月に発掘調査を終えるための対応としている。

 現地説明会の代わりに、報道機関への公開や、写真や映像を見せる報告会を7月にも開く検討をしていることも報告した。これに対して保全の会は、撤去を進めながらの開催は「アリバイづくりにすぎない」と批判。被爆遺構を残した状態で、市が市民とともに今後の在り方を考える協議の場を設けるよう説いた。

 平田担当課長は終了後、「要望を持ち帰り、内部で協議する」と述べた。撤去した被爆遺構の一部は、市として別の場所での保存を検討する考えを示した。(水川恭輔)

(2021年6月23日朝刊掲載)

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