カープの街 短編に描く 「早稲田文学」で小山田浩子さん
15年1月28日
芥川賞作家の小山田浩子さん(31)=広島市佐伯区=が、広島東洋カープをテーマにした短編「異郷」を文芸誌「早稲田文学」2014年冬号に寄せた。地元球団の戦績に一喜一憂する街の空気を、奇妙さとリアルさを織り交ぜながら描いている。
主人公は、夫の転勤で広島に越してきた「ノムラ」姓の女性、美月。餅菓子を製造する小さな会社に事務のパートとして採用される。出勤初日、温かな職場の雰囲気にほっとする。
翌日、事務所の空気ががらりと変わる。素っ気ない態度の同僚。美月は、同級生がある日突然冷ややかになった高校時代を思い出す。カープが勝利した試合を見た日曜を挟んだ週明け、事務所は再び明るさを取り戻していた。
初めての地、広島を包む不思議な空気の波に、美月はあらためて異郷を意識する。小山田さんは「カープが負けて学校の先生や父親が不機嫌だったり、逆に調子が良かったり。広島だとよくある話。こうした依頼が東京の編集部からきたのは、身内が認められたようでうれしい」と話す。
同誌はことし、「赤(ヒロシマ)のブンガク」と題し、カープを中心に野球と文学の特集企画を予定する。評論や創作などで構成し、小山田さんも新作を寄せるという。
制作総指揮で早稲田大文学学術院の市川真人准教授は「文学者に野球好きは多い。被爆70年という節目の年に、カープという切り口で広島の良さを掘り起こしていけたら」と話している。(石井雄一)
(2015年1月28日朝刊掲載)
主人公は、夫の転勤で広島に越してきた「ノムラ」姓の女性、美月。餅菓子を製造する小さな会社に事務のパートとして採用される。出勤初日、温かな職場の雰囲気にほっとする。
翌日、事務所の空気ががらりと変わる。素っ気ない態度の同僚。美月は、同級生がある日突然冷ややかになった高校時代を思い出す。カープが勝利した試合を見た日曜を挟んだ週明け、事務所は再び明るさを取り戻していた。
初めての地、広島を包む不思議な空気の波に、美月はあらためて異郷を意識する。小山田さんは「カープが負けて学校の先生や父親が不機嫌だったり、逆に調子が良かったり。広島だとよくある話。こうした依頼が東京の編集部からきたのは、身内が認められたようでうれしい」と話す。
同誌はことし、「赤(ヒロシマ)のブンガク」と題し、カープを中心に野球と文学の特集企画を予定する。評論や創作などで構成し、小山田さんも新作を寄せるという。
制作総指揮で早稲田大文学学術院の市川真人准教授は「文学者に野球好きは多い。被爆70年という節目の年に、カープという切り口で広島の良さを掘り起こしていけたら」と話している。(石井雄一)
(2015年1月28日朝刊掲載)