「核兵器禁止条約支持」の公開書簡 ICAN、「依存国」に送付
20年9月28日
国際非政府組織(NGO)「核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)」は27日までに、「核依存国」である日本、韓国や北大西洋条約機構(NATO)に加盟するカナダ・欧州の元首脳や元閣僚、22ヵ国の計56人による核兵器禁止条約支持の公開書簡を当事国に送付した。
書簡はICANがとりまとめ、21日に公開。各国の国連代表部に加え、菅義偉首相と茂木敏充外相にも送った。22ヵ国は、米国など核兵器を持つ同盟国の「核の傘」に依する安全保障政策を取っている。
書簡は、同盟国との関係を維持しながら条約に入ることは可能だと明言する。NATOの「核共有」として米国の戦術核が冷戦期から配備されているドイツ、オランダ、トルコ、ベルギー、イタリアの元首脳たちが賛同。スペインのソラナ元外相らNATO事務総長の経験者も名を連ねる。日本からは鳩山由紀夫元首相たち3人が応じた。
核兵器禁止条約は、発効に必要な50カ国の批准まであと「5」に迫る。核保有国が条約参加にかじを切りそうにない中、ICANが働きかけを強めているのが、保有国と批准国の間にいる「核依存国」。その当事国の元首脳らが、「私たちの国々の指導者は、条約支持に加わらない立場を再考すべきだ」とし、核依存政策からの転換を自国に求めた。(金崎由美)
(2020年9月28日朝刊掲載)
(この公開書簡は2017年の核兵器禁止条約を支持する書簡であり、20の北大西洋条約機構(NATO)加盟国、日本そして韓国の元大統領、元首相、元外相、元防衛相、合わせて56名が署名しています。これらの国すべてが現在米国の核兵器による保護を求めており、核兵器禁止条約に参加していません。この書簡は、これらの国々の現首脳らに提出されます。この公開書簡の署名者には、元国連事務総長の潘基文氏および2名の元NATO事務総長すなわちウィリー・クラース氏とハビエル・ソラナ氏が含まれています。
英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の公開書簡を掲載しているICANのウェブサイトはこちら
https://www.icanw.org/56_former_leaders
新型コロナウイルスのパンデミックは、人類の健康と福祉に対するあらゆる主要な脅威に対して国際協力を強めることが緊急に必要であることをはっきりと示しました。その中でもひときわ大きいのは、核戦争の脅威です。今日、核兵器が偶発的にであれ、誤算によってであれ、意図的にであれ、爆発するリスクは高まっています。それは、新型核兵器が最近配備されていることや、長年維持されてきた軍備管理協定が放棄されていること、さらには、核兵器の基盤に対するサイバー攻撃の危険がまさに現実のものになっていることからきています。私たちは、科学者、医師、その他の専門家たちの警告を心に留めなければなりません。私たちは、今年経験してきた危機よりもはるかに大規模な危機の中へと夢中歩行していってはならないのです。
核保有国の指導者による好戦的な弁舌や甘い判断がすべての国々と人々に災いする惨禍をもたらすであろうことは、容易に予見できます。同盟国の核兵器による保護を求めているアルバニア、ベルギー、カナダ、クロアチア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、日本、ラトビア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、韓国、スペイン、そしてトルコの元首脳、元外相、元防衛相として、私たちは現首脳に対し、手遅れになる前に、核軍縮を進めるよう訴えます。私たちの国々の首脳らがまず始めにできることは、核兵器の使用がもたらす人間および環境に対する破滅的な帰結に鑑みて、核兵器は何ら軍事上また戦略上の正当性ある目的に資するものでないということを、無条件で宣言することです。すなわち、私たちの国は、国家の防衛において核兵器のいかなる役割をも拒否すべきです。
核兵器による保護を求めることは、核兵器が安全をもたらすという危険で間違った考えを広めることになります。それは、核兵器のない世界に向けて前進するどころか、それを妨げ、核という大量破壊兵器に執着する同盟国を怒らせまいとすることによって、核の危険を永続化させます。しかし、友であるならば、友が彼らそして私たちの命を危険にさらす無責任な振る舞いをしているときに、きちんと物を申すことできるはずですし、そうしなければなりません。
新しい核軍備競争が進んでいることに疑いの余地はなく、軍縮のための競争が緊急に必要とされています。核兵器に依存する時代を、永久に終わらせなければなりません。2017年7月7日、122カ国が、長く待望されてきたそのための勇気ある一歩を、核兵器禁止条約の採択によって踏み出しました。これは、核兵器を化学兵器や生物兵器と同じ法的位置におき、これを検証可能で不可逆的な形で廃絶するための枠組みを確立した、画期的な世界的条約です。これはまもなく拘束力ある国際法となります。
今のところ、私たちの国々はこの条約を支持するという世界の多数派に加わらないことを選んでいます。しかし、私たちの国々の指導者は、その立場を再考すべきです。私たちは、この人類の生存に対する脅威を前に震えているわけにはいきません。私たちは、勇気と大胆さを示し、この条約に加わらなければなりません。この条約の締約国となっても、核保有国との同盟関係はもちろん維持することができます。そのことは、この条約においても私たち各国の防衛協定によっても排除されていません。しかし、私たちは、いかなる状況においても、私たちの同盟国が核兵器を使用したり、使用すると威嚇したり、保有したりすることを援助または奨励しないと法的に義務づけられます。私たちの国々においては軍縮に対する幅広い世論の支持があるわけですから、このような立場をとることは論争になるどころか高く賞賛されるでしょう。
核兵器禁止条約は、半世紀前に発効した核不拡散条約(NPT)に対する重要な補強となります。NPTは、核兵器がこれ以上の国々に広がることを防ぐのに見事に成功してきましたが、核兵器の保有に対する普遍的なタブーを形成することに失敗してきました。NPT交渉の際にすでに核兵器を保有していた5つの核保有国、すなわち米国、ロシア、イギリス、フランス、中国は、NPTによって彼らは核戦力を永続的に維持する免許をえたと考えているようです。彼らは軍縮するどころか、保有核兵器を更新するために大規模に投資し、今後数十年にわたって核兵器を維持する計画をもっているのです。これは、明らかに受け入れがたいことです。
2017年に採択された核兵器禁止条約は、数十年にわたる軍縮の停滞を終わらせることに役立ちます。それは、暗闇の時代における希望ののろしです。この条約を通じて各国は、核兵器に反対する今日もっとも高い多国間の規範を受け入れ、行動に向けた国際的圧力を作り出すことができます。条約の前文に記されているとおり、核兵器が使われれば「影響は国境を越え、人類の生存、環境、社会経済開発、世界経済、食料安全保障、そして、現在また将来の世代の健康に対して重大な影響を与え、電離放射線などを通じて女性と少女に偏った被害をもたらす」のです。
1万4000発近い核兵器が地球上の数十カ所の施設や常に巡航する潜水艦の中に置かれており、その破壊力は私たちの想像を超えるものです。責任あるすべての指導者は、1945年に起きた惨劇を決して繰り返させないために今行動しなければなりません。私たちが行動しなければ、いずれ私たちの幸運は尽きるでしょう。核兵器禁止条約は、究極の威嚇から解放された、より安全な世界のための基盤を提供しています。私たちは今この条約を支持し、他国もまたそれに加わるよう働きかけなければなりません。ひとたび核戦争が起きれば、回復は不可能です。予防こそが、唯一の選択肢なのです。
署名者:
Lloyd AXWORTHY, fmr FM Canada ロイド・アックスワージー 元カナダ外相
Ki-moon BAN, fmr SG UN / fmr FM South Korea 潘基文 元国連事務総長、元韓国外相
Jean-Jacques BLAIS, fmr DM Canada ジャン=ジャック・ブレー 元カナダ防相
Kjell M.BONDEVIK, fmr PM/FM Norway ヒェル・M・ボンデヴィック 元ノルウェー首相・外相
Ylli BUFI, fmr PM Albania イリ・バフィ 元アルバニア首相
Jean CHRÉTIEN, fmr PM Canada ジャン・クレティエン 元カナダ首相
Willy CLAES, fmr FM Belgium / NATO SG ウィリー・クラース 元ベルギー外相、元NATO事務総長
Erik DERYCKE, fmr FM Belgium エリック・デレイケ 元ベルギー外相
Joschka FISCHER, fmr FM Germany ヨシュカ・フィッシャー 元ドイツ外相
Franco FRATTINI, fmr FM Italy / VP EC フランコ・フラッティーニ 元イタリア外相、元欧州委員会副委員長
Ingibjörg Sólrún GÍSLADÓTTIR fmr FM, Iceland インギビヨルグ・S・ギスラドティル 元アイスランド外相
Bjørn T. GODAL, fmr FM/DM Norway ビョーン・T・ゴダール 元ノルウェー外相・防相
Bill GRAHAM, fmr FM/DM Canada ビル・グレアム 元カナダ外相・防相
Yukio HATOYAMA, fmr PM, Japan 鳩山由紀夫 元日本首相
Thorbjørn JAGLAND, fmr PM/FM Norway トルビョルン・ヤーグラン 元ノルウェー首相・外相
Ljubica JELUŠIČ, fmr DM Slovenia ユビカ・ジェルシック 元スロベニア防相
Tālavs JUNDZIS, fmr DM Latvia タラブス・ジャンジス 元ラトビア防相
Jan KAVAN, fmr FM Czech / President UNGA ヤン・カバン 元チェコ外相、国連総会議長
Alojz KRAPEŽ, fmr DM Slovenia アロイス・クラペス 元スロベニア防相
Ģirts V. KRISTOVSKIS, fmr FM/DM Latvia ギルツ・V・クリストフスキス 元ラトビア外相・防相
Aleksander KWAŚNIEWSKI, fmr President Poland アレクサンデル・クファシニェフスキ 元ポーランド大統領
Yves LETERME, fmr PM/FM Belgium イブ・ルテルム 元ベルギー首相・外相
Enrico LETTA, fmr PM Italy エンリコ・レッタ 元イタリア首相
Eldbjørg LØWER, fmr DM Norway エルビョルグ・ローヴェル 元ノルウェー防相
Mogens LYKKETOFT, fmr FM Denmark / President UNGA モーゲン・リュッケトフ 元デンマーク外相、国連総会議長
John McCALLUM, fmr DM Canada ジョン・マッカラム 元カナダ防相
John MANLEY, fmr DPM/FM Canada ジョン・マンリー 元カナダ副首相・外相
Rexhep MEIDANI, fmr President Albania レジェプ・メイダニ 元アルバニア大統領
Zdravko MRŠIĆ, fmr FM Croatia ズドラブコ・ムルシッチ 元クロアチア外相
Linda MŪRNIECE, fmr DM Latvia リンダ・ムールニアツェ 元ラトビア防相
Fatos NANO, fmr PM Albania ファトス・ナノ 元アルバニア首相
Holger K. NIELSEN, fmr FM Denmark ホルガー・K・ニールセン 元デンマーク外相
Andrzej OLECHOWSKI, fmr FM Poland アンドレイ・オレホフスキー 元ポーランド外相
Kjeld OLESEN, fmr FM/DM Denmark キエルド・オルセン 元デンマーク外相・防相
Ana de PALACIO Y DEL VALLE-LERSUNDI, fmr FM Spain アナ・デ・パラシオ・イ・デル・バジェ‐レルスンディ 元スペイン外相
Theodoros PANGALOS, fmr DPM/FM Greece テオドロス・パンガロス 元ギリシャ副首相・外相
Jan PRONK, fmr DM ( Ad Interim ) / Minister for Development Cooperation Netherlands ヤン・プロンク 元オランダ臨時防相・開発協力相
Vesna PUSIĆ, fmr DPM/Minister of Foreign and European Affairs Croatia ベスナ・プーシック元クロアチア副首相・外務・欧州統合相
Dariusz ROSATI, fmr FM Poland ダリウシュ・ロサティ 元ポーランド外相
Rudolf SCHARPING, fmr DM Germany ルドルフ・シャーピング 元ドイツ防相
Juraj SCHENK, fmr FM Slovakia ユーライ・シェンク 元スロバキア外相
Nuno SEVERIANO TEIXEIRA, fmr DM Portugal ヌーノ・セベリアーノ・テイシェイラ 元ポルトガル防相
Jóhanna SIGUROÐARÓTTIR, fmr PM Iceland ヨーハンナ・シーグルザルドッティル 元アイスランド首相
Össur SKARPHÉÐINSSON, fmr FM Iceland オッシュル・スカルプヘイジンソン 元アイスランド外相
Javier SOLANA MADARIAGA, fmr FM Spain / NATO SG ハビエル・ソラナ 元スペイン外相、元NATO事務総長
Anne-Grete STRØM-ERICHSEN, fmr DM Norway アンネ・グレーテ・ストロム・エリクセン 元ノルウェー防相
Hanna SUCHOCKA, fmr PM Poland ハンナ・スホツカ 元ポーランド首相
SZEKERES Imre, fmr DM Hungary セカレシュ・イムレ 元ハンガリー防相
Makiko TANAKA, fmr FM Japan 田中眞紀子 元日本外相
Naoki TANAKA, fmr DM Japan 田中直紀 元日本防相
Danilo TÜRK, fmr President Slovenia ダニーロ・テュルク 元スロベニア大統領
Hikmet S. TÜRK, fmr DM Turkey ヒクメット・S・テュルク 元トルコ防相
John N. TURNER, fmr PM Canada ジョン・N・ターナー 元カナダ首相
Guy VERHOFSTADT, fmr PM Belgium ヒー・フェルホフスタット 元ベルギー首相
Knut VOLLEBÆK, fmr FM Norway クヌート・ヴォッレベク 元ノルウェー外相
Carlos WESTENDORP Y CABEZA, fmr FM Spain カルロス・ウェステンドルプ・イ・カベサ 元スペイン外相
書簡はICANがとりまとめ、21日に公開。各国の国連代表部に加え、菅義偉首相と茂木敏充外相にも送った。22ヵ国は、米国など核兵器を持つ同盟国の「核の傘」に依する安全保障政策を取っている。
書簡は、同盟国との関係を維持しながら条約に入ることは可能だと明言する。NATOの「核共有」として米国の戦術核が冷戦期から配備されているドイツ、オランダ、トルコ、ベルギー、イタリアの元首脳たちが賛同。スペインのソラナ元外相らNATO事務総長の経験者も名を連ねる。日本からは鳩山由紀夫元首相たち3人が応じた。
核兵器禁止条約は、発効に必要な50カ国の批准まであと「5」に迫る。核保有国が条約参加にかじを切りそうにない中、ICANが働きかけを強めているのが、保有国と批准国の間にいる「核依存国」。その当事国の元首脳らが、「私たちの国々の指導者は、条約支持に加わらない立場を再考すべきだ」とし、核依存政策からの転換を自国に求めた。(金崎由美)
(2020年9月28日朝刊掲載)
核兵器禁止条約(2017年)を支持する公開書簡
2020年9月21日
(この公開書簡は2017年の核兵器禁止条約を支持する書簡であり、20の北大西洋条約機構(NATO)加盟国、日本そして韓国の元大統領、元首相、元外相、元防衛相、合わせて56名が署名しています。これらの国すべてが現在米国の核兵器による保護を求めており、核兵器禁止条約に参加していません。この書簡は、これらの国々の現首脳らに提出されます。この公開書簡の署名者には、元国連事務総長の潘基文氏および2名の元NATO事務総長すなわちウィリー・クラース氏とハビエル・ソラナ氏が含まれています。
英語、フランス語、ドイツ語、スペイン語の公開書簡を掲載しているICANのウェブサイトはこちら
https://www.icanw.org/56_former_leaders
新型コロナウイルスのパンデミックは、人類の健康と福祉に対するあらゆる主要な脅威に対して国際協力を強めることが緊急に必要であることをはっきりと示しました。その中でもひときわ大きいのは、核戦争の脅威です。今日、核兵器が偶発的にであれ、誤算によってであれ、意図的にであれ、爆発するリスクは高まっています。それは、新型核兵器が最近配備されていることや、長年維持されてきた軍備管理協定が放棄されていること、さらには、核兵器の基盤に対するサイバー攻撃の危険がまさに現実のものになっていることからきています。私たちは、科学者、医師、その他の専門家たちの警告を心に留めなければなりません。私たちは、今年経験してきた危機よりもはるかに大規模な危機の中へと夢中歩行していってはならないのです。
核保有国の指導者による好戦的な弁舌や甘い判断がすべての国々と人々に災いする惨禍をもたらすであろうことは、容易に予見できます。同盟国の核兵器による保護を求めているアルバニア、ベルギー、カナダ、クロアチア、チェコ、デンマーク、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、アイスランド、イタリア、日本、ラトビア、オランダ、ノルウェー、ポーランド、ポルトガル、スロバキア、スロベニア、韓国、スペイン、そしてトルコの元首脳、元外相、元防衛相として、私たちは現首脳に対し、手遅れになる前に、核軍縮を進めるよう訴えます。私たちの国々の首脳らがまず始めにできることは、核兵器の使用がもたらす人間および環境に対する破滅的な帰結に鑑みて、核兵器は何ら軍事上また戦略上の正当性ある目的に資するものでないということを、無条件で宣言することです。すなわち、私たちの国は、国家の防衛において核兵器のいかなる役割をも拒否すべきです。
核兵器による保護を求めることは、核兵器が安全をもたらすという危険で間違った考えを広めることになります。それは、核兵器のない世界に向けて前進するどころか、それを妨げ、核という大量破壊兵器に執着する同盟国を怒らせまいとすることによって、核の危険を永続化させます。しかし、友であるならば、友が彼らそして私たちの命を危険にさらす無責任な振る舞いをしているときに、きちんと物を申すことできるはずですし、そうしなければなりません。
新しい核軍備競争が進んでいることに疑いの余地はなく、軍縮のための競争が緊急に必要とされています。核兵器に依存する時代を、永久に終わらせなければなりません。2017年7月7日、122カ国が、長く待望されてきたそのための勇気ある一歩を、核兵器禁止条約の採択によって踏み出しました。これは、核兵器を化学兵器や生物兵器と同じ法的位置におき、これを検証可能で不可逆的な形で廃絶するための枠組みを確立した、画期的な世界的条約です。これはまもなく拘束力ある国際法となります。
今のところ、私たちの国々はこの条約を支持するという世界の多数派に加わらないことを選んでいます。しかし、私たちの国々の指導者は、その立場を再考すべきです。私たちは、この人類の生存に対する脅威を前に震えているわけにはいきません。私たちは、勇気と大胆さを示し、この条約に加わらなければなりません。この条約の締約国となっても、核保有国との同盟関係はもちろん維持することができます。そのことは、この条約においても私たち各国の防衛協定によっても排除されていません。しかし、私たちは、いかなる状況においても、私たちの同盟国が核兵器を使用したり、使用すると威嚇したり、保有したりすることを援助または奨励しないと法的に義務づけられます。私たちの国々においては軍縮に対する幅広い世論の支持があるわけですから、このような立場をとることは論争になるどころか高く賞賛されるでしょう。
核兵器禁止条約は、半世紀前に発効した核不拡散条約(NPT)に対する重要な補強となります。NPTは、核兵器がこれ以上の国々に広がることを防ぐのに見事に成功してきましたが、核兵器の保有に対する普遍的なタブーを形成することに失敗してきました。NPT交渉の際にすでに核兵器を保有していた5つの核保有国、すなわち米国、ロシア、イギリス、フランス、中国は、NPTによって彼らは核戦力を永続的に維持する免許をえたと考えているようです。彼らは軍縮するどころか、保有核兵器を更新するために大規模に投資し、今後数十年にわたって核兵器を維持する計画をもっているのです。これは、明らかに受け入れがたいことです。
2017年に採択された核兵器禁止条約は、数十年にわたる軍縮の停滞を終わらせることに役立ちます。それは、暗闇の時代における希望ののろしです。この条約を通じて各国は、核兵器に反対する今日もっとも高い多国間の規範を受け入れ、行動に向けた国際的圧力を作り出すことができます。条約の前文に記されているとおり、核兵器が使われれば「影響は国境を越え、人類の生存、環境、社会経済開発、世界経済、食料安全保障、そして、現在また将来の世代の健康に対して重大な影響を与え、電離放射線などを通じて女性と少女に偏った被害をもたらす」のです。
1万4000発近い核兵器が地球上の数十カ所の施設や常に巡航する潜水艦の中に置かれており、その破壊力は私たちの想像を超えるものです。責任あるすべての指導者は、1945年に起きた惨劇を決して繰り返させないために今行動しなければなりません。私たちが行動しなければ、いずれ私たちの幸運は尽きるでしょう。核兵器禁止条約は、究極の威嚇から解放された、より安全な世界のための基盤を提供しています。私たちは今この条約を支持し、他国もまたそれに加わるよう働きかけなければなりません。ひとたび核戦争が起きれば、回復は不可能です。予防こそが、唯一の選択肢なのです。
署名者:
Lloyd AXWORTHY, fmr FM Canada ロイド・アックスワージー 元カナダ外相
Ki-moon BAN, fmr SG UN / fmr FM South Korea 潘基文 元国連事務総長、元韓国外相
Jean-Jacques BLAIS, fmr DM Canada ジャン=ジャック・ブレー 元カナダ防相
Kjell M.BONDEVIK, fmr PM/FM Norway ヒェル・M・ボンデヴィック 元ノルウェー首相・外相
Ylli BUFI, fmr PM Albania イリ・バフィ 元アルバニア首相
Jean CHRÉTIEN, fmr PM Canada ジャン・クレティエン 元カナダ首相
Willy CLAES, fmr FM Belgium / NATO SG ウィリー・クラース 元ベルギー外相、元NATO事務総長
Erik DERYCKE, fmr FM Belgium エリック・デレイケ 元ベルギー外相
Joschka FISCHER, fmr FM Germany ヨシュカ・フィッシャー 元ドイツ外相
Franco FRATTINI, fmr FM Italy / VP EC フランコ・フラッティーニ 元イタリア外相、元欧州委員会副委員長
Ingibjörg Sólrún GÍSLADÓTTIR fmr FM, Iceland インギビヨルグ・S・ギスラドティル 元アイスランド外相
Bjørn T. GODAL, fmr FM/DM Norway ビョーン・T・ゴダール 元ノルウェー外相・防相
Bill GRAHAM, fmr FM/DM Canada ビル・グレアム 元カナダ外相・防相
Yukio HATOYAMA, fmr PM, Japan 鳩山由紀夫 元日本首相
Thorbjørn JAGLAND, fmr PM/FM Norway トルビョルン・ヤーグラン 元ノルウェー首相・外相
Ljubica JELUŠIČ, fmr DM Slovenia ユビカ・ジェルシック 元スロベニア防相
Tālavs JUNDZIS, fmr DM Latvia タラブス・ジャンジス 元ラトビア防相
Jan KAVAN, fmr FM Czech / President UNGA ヤン・カバン 元チェコ外相、国連総会議長
Alojz KRAPEŽ, fmr DM Slovenia アロイス・クラペス 元スロベニア防相
Ģirts V. KRISTOVSKIS, fmr FM/DM Latvia ギルツ・V・クリストフスキス 元ラトビア外相・防相
Aleksander KWAŚNIEWSKI, fmr President Poland アレクサンデル・クファシニェフスキ 元ポーランド大統領
Yves LETERME, fmr PM/FM Belgium イブ・ルテルム 元ベルギー首相・外相
Enrico LETTA, fmr PM Italy エンリコ・レッタ 元イタリア首相
Eldbjørg LØWER, fmr DM Norway エルビョルグ・ローヴェル 元ノルウェー防相
Mogens LYKKETOFT, fmr FM Denmark / President UNGA モーゲン・リュッケトフ 元デンマーク外相、国連総会議長
John McCALLUM, fmr DM Canada ジョン・マッカラム 元カナダ防相
John MANLEY, fmr DPM/FM Canada ジョン・マンリー 元カナダ副首相・外相
Rexhep MEIDANI, fmr President Albania レジェプ・メイダニ 元アルバニア大統領
Zdravko MRŠIĆ, fmr FM Croatia ズドラブコ・ムルシッチ 元クロアチア外相
Linda MŪRNIECE, fmr DM Latvia リンダ・ムールニアツェ 元ラトビア防相
Fatos NANO, fmr PM Albania ファトス・ナノ 元アルバニア首相
Holger K. NIELSEN, fmr FM Denmark ホルガー・K・ニールセン 元デンマーク外相
Andrzej OLECHOWSKI, fmr FM Poland アンドレイ・オレホフスキー 元ポーランド外相
Kjeld OLESEN, fmr FM/DM Denmark キエルド・オルセン 元デンマーク外相・防相
Ana de PALACIO Y DEL VALLE-LERSUNDI, fmr FM Spain アナ・デ・パラシオ・イ・デル・バジェ‐レルスンディ 元スペイン外相
Theodoros PANGALOS, fmr DPM/FM Greece テオドロス・パンガロス 元ギリシャ副首相・外相
Jan PRONK, fmr DM ( Ad Interim ) / Minister for Development Cooperation Netherlands ヤン・プロンク 元オランダ臨時防相・開発協力相
Vesna PUSIĆ, fmr DPM/Minister of Foreign and European Affairs Croatia ベスナ・プーシック元クロアチア副首相・外務・欧州統合相
Dariusz ROSATI, fmr FM Poland ダリウシュ・ロサティ 元ポーランド外相
Rudolf SCHARPING, fmr DM Germany ルドルフ・シャーピング 元ドイツ防相
Juraj SCHENK, fmr FM Slovakia ユーライ・シェンク 元スロバキア外相
Nuno SEVERIANO TEIXEIRA, fmr DM Portugal ヌーノ・セベリアーノ・テイシェイラ 元ポルトガル防相
Jóhanna SIGUROÐARÓTTIR, fmr PM Iceland ヨーハンナ・シーグルザルドッティル 元アイスランド首相
Össur SKARPHÉÐINSSON, fmr FM Iceland オッシュル・スカルプヘイジンソン 元アイスランド外相
Javier SOLANA MADARIAGA, fmr FM Spain / NATO SG ハビエル・ソラナ 元スペイン外相、元NATO事務総長
Anne-Grete STRØM-ERICHSEN, fmr DM Norway アンネ・グレーテ・ストロム・エリクセン 元ノルウェー防相
Hanna SUCHOCKA, fmr PM Poland ハンナ・スホツカ 元ポーランド首相
SZEKERES Imre, fmr DM Hungary セカレシュ・イムレ 元ハンガリー防相
Makiko TANAKA, fmr FM Japan 田中眞紀子 元日本外相
Naoki TANAKA, fmr DM Japan 田中直紀 元日本防相
Danilo TÜRK, fmr President Slovenia ダニーロ・テュルク 元スロベニア大統領
Hikmet S. TÜRK, fmr DM Turkey ヒクメット・S・テュルク 元トルコ防相
John N. TURNER, fmr PM Canada ジョン・N・ターナー 元カナダ首相
Guy VERHOFSTADT, fmr PM Belgium ヒー・フェルホフスタット 元ベルギー首相
Knut VOLLEBÆK, fmr FM Norway クヌート・ヴォッレベク 元ノルウェー外相
Carlos WESTENDORP Y CABEZA, fmr FM Spain カルロス・ウェステンドルプ・イ・カベサ 元スペイン外相